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11月も終わっちゃうわたくし

11/30
渋谷でベリーダンサーのRititaとデート。
ステージ衣装を見て回ったり、ダンス教室の発表会用の音楽CDを探したり。
そろそろ会いたいなと思っていたので嬉しい。
先日のビヨンセのPVの話をしたら「ゲイの間で流行ってるダンスなら絶対かっこいい筈」と興味を持っていた。
帰宅してYouTubeのアドレスをメールする。
夕飯メモ:モツの煮込み、キャベツのおひたし

12/1
友人Mに誘われて試写会へ。
映画は『ワールド・オブ・ライズ』
リドリー・スコットが監督で、主演はディカプリオとラッセル・クロウ。
ディカプリオがCIA工作員、ラッセル・クロウがその上司、現在の二人の目的は世界中で爆破テロを行っているテロリストの首領を逮捕すること。
面白い映画で考えさせられる面もあったので、ゆっくりレビューを書きたい。
夕飯メモ:グリーンカレー

12/2
英語学校の日。先生はSteve。
スクールパーティーの話題で盛り上がる。

12/3
夕方から渋谷と代官山の中間あたりへ。
気が抜けてるといい感じなのか、単に相性がいいのか。
夕飯メモ:大根と豚バラの煮物、キャベツの梅サラダ

12/4
ミカンを配達したり、キムチをもらったり。
『香水』を読了。感想は後日〜。
夕飯メモ:エビチリ、コーン&卵スープ、ジャガイモのナムル、ピリ辛キュウリ

12/5
Kと一緒に誕生日プレゼントを買いに行く。
誕生日は来週だけど、タイミング的に今日がちょうどよかったので。
いいものが買えて良かった。Kも気に入ってくれたようで、私も満足。
夕飯はカレー専門店でスープカレー。
食後のカフェでは、調子にのってショートケーキを食べる。

『のぼうの城』和田 竜

公式サイト:http://www.shogakukan.co.jp/nobou/

 戦国時代、湖に囲まれた忍城(おしじょう)を舞台として、攻城側と籠城側が繰り広げる人間ドラマである。
 攻めるは石田三成率いる2万の豊臣軍、対して忍城を守るのは家臣と農民兵も合わせてたったの3700人。総大将である「(でく)のぼう様」こと成田長親は、大軍勢と水攻めに対してどう抗戦したのか。

 作中にあふれているのは、坂東武者と呼ばれる忍城軍の剛毅さ、あくまでも武士としての美学と誇りを尊ぶ三成の姿勢、背後に大きくそびえる秀吉のとんでもないスケール感である。
 この作品は映画化を前提とした脚本を小説に書き直したものだ。そのせいもあって、映像的な光景の描写や、登場人物のキャラクター造形の面白さと際立たせ方がとてもはっきりしている。
 作品を輝かせているスペクタクル感と男気あふれるかっこいい人物の魅力は既視感があり、漫画の『蒼天航路』がそうだったと気付いた。この小説も全編が迫力と爽快感に満ちている。

 個人的に惜しかったのは二カ所。
 ひとつは数多の書評や感想blogでも指摘されているように文中に作者による現代視点の時代背景の解説がたびたび挿入されること。私のように歴史の知識が無い人間には読書の手がかりとして役だったのは事実だけれど、のめりこんでいた気分が興ざめしてしまった。作者が新聞記者だったことが影響したのかもしれない。
 もうひとつは女性を描くのがあまり得意な作者ではないらしく、紅一点の甲斐姫がくだけた場面になると途端にライトノベルのような軽薄なキャラクターになってしまうことだ。シリアスなシーンでは凛としてかっこいい戦う美姫だったので、残念である。

 とはいえ、戦国時代についての知識に乏しい私でも、夢中になって読んだ作品だった。エンターテイメントとしてはとても優れていると思う。
 戦国時代好きだけでなく、漢(おとこ)に惹かれる人にもおすすめの一冊。

 装画は人気漫画家のオノ・ナツメ。特色の多色刷りに見えて、実はプロセスカラー+銀で刷られた表紙も地味にかっこいい。
 『美味しんぼ』の花咲アキラによる漫画版がビッグコミックスピリッツ誌で連載中とか。映画化も含めてメディア展開が楽しみな作品だ。

のぼうの城
のぼうの城
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和田 竜
小学館
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悪果、イントゥ・ザ・ワイルド、おくりびと、崖の上のポニョ

なんだかんだとバタバタしているうちにまたしても一週間が過ぎてしまったのであった。本とか映画とか、じっくり感想を書くタイミングを逃している。

以下、ミニ感想。

《読んだ本》
『悪果』 黒川 博行・著
舞台は大阪で主人公はマル暴担当の刑事、悪人しか出てこないハードボイルド小説。ヤクザの賭場に強制捜査をする前半も面白いのだけれど、その背後にある大きな陰謀が明らかになっていく後半は読むのをやめられないほどのめりこんだ。
警察もヤクザも癒着しまくりで、全員が程度の多少はあれど私利私欲のために行動している。その徹底ぶりがまた痛快だった。
タイトルの『悪果』は"悪事の果て"であり、ラストはニヤリとさせられる。

悪果
悪果
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黒川 博行
角川書店
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《観た映画》
『イントゥ・ザ・ワイルド』 http://intothewild.jp/
成績優秀だった若者が自分を捨てるために旅に出て、餓死寸前に人生で一番大事なことを知るというロードムービー。実話だというので驚いた。
アメリカからヒッチハイクしながらアラスカへ。たくさんの人たちの優しさを受け取りながらも、それでも一人になる道を選ぼうとする主人公。強がりではなく、本気で自分は自分だけで生きて行けると思っていたんだね。
劇中、彼はずっと日記を書いている。死の寸前、彼は大切なことは何だったかに気付き、それは最期のメッセージの署名にも表れていた。
上映時間が長く、しんどい描写もあるので、観に行く場合は万全の体調で臨むべし。

『おくりびと』 http://www.okuribito.jp/
東京でチェリストの道を諦めて実家の山形で納棺師になった主人公のお話。納棺師は遺体を棺におさめるという実在の職業である。広末涼子には賛否両論ありそうだけれど、本木雅弘演じる主人公はとても良かった。
人が死ぬこと、死に穢れを感じること、親と子のこと、普段は気にしない事柄を考えさせられる内容のいい映画だった。
余談1:本木雅弘の子供時代を演じている少年はKの友人で、私も知っている子だ。
余談2:眼鏡をかけた山崎努が実家の父と雰囲気そっくりで気になった。

『崖の上のポニョ』 http://www.ghibli.jp/ponyo/
問答無用のスタジオ・ジブリの新作アニメーション映画である。ストーリー性を期待すると肩すかしを食らうので、何も考えずに観に行くのがよさげ。
友人から聞いていた「ポニョはストーカー」「宮崎駿の変態性大爆発」という評価は正しかった。ポニョはかわいいだけでなくてグロくなったりするので要注意。
でも、絵はよかったよ。カラフルな「海の生き物オンパレード」は美しかったし、瀬戸内海がイメージされている風景は新鮮だったし。
声優としての矢野顕子の使い方が、あまりにも贅沢でおかしい。

図書館、輸入食材店

 年寄りの朝は早い。というわけで、早起きして朝風呂を堪能する父に引きずられるようにして近所の喫茶店でモーニングを食べる。
 食後、父は遊ぶ予定があるとかで電車にのって何処かへ出かけていった。便利かなと思ってSuicaを貸したら、珍しさに喜んでいた。

 私はといえば、そのまま図書館と書店へ。
 図書館で予約していた本の受け取り、ついでに新着資料コーナーを物色する。初めて知ったのだけれど、新着資料は毎週日曜に書架に陳列されるんだってね。ということは、日曜に図書館に行けば新しい本に出会える可能性が高いということか。
 予約していた『悪果(著・黒川博行)』、新着資料では『聖女・悪女伝説 神話/聖書編』を借りる。『悪果』は大阪が舞台の警察&ヤクザのハードボイルド小説。登場人物が全員関西弁を話しているので、私の脳内も自然と関西弁モードに切り替わってしまって面白い。

悪果
悪果
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黒川 博行
角川書店
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聖女・悪女伝説 神話編/聖書編 ムーサの贈り物 III
喜多尾 道冬
音楽之友社
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 書店では山岸涼子の漫画を二冊購入する。『日出処の天子』の続き、『テレプシコーラ』の第二部1巻である。
 山岸涼子のファンになって長いのだけれど、彼女がビアズリーの絵に影響を受けていたことを知ったのは最近だった。ビアズリーといえば、私が一番好きな画家であるので、結果的に山岸涼子の絵に惹かれてしまうのも当然と言えよう。独特の繊細で美しい描線、からっとした絵で展開される「凄まじい」と表現すべきストーリー、本当に大好きだ。

テレプシコーラ/舞姫 第2部1 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
山岸凉子
メディアファクトリー


日出処の天子 (第1巻) (白泉社文庫)
山岸 凉子
白泉社
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 帰宅してなんだかんだと仕事をしていたら夕方になり、例の漢方薬医に向かう。長年アトピーで悩まされているものの、漢方薬を飲み始めてからすこぶる調子がいい。医者からもいい経過だと褒められる。
 帰りに輸入食材店でオリーブオイルとバルサミコ酢を購入。調味料もパスタ麺も、輸入食材店の方がスーパーで買うより安い(乾パスタ、500g×3パックで880円とか)。
 ついでに安かったので自然食の店でトマトを購入。この季節に買う有機栽培のトマトは最高においしい。塩だけで何個でもいける。

 夕食はサラダ大盛りと豚ロースステーキなど。サラダは自分で作るとてんこ盛りにできるので良い。トマトとバルサミコの相性は最高で、もりもりと食べた。

 夜、へべれけの父が帰宅。楽しい一日だったようで何よりだ

旅の途中で読んだ本。

 英国旅行の途中で読んだ本を簡単に。後ろの2冊はロンドンに置いてくる前提で買ったので、母が読んでも楽しめそうという観点で選んでいる。


『さまよう刃』 東野圭吾

 友人の編集K嬢に「東野圭吾の『夜明けの街で』はイマイチだった」と話したところ、絶対面白いと推薦された本である。
 娘を殺された父親が犯人を追いつめて復讐するサスペンス小説だ。私自身が父子家庭の一人っ子ということもあってか、父親の哀しみに感情移入しやすかった。少年犯罪、少年法、被害者の遺族の憤りなど、いろいろなテーマが盛り込まれている。
 途中の暴力的なシーンは、読むのが辛くなるぎりぎりと言えよう。あれ以上描写されると読むのやめてしまったかもしれない。
 続きが気になって、往路の飛行機で夢中になって読んでしまった。最後のどんでん返しは、「そこがどんでん返されるのか!」と意外な部分だったので、驚くと同時にとても面白かった。

さまよう刃 (角川文庫 ひ 16-6)
東野 圭吾
角川グループパブリッシング
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『卵の緒』 瀬尾まいこ

 母親と子供を描いた小説が2作収録されている。いずれもほんわかと優しい気分になれるステキな作品だ(上記、『さまよう刃』で眉間に刻まれた皺をほぐすのにちょうどよかった)。
 表題作に登場する母親がとてもかわいらしかった。私の母もかわいらしいひとなので、ついつい重ねて読んでしまった。

卵の緒 (新潮文庫 せ 12-2)
瀬尾 まいこ
新潮社
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『日本の昔話』 柳田国男

 正直に書くと、"新潮文庫の百冊"キャンペーンに惹かれて買ってしまった一冊。
 知っているようで知らなかった日本の民話がてんこもりに収録されている。情けないようなオチや、笑える話もたくさん入ってい楽しい。ひとつの物語りが1〜2ページと短く、移動時間中や寝る前に読むには都合がいい本だ。
 残念ながら半分ぐらい読んだところで帰国してしまったので、後半の半分は読めず。

 個人的には、漁師に狙われた猿を助けた優しいおじいさんが、お礼にもらった宝物を盗まれる話が笑えた。
 おじいさんは飼い猫のタマに宝物を探し出すように命じ、「見つけられなかったら、これだ」と包丁をぎらつかせる。タマも同様にネズミに向かって「見つけられなかったら食べてしまうぞ」と脅す。結局、ネズミが無事に宝物を見つけることに成功し、おじいさんもタマもネズミもみんなが幸せになりました、めでたしめでたし。猿を助けた心優しいはずのおじいさんが、突然猫を脅す豹変ぶりがたまらない。


日本の昔話 (新潮文庫)
柳田 国男
新潮社
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『クライマーズ・ハイ』、『犬身』、『イニシエーション・ラブ』

6/22
 『クライマーズ・ハイ(著・横山秀夫)』を読了。
 これで、映画版→ドラマ版→原作とすべてさらったことになる。事前に映像であらすじが頭に入っているせいか、登場人物が多いのに混乱せずに読めた。
 映画に入ってる要素と入ってない要素、ドラマに入ってる要素と入ってない要素、映像を先に見ておくとそれぞれに考えて取捨選択してるのだなと俯瞰して楽しめるのが面白い。

クライマーズ・ハイ
クライマーズ・ハイ
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横山 秀夫
文藝春秋
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↓これがNHKのドラマ版。原作にかなり忠実である。

クライマーズ・ハイ
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アスミック (2006-05-12)
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6/23
 『犬身(著・松浦理恵子)』を読了。
 装丁がすてきだと思ったら、やはりミルキィ・イソベさんであった。
 祖父江慎さんが破天荒な装丁家だとすれば、ミルキィさんは美しく上品な変化球を繰り出す装丁家だと思う。お二人とも、大好きな装丁家である。

 書籍の内容は、最初の数ページに少しひっかかりがあったものの、後はぬるぬると物語世界に沈んで堪能することができた。ひさしぶりに、オタク用語で言うところの"キャラ萌え"してしまう作品に出会えて嬉しい。"彼"の登場する作品をもっと読みたくなった。
 『親指Pの修業時代』もそうだったけど、松浦理恵子の作品の中には「絶対に彼氏には読ませたくない!」と思える文章が、こっそりと挿入されている。女の本音なのか、私の深層心理なのかはわからないけれど。

犬身
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松浦 理英子
朝日新聞社
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6/24
 『イニシエーション・ラブ(著・乾くるみ)』を読了。
 「最後の二行に驚愕する!」との前評判通り、確かにおぉっと驚いた。途中で変だなと思ったところは、やはり「仕掛け」がある箇所だった。
 具体的にはある登場人物の"したたかさ"にゾワッとするのだ。現実にあり得そうだし、それほどに軽く倫理感をコントロールできるのが現代の若人らしくて恐ろしい。綿密に作ってある小説だなと思った。

イニシエーション・ラブ (文春文庫 い 66-1)
乾 くるみ
文藝春秋
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『夜明けの街で』 東野圭吾

 読了したのは6/14。
 とても読みやすく、一日で読めてしまった。初めて読む東野圭吾作品でもある。
 平凡なサラリーマンの主人公が派遣社員の女性と不倫関係に陥り、なぜか15年前の殺人事件の真相に直面してしまうというお話。

 不倫関係の始まりは往々にしてこんなものだろうし、のめり込んでいく有様や涙ぐましい各種アリバイ工作なども、これぐらいして当然なのだろう。そういう意味では連続ドラマを見ているような楽しさがあった。肩肘はらず、深く考えず、話の続きを楽しみにするような楽しさとでも言おうか。
 私自身は女性なので、主人公の罪悪感や葛藤、都合のいい自己弁護などをニヤニヤしながら楽しんだ。読書スピードが早まったのはそういう理由もあるだろう。
 殺人事件の真相がわかるくだりになって、どんな種明かしがあるのかと期待していたら、連続ドラマのような拍子抜けするものだったので肩すかしをくらった。最近の連続ドラマでよく言われる「視聴者をひっぱるための謎」というか、さんざん気を持たせておいて、真相はこれかよというような空虚感。いや、そこ以外はとても面白かったんだけどね。
 しかし、最終章である33章は良かった。そうそう、ラストシーンはこうでなくては。ぞっとする男性読者も多いだろうけど、大半の女性読者はにんまりするのではなかろうか。
 巻末に収録されている番外編は蛇足だったように思える。主人公の友人の私生活なんて、彼の発言を見ていたらおのずと想像できるものだったろう。33章よりもぞっとさせてくれるのなら別だけど。

 本書の装丁は珍しいフランス綴じである。表紙の写真、用紙の選択、スピン(糸しおり)の色まで、丁寧にデザインされており、美しくて清潔感のある造本だ。「不倫+殺人事件」の物語にあえてこういう装丁を持ってくるのは、面白い皮肉だと思う。

 東野圭吾ファンの中では評価が低い作品らしいので、今度は別の作品も読んでみたい。

夜明けの街で
夜明けの街で
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東野 圭吾
角川書店
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『マンチェスター・フラッシュバック』 ニコラス・ブリンコウ

読了したのは6/11。

 ロンドンで幸せに暮らしていた男が、過去と現在の二つの殺人事件のために、かつて男娼を営んでいたマンチェスターに引き戻されるというお話。二つの殺人事件は解決するのだけれど、いずれも真相は驚くべきものであったが、恐らくそれは本題ではないだろう。

 物語中、現在と過去が交互に登場する。かつてはハバを効かせていた人物の零落とか、浄化される前は薬とセックスの温床だった店とか、時間の経過による対比が印象的だ。映画『トレインスポッティング』とは時期も場所もずれるけれど、サッチャー政権下で労働者層が貧困と失業にあえいでいたイギリスがここにも表現されている。
 私が通う英語学校の先生・Samは、自分の故郷であるマンチェスターをイギリス第二の都市として栄えていて日本で言えば大阪のような街だという。主人公のジェイクを日本人に置き換えれば、堂山でゲイボーイをしていたが、現在は歌舞伎町のカジノ経営で成功しているといったところか。
 似た名前の登場人物が多いのと、80年代前半の大衆文化にまつわる固有名詞が頻出するので、少々混乱してしまった。音楽関係に顕著で、詳しければもっと楽しいのかもしれない。しかし、マンチェスターの風景や街の様子はSamから聞いているものと同じで、満足のいくものだった(もちろん、現在はもっと平和な街だろうけど)。

 原題は『Manchester Slingback』である。「slingback」とはいわゆるバックストラップの靴を意味する(サンダルやパンプスで、踵上部をベルトでぐるりと固定するアレである)。作中に登場するゲイの少年たちもおしゃれ用に好んで履いていて、象徴的なアイテムとなっている。馴染みがない言葉のせいか、邦題では「フラッシュバック」になっている。内容的にはどちらの単語でも意味が通じるので面白い。

 80年代のイギリスやロックが好きで、ゲイカルチャーに抵抗がなければおすすめできる一冊である。

マンチェスター・フラッシュバック (文春文庫)
ニコラス・ブリンコウ 玉木 亨
文芸春秋
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4月第四週のわたくし

4/21
『フレディ・マーキュリーと私(著・ジム・ハットン)』を読了。暴露本ではなく、せつないラブストーリーである。スーパースターと愛し合うことの喜びと苦悩、「君を一番大事に思っている」という言葉の重み。ゲイゆえに日陰の存在に徹し、一番の恋人だったのに葬儀では先頭の車に乗ることを拒否された辛さ。そのどれもがせつなくて、まったく接点が無いのに自分の身に置き換えては息を漏らしてしまう。

フレディ・マーキュリーと私
ジム ハットン
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4/22
英語学校の日。先生はSteve。今日の生徒は私一人だったので、マンツーマンでいっぱい話せて面白かった。

4/23
身分証明書としての住基カードができたので、意気揚々とレンタルビデオ屋の会員カードを作る。無免許の人間にはなにかと不便な世の中である。
紹介キャンペーンでKに紹介してもらったら、1500円分のレンタル補助券をもらえた。早速、Talking HeadsのCDなどを借りる。『Psycho Killer』、大好きだ。

4/24
NHK教育のテキスト『源氏物語の男君たち(著・瀬戸内寂聴)』を読了。源氏物語関連の本は、前知識があるおかげで内容に関わらず気楽に安心して楽しめるのが良い。

4/25
英語学校の補講の日。先生はSam。マンチェスター話や、親について思っていることを話す。
Kのご母堂が来京されるとのことで、Kは空港に迎えに行った。

4/26
昼から外出。K、Kのご母堂、EYE、私の4人ではとバスに乗る。知っているようで知らない東京がわかって面白い(首都高速が川を埋め立てて作った道路だったとか!)。浅草寺にも立ち寄ったが「奈良に比べるとショボいな」と思ってしまったのは内緒である。

4/27
誕生日である。34歳になってしまった。
何人かの方からお祝いのメッセージをいただいて嬉しかった。
しかし、なんとなく淋しかった誕生日で、夜はKにわがままを聞いてもらった。

4月第三週のわたくし

4/14
ちょっとしたお土産を渡すべく、ご近所のMさんとランチをご一緒する。
パスタ屋にご案内した後で、前日の夕食がパスタだったと聞いて焦る。
食後のケーキ屋は気に入っていただけたのではないかしら。

4/15
昼から打ち合わせが一件。
夜は英語学校へ。先生はSam。
奈良でマンチェスターから来たという男を見たというと、Samは興奮して喜んでいた。

4/16
『夜明けの縁をさ迷う人々(著・小川洋子)』を読了。シュールで静かな短編集である。個々の物語は美しいが、続けて読むと少々食傷気味になってしまった。一編読んでは別の本に行ったりして、間隔をあけて読むのが良さそうだ。
タブローというよりもスケッチに似た、飾り気も技巧も感じさせない世界が素敵である。

夜明けの縁をさ迷う人々
小川 洋子
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4/17
昼間は美容院でカットついでに簡単なセットをしてもらう。
夜は出版記念会へ出かける。半年ぶりに着物を着た。
人を人に紹介してばかりの夜だった。

4/18
昨日の疲れもどこへやら。
午後からヒロさんがいらっしゃるというので、合流する。夜は長い。

4/19
朝から届け物。
連絡ミスで予告無しにお邪魔することになり、Mさんは驚いてらした。

4/20
帰省した奈良を思い出して、『火の鳥・鳳凰編』を再読する。
Kもつられて、『火の鳥』各巻を片っ端から再読しはじめた。


火の鳥 (4) (角川文庫)
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4月第二週のわたくし

↑マンネリ化しているタイトルにちょっと工夫をほどこしてみた。

4/7
 夕方から打ち合わせが一件。
 夜はお食事会に参加することになって緊張する。ライター某氏に恥ずかしい過去を渡してみる。あぁ、恥ずかしい。

4/8
 『ライラの冒険 黄金の羅針盤』の上下巻を読了する。
 ふたつの結論、ファンタジーだけれど子供向きではない、映画は動く挿絵なので原作の面白さを再現できていない。
 原作を読んでから映画を見るとがっかりするだろうし、映画を先に見てしまうと展開がわかってしまうのでドキドキ感が失せる。思いつくマシな鑑賞法としては、まず原作小説を先に読み、三部作が出揃ってから映画を見る、ぐらいだろうか。
 映画もなぁ、役者や美術や動物のCGはがんばっててステキなんだけどなぁ。

黄金の羅針盤〈上〉—ライラの冒険
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4/9
 ミネリと一緒に新橋で試写会の予定だったが、諸事情により断念する。鑑賞券をもらったので、映画そのものは後日見に行こう。
 せとうち旬菜館で愛媛な食料を買い込んだのち、新橋駅前の驛舎珈琲店にて長話をする。漫画、着付け、映画、料理、などなど。女子トークは楽しいねぇ。

試食してみたら、やたらとおいしかったので即買いした豆乳マフィン。リッチでほんわかと優しい味である。この味でバター不使用でローカロリーなのはすごい。Kにも好評だった。確かに紅茶にもよく合う。

しっとり&もっちり!豆乳おからマフィン


4/10
 よく考えたら、明日から帰省するのであった。そのわりにはいろいろとやらねばならないことがいっぱいある。
 企画書用にかわいい絵を描いてみたり、例によって例のごとくなアパレル系のデザインをやってみたり。
 夕方、靴下を買いに街に出てみるも、求めるような靴下に巡り会えず。なぜ、「黒かグレーか紫」、「クルー丈」、「織り模様or控えめな模様」の靴下が売っていないのだろう。どうでもいいが、ソックスって言わないとダサいの? シーツを敷布と言うのとどっちがタブーなの? 枕カバーはピローケースって呼ばなきゃダメ?

さいきんのわたくし

4/2
 『アップルの法則』を読了。Macintoshを使い始めて12年、実は詳しく知らなかったAppleのプロフィールを知ることができた。ようやく「ジョブズが」とか「アメリオが」とか、そういう話題についていくことができそうです。
 Appleの、というよりスティーブ・ジョブズの"ものづくり"に対する考え方は、他の物事にも応用できそうだ。
 マニアックになりすぎず、かといって簡単になりすぎず、Appleのファンなら楽しめる一冊。

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4/3
 めでたくも高木敏光氏の『クリムゾン・ルーム』の発売日である。まずは予約していたリブロ某店にて自分用の一冊を受け取る。会計を済ませて棚を見ると、おぉ、ちゃんと店頭に並んでいる! 感慨深いなぁ。
 昼からはリブロ青山店を起点に、ライター某氏と一緒に書店めぐりをしてみた。
 さすがに配本翌日ということもあり、まだ店頭に並んでいない店舗もあったけれど、陳列されている書店では平積みになっているところがほとんどだった。ゲーム本のエリアに並んでいる店があったのはご愛嬌、今後変わっていくことでしょう。
 いろいろな意味で応援している本なので、たくさんの人に読んでもらいたいと思う。どんな本かは公式サイトをご参照ください。

クリムゾン・ルーム
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クリムゾンルーム公式サイト

4/4
 友人のベリーダンサー・Rititaに頼まれていたフライヤーのデザインをする。今月から開講されるベリーダンス教室の告知用である。
 ベリーダンスといえば、アラビック。だけどRititaのレッスンはラテン音楽やヒップホップの音楽も使う。アラビア音楽だけではなく、汎用性の高いかっこいいダンスを学べるとのこと。
 デザインのコンセプトは「ベタなアラビア風じゃなくて、ラテンでブラジルでポップな感じ」とのことで、好きなようにやらせてもらった。Rititaの反応もいい感じで嬉しい。フライヤーが校了したら、このblogでも紹介します。

4/5
 日中は仕事の絡みもあって、Movabletypeの4をいじる。恥ずかしながら、初めて触るMT4であります。テストがてらに自分のblogで導入してみたのだけど、CSSがバグって表示が左寄せになってしまった。ソース見ながらいじればすぐに直せるんだけど、めんどくさいので放置する。ま、追々ね。

 夕方、ケーキと紅茶を大急ぎでいただいたり、セーラー服のスカーフの結び方について20年前の知識をほじくりおこして説明してみたり。慌ただしかったけど、かわいい少女たちが、ちょっとずつ親しんできてくれて嬉しい。

 夜は、気持ちいい和食の店で楽しい宴会に参加した。阿鼻叫喚の花見客を見下ろしながら、テラス&こたつでくつろぐのは贅沢な気分である。
 またしても面白そうな本のタイトルを聞いてしまい、「読みたい本リスト」が増えてしまって嬉しいやら困るやら。
 会計の際、店員を呼んだ某社長が「決算お願いします」と素で間違えていたのが面白かった。

4/6
 昨夜の飲酒がたたって、なんだかグロッキーである。そんなことにはめげずに、朝のうちに一仕事こなす。自分で自分を褒めてルンルンする。

 夜、なにげなくTVをつけたらN響アワーをやっていた。
 映画「アマデウス」のテーマ曲としても有名なモーツァルトの交響曲第25番が、8種類のパートしかないことを知って驚く。弦楽器以外はオーボエ、ファゴット、ホルンだけというシンプルさ。もっと大編成だと思い込んでいたのに、こんな小さい編成であれだけドラマチックな音楽を作れるんだねぇ。
 クラシックは音楽を聞くだけでなく、時には目で見て楽しむのも有りだなと思った。

さいきんのわたくし

例によってダイジェスト。

3/25
 昼から近所で打ち合わせ。細身のパンツは脚長効果があるという結論に至るも、同意を得られず。
 夜は英語学校、先生はSteve。"embarrass(狼狽した・まごついた)"というテーマでそれぞれに語り合う。Steveによれば、ギタリストにとって一番embarrassなのは、ストラップが外れたときだそうな。そういうものなの?

3/26
 昼から近所で打ち合わせ。Kも外で打ち合わせ。

3/27
 『私の男(著・桜庭一樹)』を読了。
 お互いを欲する娘と養父の出会いから別れまでのお話。読後感が釈然としないのは、私が思春期に父との二人暮らしを経験しているからかもしれない。現実の、「二人きりで暮らす父と娘」の関係はもっともっと複雑だ。
 ものがたりに必要以上のリアリティを求めるのは野暮だけど、凝った設定を作るのなら、それぞれに最低限でいいので説得力のある着地点がないと白々しく感じる。そういう「白けた感じ」は伏線や小道具にも顕著で、思わせぶりに登場する品々やセリフの正体がわかる度にがっかりさせられてしまった。
 単純にイヤだったのは「おとうさぁん」と拗音の「ぁ」が多用されているところと、「お......」と省略されたセリフが頻出するところ。このむずがゆさはなんだろうと思ったら、著者がライトノベルを書いていることが影響しているようだ。
 ピーター主演の映画『薔薇の葬列』のような、乾いた空気でエロティックな作品を想像していたんだけどな。残念ながら好みの作品ではなかった。でも、読んでみないと判断できないので、読むことができて良かった。
 午後、東京駅まで母を迎えに行く。

私の男
私の男
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桜庭 一樹
文藝春秋 (2007/10/30)
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3/28
 早く寝たので早く起床。母と一緒に近所を徘徊する。買い物とか、食事とか、明日のバスの手配とか、郵便局とか。
 パラレル・ワールドのイギリスが舞台ということで、映画『ライラの冒険』を見る。全体としては微妙な映画だが、世界観や細部はとても気に入ったので、原作を読んでみたくなった。
 夜は「有が料理してるの見たことない」と、とんでもないことを言う母を説得すべく、私が夕飯を作った。白菜と豚肉の重ね蒸しが好評でなによりである。

3/29
 早朝から、母と一緒に成田空港に向かう直行バスに乗る。道中、そこかしこで咲いている桜の風景を堪能する。空港では新しくできたお茶漬け屋で朝食を取り、タリーズでお茶を飲んだあと、出国ゲートに向かう母を見送った。
 昼過ぎに帰宅して、仮眠する。日暮れ時に目覚めて、夜は英語学校の先生・Mickの送別会に行く。習ったのは約1年だったけれど、彼の言語学的興味にもとづいた授業はとても知的で面白く、ひさしぶりに出会えた大好きな先生だった。突然の帰英に、学校のスタッフも淋しがっていた模様。二次会の後、「来年、英国で会おうね」と約束して別れる。

3/30
 前夜、私にしてはめずらしい量を飲んだせいか、寝起きの頭が痛い。
 だらだらと仕事をしつつ、なんとなくTVを付けたら母校が甲子園に出場していたので眺めてしまう。試合結果は圧勝であり、ひさびさに校歌を斉唱していい気分になった。

『みなさん、さようなら』久保寺 健彦

 新聞の書評を読んで気になった本。少年期のトラウマが原因で、住んでいる団地から出られなくなった青年のお話である。

 同級生もたくさん住んでいて、生活にまつわる基本機能を敷地内に備えた団地は、主人公にとって安全で居心地のいい場所だ。彼は、初恋も初体験も初任給も、すべて団地から一歩も外に出ないまま得ることになる。
 でも、変わらないものなど何も存在せず、団地は年月の経過とともにゆっくりと寂れていくのだ。同級生は引っ越して行くし、建物も老朽化する。

 私自身も12歳まで団地で育った。母が出て行ったことをきっかけに、13歳で駅の近くの新しいマンションに引っ越した。初めての自分の個室に夢中になってからは、団地のことはまったく思い出さなかった。
 22歳で気まぐれに訪れた団地は既に取り壊しが決まっており、ほとんどが空室でとても淋しい光景の中にあった。
 かつて自分が住んでいた部屋のドアの前に行き、空室になっているのを確認して新聞受けから中を覗いた。玄関しか見えなかったけれど、壁も下駄箱も知らない色のペンキで塗られているけれど、そこは確かに私がいた場所だった。四畳半の台所、六畳二間の居室。狭かったが、父の象徴である壁一面の本棚は威圧感よりも安心感を与えてくれたし、母の抜群のセンスで居心地よくまとめられた室内は浴室まで植物にあふれ、客観的に見ても素敵な空間だった。
 そんなことが頭にあふれて、涙が出た。意識したことはなかったが、団地は私にとって「両親が揃っていた」幸せな時代の象徴だったのだ。もうあの懐かしくて愛しい部屋には入れない。あの頃には戻れない。父と母と私で過ごした、三人の幸せな暮らしは帰ってこない。
 かつて、鍵を隠していたガスのメーターの小扉を開けてみたが、もちろん鍵は無かった。私は逃げるように、自宅のマンションに帰った。残念ながら父はセンスがよろしくないので、マンションの中は団地ほどに居心地がよくない。もう、あそこには帰れないのだ。帰れない場所ならば、さっさと壊してしまえと、憎しみさえ抱いた。
 それ以降、団地はおろか跡地にすら行っていない。二度とあの周辺は通りたくないと思うようになった。

 というように、私にとって"団地"はかつての愛すべき拠り所だったのだが、敷地から出られない主人公にとっては世界そのものである。そんな大切な場所が滅びていく一部始終を目のあたりにせねばならないなんて、なんと辛いことなのだろう。
 読み進むにつれて悲しい気分が募っていったが、最後には救いがあったので良かった。私も、私の団地の跡地に行ってみたくなった。

みなさん、さようなら
久保寺 健彦
幻冬舎 (2007/11)
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『死の接吻』アイラ・レヴィン

 前知識ゼロで読み始めたら大正解だった。ブックカバーをかけて読んでいたので、裏表紙のあらすじすら未読のままで読み始めた。

 大富豪の三姉妹を相手に逆玉の輿を狙った男が、完全犯罪に失敗してしまうお話。舞台は第二次大戦後のアメリカの大学から始まる。
 「来ないの」「マジ!?」という意味の会話は、当時のアメリカでも現代の日本でも、学生生活には付き物である(頻繁に起こることではないけれど、私の学生時代にも周囲で2〜3の事例を聞いた)。

 そして起こる第一の殺人、章が変わったところで読者は著者が仕込んでいた「仕掛け」に気づく。
 「仕掛け」そのものが面白いので残念ながら、ここではそこについて言及しないけれど、久しぶりに「文学にしかできない仕掛け」に出会った。これは映像や漫画では難しいと思うよ。ラジオドラマでぎりぎり再現できるかな? 当時の読者たちにはさぞかしショックだったろうなぁ。
 後日、何度も映画化されたり、プロットをまねたTVドラマが作られて関係者が謝罪することになったりしたそうな。面白いものはみんなが放っておけないのである。

 「仕掛け」以外にも物語りの筋がわかりやすくて面白い。少しずつ視点が切り替わり、登場人物も少なくないのに混乱せず、どんどん読み進めることができた。
 美貌を最大限に活用して狡猾に世渡りをしようとする男、隙の多い富豪の令嬢、娘に金を与えるだけの父親、令嬢に心を寄せる“騎士”役の男、それぞれに今では一般的なキャラクターだけれど、それでも物語はまったく陳腐にならず、むしろ新鮮な驚きをもって読めた。
 「なにか面白い本ない?」と聞かれたら、真っ先におすすめしたくなる一冊である。

死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1)
アイラ・レヴィン 中田 耕治
早川書房 (2000/00)
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さいきんのわたくし

2/27
ライターN氏の推薦図書である『ティファニーで朝食を(著・カポーティ)』を読了。
村上春樹訳ではなくて、龍口直太郎訳の新潮文庫版である。
カポーティを読むのは初めてだったけれど、この不思議な感じはとても好みだ。
感想はあらためて書きたいんだけどなぁ。

ティファニーで朝食を (新潮文庫)
カポーティ 竜口 直太郎
新潮社 (1968/07)
売り上げランキング: 58790

2/28
図書館でさらに資料用に本を借りまくる。葛飾北斎のすごさ・すばらしさに今更開眼する。
こうして、すてきな日本美術に出会うたびに、どうして学生時代に体系立てて学ばなかったのかと悔やまれる。

2/29
 『へうげもの(著・山田芳裕)』の既刊5冊を読破する。

 最近の週刊モーニングの中で一番のお気に入りの漫画だ。時は戦国時代、「侘び」や「数奇」にのめりこんだ武人・古田織部が物欲と出世欲にまみれながら「ゲヒヒヒ」と戦国の世に飲み込まれていくお話である。山田芳裕の濃いけれど見やすい絵と相まって、今までになかった戦国時代の物語となっている。

 当時、政治や戦術だけが立身出世に影響するのかと思いきや、「数奇」と表現される審美眼や感覚も重要だったことがわかる(もちろん、漫画の中で誇張されてはいるのだろうけれど)。
 もうね、何がいいって、政治的な駆け引きの最中なのに、「名物」として名高い茶釜の美しさにうっとり見ほれてしまう古田織部のキャラクターが良い。「ステキなものが欲しい!」「美的センスをを極めたい!」と、俗物的な貪欲さが全開なのが良い。
 今まで戦国時代に興味はなかったのだけれど、これを機会にハマってしまいそうだ。

『へうげもの』公式blog http://hyouge.exblog.jp/

へうげもの 1服 (1) (モーニングKC)
山田 芳裕
講談社 (2005/12/22)

3/1
昼から近所のご案内をする。
例のサンプルを見せてもらう。こ、これか!!
夜はおそるおそるとある店にご案内する。
実質的に壮行会となった。今年もさらに攻めましょうぞ。

3/2
夕方からかわいらしい少年少女と再会する。
なんであなたたちはそんなにかわいいのかしら。
メールアドレスの交換もできて嬉しい。今後もよろしくお願いします。

3/3
そういえばひな祭りだった。
しかし私は仕事そっちのけで展示用の制作に燃える。いや、仕事もしてるけどね。
展示の詳細については、もうすぐ発表します。

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さいきんのわたくし

2/18
春めいてきた。
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2/19
 『酔いがさめたら、うちに帰ろう。(著・鴨志田穣)』を読了。
 アルコール依存症による吐血から何度も入院を繰り返す筆者は、ご存知、漫画家の西原理恵子さんの亡夫・鴨ちゃんである。度重なる吐血からついに閉鎖病棟に入院し、そこでの闘病記と私小説と告白の入り交じった作品である。淡々と綴られる全編に「どうでもいいや」という虚脱状態と「依存症から解放されて、家族のもとに帰りたい」という思いが交錯している。個人的には、登場回数こそ少ないものの、愛情のこもった妻の描写に切なくなった。
 残念なことに、刊行から半年後に著者は鬼籍に入る。死因は腎臓癌。発売当時、近所の書店で著者のサイン会が行われているのを見かけたことを思い出す。やつれた頬が痛々しかったけれど、にこやかな笑顔でファン一人一人にサインや声かけをしていた。私は気づかなかったのだけれど、傍らで西原理恵子さんが見守っていらしたとか。来月には遺稿集も出るらしい。

酔いがさめたら、うちに帰ろう。
鴨志田 穣
スターツ出版 (2006/11)
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2/20
Dreamweaverの10周年イベントがあったのだが、業務の都合で行けず。

2/21
夜、ひさしぶりに新宿の刀削麺屋へ。

2/22
吉祥寺で打ち合わせが一件。甘党のライター某氏は「一人じゃ食べられないから」と苺クレープを召し上がっていた。

『ゴースト・バスターズ──冒険小説』 高橋源一郎

 思っていたよりも時間がかかってしまったけれど、ようやく読了。

 物語はブッチ・キャシディがサンダンス・キッドと一緒にゴーストを探しに行くお話である。途中で二人が出会う人たちや想像の中で登場する人たちの挿話がいくつも差し挟まれる。それは松尾芭蕉と河合曾良だったり、芭蕉と連句するアルチュール・ランボーだったり、ドン・キホーテとサンチョだったり、はたまた則巻千兵衛博士とハルばあさんだったり......。それぞれの切ない物語がちりばめられ、終着地点にはゴーストが絡んでいる。
 文学と映画に詳しければ、もっとたくさんの登場人物を見つけられるのだろう。ゴーストの存在理由や秘密も見つけられるのかもしれない。

 でもね。そういうことは私にとってどうでもいいことなのよ。それよりも、ペンギン村にたった一人残された千兵衛博士が挑み続けた黒いドアと"死"の正体や、姪を残して「疲レチャッタ」とつぶやきながら死んでいくドン・キホーテや、長年の悲しみから馬房の闇の中に滲んでしまった黒人の老婆や、初仕事で流れ弾に当たって落馬する15歳の少年探偵の、淋しくも素敵な物語を味わうことの方が大事。
 物語の最後、芭蕉と車掌を乗せた俳句鉄道888は光の彼方へ消滅していくのだ。その刹那的で美しい情景ときたら。
 こうやって羅列するとまるで荒唐無稽にしか思えない事象なのに、作品の中では円環状にきれいにまとめてられている。乾いた文章なのに情緒があってね。終わりに近づくにつれて、心がゆっくり"きゅーっ"と絞られていく感じ。

 どこがどう好き、と具体的に書けないのがくやしいのだけれど、やっぱり私は高橋源一郎の小説が大好きなのだと再認識する。やっぱり好きです、愛しています。

ゴーストバスターズ―冒険小説
高橋 源一郎
講談社 (1997/06)
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『ジェネラル・ルージュの凱旋』海堂 尊

 我ながら、まだ読むかという感じで読了した、海堂 尊の4冊目である。

 既に興味は薄れていたのだが、「図書館で予約が回ってきたし、せっかくだから読んでみよっかな」という不真面目な姿勢で読んだら、実は面白かった。
 前2冊『ナイチンゲールの沈黙』と『螺鈿迷宮』が非現実な超展開で胸焼けがしていたのだが、この4冊目はそういったハナにつく鬱陶しさが無くて良い。女性があまり前面に出てこないのも影響しているかもしれない。

 とはいえ、この作者のクセだと思われる「キザな別名」や「漫画的な台詞回し」は健在で、つくづく「漫画作品にしたら面白くなるのになぁ」と思わされた。今回の主要人物であるICU部長のあだ名"ジェネラル・ルージュ"の由来のくだりなど、小説で読むにはあまりにもクサすぎて、本を投げそうになった。
 週刊モーニングあたりでババーンとドラマチックな絵で漫画連載すれば、紋切り型の台詞やご都合主義も目立たずに、面白いエンターテイメントになるのになぁ。小説だと、読者がシラケてツッコミを入れてしまう隙が出るのでもったいない。

 女性の描写にも似たようなことが言えて、気が強くて厳しいけれどホロリと女らしさを見せる看護師長や、第一線は退いているが病院内事情に精通しているベテラン看護師、研修成績は悪いが実技は抜群で正義感あふれる"ICUの爆弾娘"の若い看護師、などなど。誰もが「いかにも」なキャラクターで、まるで連続ドラマか漫画に出てきそうなステレオタイプの人物たちである。男性陣については、もう少しひねられていて魅力的なので、恐らくは作者の女性観が関係しているのかもしれない。
 舞台が病院ということで、登場人物に職業による個性付けが難しいという制約もあるのだろうけれど、そこはぜひともがんばっていただきたいなと思った。

 さて、この流れでいくと『ブラックペアン1988』に進めばいいのだろうけれど、あいにくと図書館では予約が98人も入っているので、私が読むのはしばらく後になりそうだ。今は「海堂 尊はお腹いっぱい」というの心境なので、予約が回ってくる頃には新鮮な気分で読めることだろう。

 そうそう。この本はタイトルに「ルージュ」という言葉が入ることもあって、装丁が真っ赤である。表紙や見返しが赤いのは別にいいのだけれど、本を開いたときにページの両脇にちらりと見える「表紙と裏表紙の端っこ」も赤いので、読書中に少々目障りだった。書店で目立つのも大事だけど、可読性も大事よね、と思った次第。『チーム・バチスタ〜』の黄色はさほど辛くなかったんだけどね。赤という色はそれほどに強い色なのかもしれない。

ジェネラル・ルージュの凱旋
海堂 尊
宝島社 (2007/04/07)
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『ハッピーエンドにさよならを』歌野晶午

 新聞の書評で気になって図書館で借りた本である。

 新聞の書評に載った本は、たいていが新刊であることも影響して、図書館では貸し出し中になっていることがほとんどだ。予約を入れて、忘れた頃に「貸し出し可能」の連絡メールが来る。
 小さな枠の書評では表紙の画像が掲載されることは少なく、したがって、図書館のカウンターで初めてその本の表紙を目にすることも多々ある。版型もふくめて、装丁に驚かされることも楽しみのひとつだ。
 この本も、そんな一冊で、カウンターの奥の予約資料用書架から取り出されてきたときには驚いたものだ。喪中ハガキを連想させる黒い縁取りの表紙(しかも微妙に黒枠が版型とずらしてあるので不安感を煽る)、黒い紙が使われた遊びと見返し、小口を含めた三方は真っ黒に塗られている。見るからに不吉な様相は、書店でどういう帯がついていたのか興味深いところだ。半立体のイラストレーションも忌まわしいイメージでどきどきさせられる。

 さて、内容はといえば、ミステリーの短編集だ。タイトルのように、どれもハッピーエンドではない短編が集められている。
 長さも様々な11本の物語、そのモチーフや主人公に際立って目新しい印象は無い。自分の出生に不信感を抱く少女、ヒモ同然の中年夫を支える妻、ストーカー、ホームレス、パチンコに入れ込む母親などなど。それなのに、それぞれ「こういうオチかな」という読み手の予想をさらっと裏切る結末を迎える。なるほど、どんでん返しが得意な推理作家の作品だと納得させられる。こういう皮肉でブラックな味付けの本は大好きだ。
 読みやすいのは短編集だからか、物語の展開が小気味いいからか、読みやすいニュートラルな文体だからか。するっと物語の中に入り込めて、地味だけれど鮮やかな手付きの手品を見せられたような読後感を迎えられる。

 この作家の本を読んだのは初めてだけれど、短編ではない作品も読んでみたいと思った。

ハッピーエンドにさよならを
歌野 晶午
角川書店 (2007/09)
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仕事納め?

 手を動かす作業という意味では午前中に仕事納めが完了した。最後の最後で絵を描きまくる。鉛筆で描くのが楽しい。ヒョヒョイと描けてしまうと、これまた楽しい。
 午後から打ち合わせが3件。たくさんしゃべる。何度行っても池袋の地理を覚えられない。来年はいろいろと面白くなりそうで、俄然やる気がみなぎる。

 移動中の読書は先日届いた『淋しいおさかな』。短編童話集なのですぐに読み終えてしまった。ちょうど、図書館で予約していた本も届いたようだ。これもまた、短編集である。
 今年は橋本源氏を読んでいたせいもあって、例年に比べて読んだ本の種類も冊数も極端に少ないのが残念だ。
 シリーズものを読み出すと、再読だろうと初読だろうと全部読みたくなってしまうので危険である。読破したときの達成感は気持ちいいんだけど、たまに他の本に興味が向いてしまうと浮気する気分になるのがよろしくない。などと書いている矢先に、北方謙三の『三国志(全13巻)』が視界に入る。いかん、いかんよ! 来年は個人的にシリーズモノ禁止。せいぜい5巻程度で完結するものに限定しましょう。

 夜は、急遽某所の年賀状制作を手伝う。元ネタが面白いので、デザインする私も楽しかった。
 クリスマス以降、例年と違った余裕を感じるのは、自分の年賀状作業が終わっているからだ。衣食足りて礼節を知る、年賀状を出し終えて余裕が生まれる。
 無事に手伝った年賀状も完成して、ほっこりした気分で一日を終えた。

 新しい年に切り替わる瞬間が、少しずつ近づいている。

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『螺鈿迷宮』海堂 尊

 『チーム・バチスタの栄光』の映画化で話題になっている海堂 尊だが、私がそもそも興味を持ったのは本作と『ブラックペアン1988』の装丁が気になったからだ。
 実際に読んだのは『チーム・バチスタの栄光』、『ナイチンゲールの沈黙』に続いて三冊目である。三作とも同一世界であり、時間軸も似たようなものだ。

 『バチスタ』は確かに面白かった。主要登場人物の二人のやりとりも、謎とそれに対する伏線も、ドキドキしながら続きを貪り読んだものだ。
 だが、『ナイチンゲール』と本作と、なんだか著者のクセが鼻につきはじめてしまった。

 著者が登場人物に愛情を注いでいるのはわかる。だからといって、主要人物のほぼ全員がキザな別名を持っているのは不自然で読んでいて萎える。「グチ外来」は面白いネーミングなのでいい。「論理怪獣(ロジカル・モンスター)」、「火喰い鳥」、「氷姫」、「電子猟犬(デジタル・ハウンドドッグ)」、ちょっとのけぞるが我慢しよう。「血まみれヒイラギ」、「アンラッキー・トルネード」、「ミス・ドミノ」、「銀獅子」、「懐刀」、「死の女王」、「生の女神」、「赤い孫悟空」......そろそろ胸焼けがしてくる。他にも思い出せないほどに、いろいろなニックネームが出てきた。

 『バチスタ』は合理的で納得がいく展開だったのだが、『ナイチンゲール』と本作は、いずれも後半に超展開が繰り広げられてしまう。超展開と「リアリティの無いニックネーム」によって絵空事な印象ばかりが前面に出てくるのだ。
 医療ミステリーを銘打って、現代の医学や医療をモチーフに時に警鐘を鳴らすようなくだりもあるのだから、読んでいて「非現実」が鼻につくと、それだけで白ける。続きを読むのが義務的に感じるようになる。
 これが漫画なら違和感が無かったかもしれないのにね。漫画も小説も創作には変わりないのだけれど、片方で許容されて片方で許容されない文法があるのが面白い(そんなことを感じるのは少数派かもしれないけれど)。

 ともかく、同じ作者の本を3冊読んだところで、個人的には食傷気味だ。まったく面白くないわけではないのだけれどね。まさしく、英語で言うところの「not my cup of tea」である。

螺鈿迷宮
螺鈿迷宮
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海堂 尊
角川書店 (2006/11/30)
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『淋しいおさかな』別役 実

 電車で移動中、遠く窓の外にもくもくと煙を吐く煙突を見て、子供の頃に好きだった童話集を思い出した。別役実の『淋しいおさかな』という童話集だ。

 平仮名しか読めなかった幼稚園児の私にとって、読書家の両親の書架は未知の世界だった。そこに並んだ漢字だらけの題名が記された背表紙は、「わたしたちは難しい大人のための本である」と威丈高に見えたものだ(後年、それは誤解だとわかるのだけれど)。
 そんな中、この『淋しいおさかな』だけは、なんとなく優しく見えた。"おさかな"とは海を泳ぐあの"お魚"だとすぐわかったのと、装画のかわいらしさが子供心に魅力的だったのだ。
 だけども、やっぱり中身は漢字が多くて読めないし、なにより"おさかな"の前についている"淋しい"が読めないのが残念だった。一体、"淋しい"はどう読むのかと、子供心に想像したものだ。たのしい? うれしい? おいしい? あたらしい? それ以外の言葉を4歳の子供は思いつかない。あげく、母親に尋ねて「さびしい」だと知る。でも、4歳の子供の心には"淋しい"というコトバは理解できなかった。今思えば、その頃の私は幸せだったのだなと思う。
 結局、きちんと覚えられたのは小学校に上がってからだったように記憶している。そのせいか、今でも「さびしい」と書くときは"寂しい"ではなく"淋しい"と書くのが好きだ。漢字が平気になってから読んだ内容は、せつなくて空しくて、でも優しくて、大好きになった。

 実家にあった初版本の『淋しいおさかな』は、幼児だった私によってラクガキだらけになっていた。表紙の"顔"にはメガネが書き加えられ、背景の"星"も無数に結ばれている。恐らくは読めないけれど気になる本だったので、なにかしら関わりたかったのだろう。
 中学生になると、自分でしでかしたラクガキが恥ずかしくなってカバーを捨ててしまった。カバーを外すと真っ黒いハードカバーの表紙が出現し、緑色の細い線で描かれた小さな装画が上品で素敵だなと思った。

 さて、そんなカバーの無い裸の本がさらに恥ずかしくなった大学生の頃、私は同じ本をハードカバーで買い直した記憶がある。今度こそは大事にしようと思っていたのに、たった今、自分の本棚を見ても『淋しいおさかな』はいない。
 実家に置いてあるのか、はたまた今の部屋の押し入れの段ボール箱に入っているのか。カバーを外した裸の本も、買い直した本も、どこにあるのだろうか。

 古い本なので絶版になっているのかと不安になったが、どうやら文庫で復刊されているらしい。よかった。明日は書店に行かねばと思った。

淋しいおさかな (PHP文庫)
別役 実
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最近のわたくし。

またしてもダイジェスト版でお届けします。長いから、覚悟してね。

11/29
11月も終わろうとしており、年賀状に悩む。
毎年、干支をモチーフにしているものの、ネズミって難しいわ。

11/30
iKnow!に夢中である。
早速、反復学習の効果が出始めている。

12/1
以前に新聞の書評で気になっていた『ダイング・アニマル』を読了。

 主人公である老いた評論家は、現役教授時代から自分のゼミの教え子たちと情事を重ねていた。彼はTVに出演する有名人で、自宅ではピアノを演奏するインテリである。おのずと若い女たちが群がってくる生活を享受している主人公は、あるときキューバ移民の美しい女学生・コンスエラと関係を持つ。彼女と彼女の美しい乳房に激しい執着をおぼえ、嫉妬に苦しむ主人公。二人の関係は終わってしまうが、それでも彼は彼女を忘れられない。
 彼女と別れてから8年後、二人は再会する。主人公は70歳、コンスエラは34歳。そのとき、主人公が愛した彼女と彼女の乳房には異変が起きていた。

老いと性、自由と孤独、夫婦と愛情、心と体、いろいろと考えさせられる面白い一冊だった。

ダイング・アニマル
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フィリップ ロス Philip Roth 上岡 伸雄
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12/2
 夕方から恵比寿で大学時代のゼミの飲み会に参加する。集まったのは東京在住の12人。
 卒業以来、10年ぶりに再会する面子も多く、それでもまるで現役時代と同じように話が弾むのが嬉しい。二次会へ向かう夜の路上、腕を絡めて歩きながら他愛ない話をしていると、あの頃に戻ったようだ。
 同じゼミで同じことを学んでいたのに、みんなそれぞれに微妙に違った生業を持っているのが面白い。グラフィックデザイナー、イラストレーター、ファッションデザイナー、装丁家。懐かしいのに刺激を受ける、面白い夜だった。私もがんばるわ。

12/3
事務所に、ミカンを大量に持参する。

12/4
待ち人来らず。みなさん、健康には注意しましょう。

12/5
英語学校の欠席が続いていたもので、補習を受けに行く。
雑談の中にもiKnow!の効果を実感する。

12/6
放置して久しい自分のサイトを更新してみた。
今までに描いた絵で見苦しくないものをまとめてみました。
http://visualclip.com/gallery/index.html

12/7
仕事で手がけているとある手法が、自分の制作にも活かせそうで面白い。
年賀状で実験してみようかな。

夜はデザイナーK嬢とデート。会うのは半年ぶりなれど、相変わらずの楽しい会話で充実した時間を過ごす。なんだかんだと三軒もハシゴしてしまう。
某所のプリンがおいしいことを発見する。今までうどんしか食べてなかったわよ。

12/8
予約していた本が図書館に届いたらしい。
Harry Potterと平行しつつ、読書を楽しむ冬にしたい。
そして、今日は真珠湾攻撃の日であり、ジョン・レノンの命日である。

おひさしぶりのダイジェスト。

まー、メモみたいなモノさ。

11/3
昼から従妹Aと一緒に虎ノ門で某出版社主催のセミナーを受講。
興味深い内容で、従妹Aも喜んでいた。
関係者の皆さんにも挨拶できてなにより。
後から、従妹Aは何冊も某出版社の本を読んでいたことが判明。
夜は従妹Aの実家である南青山のマンションへ。
伯父と伯母と従妹Aと4人で鍋を囲む。

11/4
ひさしぶりの明大前活動。本日はこの面子で初めてのフレンテ。
テニグー先生が店内の音楽に敏感に反応していてよかった。
黒ちゃんは時刻表を作って盛り上がっていた。恐るべし、鉄魂。
キムキムの家にハーフィスが来ているとのことで、「会いたい!」と伝言を頼んでみる。

11/5
すてきなラウンジで不思議な会合。盛り上がって面白かった。
そののち、事務所へ。
仕事帰りには、再度渋谷のライブハウスに立ち寄る。初めてのDESEO。
いろいろなバンドのボーカルによる弾き語り特集。
お目当ては言わずもがなの木内くん。やはり『タイムマシン』は名曲である。
帰り道に書店で『デザインの引き出し』最新号を発見するが、荷物が重かったので見送る。早く買って読みたーい。
夜、最近連絡が取れなかった某氏にようやく電話がつながって安心する。

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11/6
昼間、移動中に『ナイチンゲールの沈黙(海堂尊・著)』を読了。
すごい展開とオチに目眩がする。感想文を書くまでもない。
『チーム・バチスタの栄光』は偶然だったのか。
しかし、3作目以降は面白いらしいので、懲りずに図書館で予約を入れる。
夜は英語学校。先生はSteve。
2年ぐらい使っていた教科書をようやく終わらせることができた。
終わらせた教科書のレベル表記は「Upper Intermediate」なんだけど、
来週配布される新しい教科書の表記はどうなっているのだろう。

ナイチンゲールの沈黙
海堂 尊
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11/7
赤坂と渋谷で打ち合わせ。
赤坂には人を殴り殺せそうなカタログが届く。
無意味にパーティションが欲しくなる。しかも事務所じゃなくて自宅用に。
お昼ご飯にサブウェイのサンドイッチを食べた。赤坂見附のサブウェイは接客が丁寧だなあ。
渋谷で見た某色校は、K100%の筈なのにリッチブラックに見えた。
私ともあろう者が、ルーペを持っていくのを忘れたのが痛い。凡ミス。
某氏の奥様がご出産とのことで、巨大液晶モニタで美麗な赤子の写真を拝見する。
いやー、ホニャホニャしててかわいいね。新生児の「にへら〜」という笑顔が好きだ。
夜、Kと待ち合わせてひさしぶりに刀削麺を食べる。


11/8
最近、早起きして午前中に集中して仕事をするパターンが多い。
いい加減に髪がボサついてきたので、美容院へ。
帰宅後、マー君に借りた『スパイダーマン3』のDVDを鑑賞。
原作では評判のいい悪役ベノムが、映画ではあっさりと退場するのが残念。
え、この映画って三部作で終わりじゃないの? 6まで作るって本気?

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『チーム・バチスタの栄光』海堂 尊

 昼から事務所で打ち合わせ。コートツリーを組み立てたりして、少しずつ事務所も整備されてきた。

 図書館で借りていた『チーム・バチスタの栄光(海堂尊 著/宝島社 刊)』を読了。メディカル・ミステリーという、普段は読まないジャンルの小説である。
 以前にも書いたけれど、最近書籍の装丁に注目しており、気になった装丁の本の署名などを片っ端からメモしている。そのリストの中に偶然にも海堂尊の本が二冊あったので、これも奇遇と読んでみることにした。

 専門的な医療用語が羅列されて読みにくいかと思いきや、物語の楽しみは全く邪魔されず、さすがだと思った。
 小説作品の中で、専門用語をどこまで説明するかの見極めは難しいものだ。あまり解説しすぎると説明くさくて興ざめだけど、聞いたことも無い単語ばかりが並んでいると読む気が失せる。読者が説明だと気付かない程度に説明するのがいいんだろうなぁ、多分。

 amazonのレビューによれば、この作品は外科医学関係者に不評のようだ。なんでも、現代の外科医学的には不自然な箇所があるらしい。これまた難しいポイントで、考証や監修に忠実にすることで物語の面白さが削がれてしまう場合もある。
 個人的に趣味の漫画を描いていた頃は「その筋の専門家にツッコミを入れさせない」をモットーに、自分が知らないことは書かないか、徹底的に図書館などで資料を収集するかのいずれかだった。
 例えば、私は建築については無知であるので、背景の建物などを描いていると知らず知らずに嘘の建物を描いてしまう可能性がある(梁の位置がおかしい、窓の位置がおかしい、など)。それが怖くて「ビクトリア様式の建物とインテリアしか出さない」と決め事を作って写真資料に忠実に描いてみたり、別の作品では「風景や町並みは奈良の田舎」と統一してみたり、自分の想像よりも、資料の信憑性を重視していたのだ。
 だけど、資料は所詮資料でしかないんだよね。ノンフィクションは別として、創作作品であるのなら、物語や作品として面白ければ多少の逸脱も有りでしょう。本当に専門的な箇所で、専門家が白けるようなウソが無ければ、多少の創作は許容されてしかるべきでないかしら。だって、エンターテイメントなのだし、学術論文じゃないのだし、読んで楽しむものなのだし。

 医療や医学について無知な私にとっては面白い小説作品でした。軽い雰囲気の会話や文体だったり、比較的ありがちな登場人物がいたとしても、先日のライトノベルよりも読後感が爽快だった。やはり私はライトノベルに慣れていないということか。
 関係ないけれど、普通のハードカバーなのに4日ぐらいで読めてしまった。橋本源氏と比べるととても短時間に感じる。善し悪しの問題でなく、橋本源氏はそれだけじっくり読むタイプの小説なんだろうなと思った。

 読んで面白かったもので、帰り道に図書館に立寄り、続編にあたる『ナイチンゲールの沈黙』も借りてきてしまった。読書の秋らしくて、いい感じである。

チーム・バチスタの栄光
海堂 尊
宝島社 (2006/01)
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『ねむれ巴里』金子光晴

ねむれ巴里

金子光晴の自伝、その2。
シンガポールからマレーシアを経由してマルセイユへ。
ついにパリで夫人と合流。
パリでの借金と嘘にまみれた生活、そしてブリュッセルへ。

いろいろと移動はしているが、やはりメインはパリでの生活だ。
夫人と再会しつつもうつろな夫婦関係を続けつつ、
とにかくもお金が無い辛さと、
パリの華やかな外見の底に沈殿している欲と嘘が綴られる。

しかし、それでも筆者はパリが好きなのだ。
餓死寸前であろうと、ゆすりたかりを続けることになろうと、
人種を問わず男達の視線を集める三千代夫人の存在が気がかりだろうと、
在パリの日本人たちの不憫な状況を目の当たりにしようと、
それでもしぶとくパリにいて、パリにこだわる。

後半、ブリュッセルに移動してもそれは続き、
パリとの比較、ブリュッセルからパリへの小旅行が述懐されている。

夫婦で日本に帰国する金が用意できず、
三千代夫人を残して一人でアントワープから旅立つところで本編は終っている。

私は金子光晴の生涯をまったく知らないので、
どうなることかとはらはらさせられたまま、最後のページを閉じた。
続きは自伝その3の『西ひがし』にて。

最近の読書。金子光晴および椎名誠のSF。

今読んでいるものは金子光晴の「ねむれ巴里」。
タイトルがパリなのに、まだまだ舞台はクアラルンプール。
なぜか諸葛亮の南蛮侵攻が比喩として出てくるのが面白い。
やはり、三国志は基礎知識として知っておく必要がありそうだ
(いつも途中で挫折しているので、半端な知識しかないけれど)。
さほど厚い本ではなく、するすると読めるのだが、
改行がほとんど無いので、実は文字量はかなりある。
それだけ楽しみが持続するということなので、喜んで寝床で読んでいる毎日。
読み終えたら、あらためて感想を書こう。

さて新聞の広告欄で椎名誠が新刊を出したことを知る。
タイトルは『砲艦銀鼠号』。登場人物は灰汁(あく)、可児(かに)……ということは、
これはもしかしなくとも名作『武装島田倉庫』の続編(?)ではないか!

椎名誠のSF三部作『アド・バード』、『水域』、「武装島田倉庫』、
どれも高校時代に大好きだった小説たちだ。
SFなのにピカピカした雰囲気は無く、むしろ錆や木っ端や廃墟に囲まれ、
登場する固有名詞もカタカナではなくあくまで日本語で、
日本のなれの果てのような、日本の異父弟のような世界が舞台である。
思い出したら楽しくなってしまったので、簡単な説明を。


アド・バード

ふたつの広告会社によって行われた広告戦争の結果、人間が住めなくなった世界。
改造されて人間の脳髄を埋められ、永遠に広告を発する生物が徘徊する中、
主人公マサルと弟の菊丸は父を探しに出かける。これが『アド・バード』。

初読のとき、よもや自分が広告業界(の端くれ)で暮らすことになるとは夢にも思わず、
今読み返すと、また違った見え方をするのが面白い。
とはいえ、主人公が少年なので普通に冒険小説としても楽しめる。
※ちなみにハードカバーの方が表題ロゴがかっこいいのでおすすめ。
 たむらしげる氏の装画もステキ。


水域

『水域』。すべてが水に沈んだ世界、人々は船に乗って“水域”で生活している。
産業などは何もなく、物々交換か釣りか、過去の遺物を拾う日々。
怪異な生物、ツバハキウツボ、スソガラミ、サキヌマドクタラシ。
主人公ハルが出会う事件。悪人、善人。廃墟となったホテルは建物の先端だけを水の上に覗かせる。

個人的にはその前編といえる短編『雨がやんだら』が怖くて大好きなのだが、
『水域』の方がエンターテイメント性が上がっている。
※ちなみに『雨がやんだら』は雨が降り続く世界の女の子の日記の体裁をとっている。
ただの長雨だと思われていたのに徐々に危機感が増大していく。
それを女の子のそっけない文体が淡々と描写し続けるのがさらに怖い。


武装島田倉庫

そして『武装島田倉庫』。近未来、主人公・可児(かに)が島田倉庫に就職したところから始まる連作中篇集。
白拍子と呼ばれる略奪武装組織から自衛するために島田倉庫は武装し、巨大装甲車は山道を駆け巡る。
北政府は“知り玉”を飛ばして人々を監視する。生物は異常進化し、人々に襲いかかる。

なにが素晴らしいって、独特の名詞群だ。地名だけでもすばらしい。
泥濘湾(でいねいわん)、総崩川(みなくずれがわ)、肋堰(あばらダム)。
あぁ、わくわくする。


一番好きなのが『武装島田倉庫』だったので、この新作の報はとても嬉しい。
金子光晴の次に読むのはこれに決定。もちろん、『武装島田倉庫』から再読する。

『ジョン・レノン対火星人』高橋源一郎

ジョン・レノン対火星人

初めて書名を知ったとき、私は小学生だった。
同じ著者による『さようなら、ギャングたち』の最後のページには
著者の略年譜が掲載されていた。
その一番最後、すなわち最新の欄に「ジョン・レノン対火星人を執筆中」とあった。

ビートルズを愛する母のおかげで、ジョン・レノンのことは知っていたので、
なんでまた、ジョン・レノンが火星人と対決するのだろうと不思議に思ったものだ。
そして、この書名はきっと冗談に違いないと思った。

中学生になって、『ジョン・レノン対火星人』が文庫になっているのを本屋で見つけた。
セーラー服を着た私は、早速それを小遣いで買った。
小説の中では、中3の理科1分野で学ぶ「右ねじの法則」が引用されており、
学校でまさにその単元を学んでいた私は、あまりのタイムリーさに驚いたものだ。

閑話休題。
それ以来何度か再読しているこの小説の一冊なのだが、
なぜかここ10年ぐらいは読んでいなかった。
一昨日、たまたま天袋の箱の中から発掘したので、
10年ぶりに再読することにした。
私の記憶が確かならば、金子光晴の名もこの本で知った筈だったから。

小学生からは多少知識の増えた目で読むと、いろいろな発見があるものだ。
当時は日常でありながらも奇妙な描写に夢中だったが、
今になってようやくストーリーがつかめたような気がする。

深淵によって目にするビジョンのすべてが死体で埋め尽くされている「すばらしい日本の戦争」、
その彼を救うべく「わたし」と「T・O(テータム・オニール)」は尽力する。
「わたし」の恋人のパパゲーノ、T・Oの同僚の「石野真子ちゃん」も手伝う。
主にT・Oの愛ある“レッスン”によって、
「すばらしい日本の戦争」は深淵か徐々に逃れられるようになり、
“死体を見なくてもすむ時間”は増えていく。
しかし、物語は悲しい結末を迎える。

正直にいうと、前著の『さようなら、ギャングたち』よりは荒い印象(結末は特にそう)で、
完成度としてもそちらの方がいいだろう。
ただ、冒頭から後半にかけての流れるような展開と、
随所に挟まれる“チャーミング”な挿話は、とても高橋源一郎らしく魅力的だと思う。
その“チャーミング”具合の感じ方は、
15歳だろうが32歳だろうが、私の中では変わっていなかった。素直に嬉しい。

ちなみに金子光晴は“いちごちゃん”に同情される姿で冒頭に現れる。
また、金子光晴本人ではないが、
“金子光晴がこれから書こうとしているハードボイルドなイエス・キリスト”は
横浜の山下公園で主人公と遭遇している。

今回気付いたのだが、高橋源一郎は一人称を「わたし」と平仮名で開いて表記していた。
一人称は単純なようでいて、作中にかなりの頻度で登場する言葉なので、
どのように表記するかは、実はかなり重要なものかもしれない。

『さようなら、ギャングたち』や『ペンギン村に陽は落ちて』を再読したくなった。
また、天袋から発掘されることが期待される。

『朝びらき丸 東の海へ』C.S.ルイス

朝びらき丸 東の海へ

ナルニアの3冊目、ささっと2日ぐらいで読了。
うーん、残念ながら『指輪物語』の方が物語が複雑で面白く、
『ハリー・ポッター』の方がエンターテイメントとして楽しい。
そして、教訓的ないい話しとしては『はてしない物語』に軍配があがる。

シリーズは7冊あるので、一応全部読むつもりではいるが、
買ってまで読むほどではないといった感じ。ありがとう、図書館。

ただ、子供の頃に読んでいたらどうだったかはわからないので、
三十路で初読するには適さないだけなのかもしれない。残念。
心の汚れた大人になってしまったことよ。

『どくろ杯』金子光晴

どくろ杯

ようやく読了。詩人・金子光晴の自伝その1。
結婚して上海に行くまで。

詳細な記述は自伝とは思えないほどで、筆者の記憶力とその補完力に感動する。
三輪さんもこれの半分ぐらい詳細に書いてくれたらいいのに。
金子翁は詩人で文章のプロなので上手なのは当然だけどね。

自伝なので、伏線や盛り上がりは特になく、
淡々と小さな事件や大きな事件が起きてはまた去って行く。

そんな中、さりげなく描写される筆者と三千代夫人の就寝風景が好きなのは私だけだろうか。
腿を重ねたり、肩にもたれたり。そういうニュアンスが好きだ。
私が女だからかもしれない。甘過ぎない、夫婦の関係。
妻には恋人がいて、筆者もそれを知っているというのに。

そうそう、カタカナで表記される当時の外来語も興味深い。
頻出する“アナルシスト”が“アナーキスト”だとわかったのは、
本の後半になってからである。

残り2冊、すぐに読むのがもったいないほどだ。

『夜のピクニック』恩田陸

夜のピクニック

個人的に「恩田陸は面白いのかどうか確認キャンペーン」中なので、既読2冊がイマイチだったにも関わらず果敢に挑戦する私。

主人公は高校生の男女、貴子と、融(とおる)。舞台は毎年行われる学校行事の夜間ハイキング《歩行祭》、およそ一昼夜の間のできごと。

男女が主人公だからといって、この二人のラブストーリーでは無い。むしろ、ある理由から“かれら”はお互いに一言も言葉を交わした事がないぐらいだ。三年生の二人にとって最後の歩行祭で、それは受験・卒業を目前にした高校生活最後のイベント。

一昼夜歩き続けるという非日常の中で、友達との関係、貴子と融の関係がどう変わるのか、変わらないのか。文字通り切っても切れない筈の縁は切れてしまうのか。貴子が密かに行った賭けの勝敗も気になりつつ、ぐいぐいとひっぱられるように読んだ。

読後、「がっこう」という場所にいられる時間は、終ってみると本当に短かったんだな、と再認識した。幼稚園・小学校から永遠に続くかと思われた学校生活は、実は人生の中ではほんの少しの時間しか過ごせないのだ。読みながら、ずっと自分の高校時代を思い出していたような気がする。《片親》という意味でも感情移入していた。

ラストはいい意味で予想通りだった。これなら納得、満足。

今のところ、私にとっての恩田陸は1勝1敗1分け。もう1〜2冊読めば、個人的な評価が決まることだろう。次はやはり話題作だった「六番目の小夜子」かな。

Q&A読了。

Q&A

去年に一度読んでいるのだが、なんとなくまた読みたくなって図書館で借りていたのだ。

日曜の午後、郊外の大型スーパーで大事故が発生。死傷者も出る大惨事になるが、原因となるものがわからない。小説は生存者や関係者へのインタビューだけで構成され、読者はだんだんと事故のあらましがわかってくる……という仕掛けなんだけど。

うーんうーん、そうなのさ。アイデアはすごくいいと思うのに、どうしてそんなオチなのさ。
最初はとても面白いくせに、後半1/3が途端に陳腐でつまらなくなるのは同じ作者の『ユージニア』同様。やっぱり恩田陸作品とは相性悪いのかなあと思いつつも、懲りずに『夜のピクニック』を読み始める。

『夜のピクニック』は高校生が主人公。学校行事の夜間ハイキングが舞台となっている。参加者は全校生徒で、24時間で80キロを歩破するらしい。以前に、KとEYEちゃんから同じような行事のことを聞いていただけに、少し親近感を感じながら読んでいる。今のところは、とても面白い。この感想を読了後にも持っていたいのだけど……。来週には読み終わるだろうから、自分的に乞うご期待。

仕事の合間の読書とか。

あっさりと「ユージニア」読了。やはり想像通りで最後はよくわからない感じ、消化不良な感じ、なんだったんだーな感じ。途中は面白いんだけどねえ。あ、冒頭で表現されていた「夏のけだるさ」のくだりはすごく良かったです。

というわけで、オチがイマイチなのはわかってるけど「Q&A」を再読開始。なんとなく再読したかったので図書館で借りておいたのでした。今年はかなり図書館を活用できていい感じ。

ちなみに吉川三国志も2巻に突入。吉川版の呂布はなんだかエラそうなだけでイヤだなあ。今週は打ち合わせで外出することが多かったせいか、読書が進む進む。もっと読むぜ。

そんなこんなで仕事してたら恵方巻きを食べ忘れました。関西人として悔しいかぎりです。

『マノン・レスコー』アベ・プレヴォ

マノン・レスコー

読了まで少し時間がかかってしまったが、基本的にサクサク読めた。
主人公のシュバリエ君のひたむきなダメさが面白かったが、
これは時代によってはかなり真面目な恋愛小説だと受け止められたのではなかろうか。

私の感覚からすると、マノンは頭が悪く金品に弱い女にしか見えなかったが、
ラストから受ける印象では聖女もかくやといえるほどの愛を持った女性という設定なのだろう。
『昼顔』のセブリーヌの方がよっぽど共感できたんだけどなあ。

いずれの時代でも、女は金品と豪奢な生活に弱いというのがよくわかるお話し。
一度味わった贅沢な生活は忘れられないという気の毒さを感じた。
シュバリエ君は頭悪くなさそうなので、もう少しうまく立ち回れたのではないだろうか。

『昼顔』ジョゼフ・ケッセル

カトリーヌ・ドヌーヴの代表的主演映画の原作という程度の認識しかない状態で読んだ。
最近はなぜか日本人作家の作品よりも翻訳物の方が読みやすく、多少古い文体のこの本も楽しく読めた。
翻訳だと過剰な文章装飾が行われにくいせいだろうか。

舞台は1920年代後半のパリ。
第一次大戦後とアール・ヌーヴォーが去り、バウハウスができてアール・デコがやってきた時代。
同時にダダイズムとシュルレアリスムが生まれた頃。もうすぐロシア構成主義も流行するのだ。
ガブリエル・シャネルも服を作り始めているが、まだシャネルスーツは完成していない。
資産家の夫人達はコルセットをとっくに脱ぎ捨て、パリ・オートクチュールが黄金期を迎える。
世界恐慌と第二次大戦を目前に控え、富裕層の文化は華やかに競うように咲き誇る。

主人公はそんな時代の裕福な医者の妻、セブリーヌ。
傍目には満ち足りていた彼女は、自分が持っていなかったものに気づく。
彼女は「昼顔」となることでそれを得られるのだが、代償も大きいものだった。
それは、本編の最後の一文を読んだときにぞっとしたほど大きい。
その後が書かれていないだけに想像をかきたてられる。
「家庭を壊した女」に心当たりがあるだけに、肩がこわばるほどだ。

しかし、彼女の心の動きを追うのはとても面白かった。
すべてを円満におさめるには、彼女では足りない部分が多かったのだ。
それは、判断力だったり、機転だったり、他者の感情に対する想像力だったり。

ドヌーヴ主演の映画は未見だったが、監督がルイス・ブニュエルと知り、俄然見たくなった。
どうやらシュールな映画らしい。なにせ、シュルレアリストでダリの親友だったブニュエルだけに。
映画『昼顔』の撮影は『アンダルシアの犬』から約40年後なので、
かなり後者とはおもむきが異なるものだろうと思われる。
ドヌーヴが大物女優なおかげでレンタル屋にあるだろうから、いずれ借りて見てみよう。

ちなみに新潮文庫版は絶版。私は古本屋で購入した。
現在は電子書籍化されており、下記のページから購入可能。
http://books.bitway.ne.jp/shop/mt-list_thum/trid-auth/ccid-auth_ka/sort-new/auid-2540/start-1.html

『武蔵野夫人』大岡昇平

「武蔵野に住んでて“武蔵野夫人”を読んだことが無いなんて」と、
とある宴席で指摘されたのでやっきになって読んだ。

武蔵野といえど武蔵野市のことではなく、国分寺や武蔵小金井のあたりが舞台。
小金井の皮膚科や西国分寺の印刷会社にはちょくちょく行くので
知っている地名が出てきて面白かった。

役割論については共感できた。
誰しも意識・無意識にかかわらず役割を演じているのだろう。
夫、妻、子供。兄、妹、姉、弟。
そういえば「家族ゲーム」なんてのもあったね。

「誓い」はくだらない。
背徳の関係で、すでに裏切ったものがあるというのに、
今更なにを誓おうというのか。

最後、ヒロインの決着のつけかたに納得いかず。
時代の気風というものもあるのだろうが、
なんというかもっとエゴに走ってもいいのではなくて?
それが不倫というものではなくて?
子供がいなければなおさらでしょうに。
それほどの代償を払う覚悟で惹かれたのでしょう?
実母が不倫の末に家を出て行ったのを見送った私は思うのだった。
周囲を巻き込んでおいて幸せに得られないなんてナンセンス。

『郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす』ジェイムズ・M・ケイン

郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす

ちょいとフランス文学から離れてアメリカ文学。
訳が何種類かあり、
「絶対に早川の小鷹信光訳で読め」
とのお言葉をいただいたので素直に従う。
映画は見たことありません。


フランク、かわいそうなあなた。

それで幸せになれると本気で思っていたの?

どうしてそうしようと思ったの?
それが一番いいやり方だったの?

賢くないね。

コーラ、かわいそうなあなた。

焦ってたの? 嫌だったの? それとも飽きてたの?
愛なの? それとも非日常なの?

あなたの中に女の冷酷さを見ました。

「やっちまった」

すごい言葉。すごくわかる言葉。炎とはまさにこのこと。
ただし、光が強烈であればあるほど鎮火は早い。
飛んで火にいるなんとやら、その魅力にあがなうことができようか。
彼女にとって背徳の魅力だったのか、彼の本心の愛だったのか。

最後はやっぱりそうなっちゃうのね。
悲しいね。哀しいね。

おわりのページを読み終えたとき、
私も祈らずにはいられませんでした。

『異邦人』アルベール・カミュ

異邦人

「昨日、ママンが死んだ」と「それは太陽のせいだ」のおかげで
『悲しみよ、こんにちは』や『太陽がいっぱい』と混同していた。
全然違いました。舞台はフランスではなくアルジェリア、主人公は若い男性。

すべてを淡々と眺めて客観的に綴られる一人称は淋しく、
そんな彼を愛してしまったマリイの言動にはとても共感できる。

彼が駄目なわけではなく、基準が違っただけなのかな。
自分が正しいと思わない人間はいない。私だってそう。
感情のありかたや、その表現の仕方は人それぞれだろう。
演技するかしないかも自由。

※ムビ作りの時間はすべて読書に費やされ中。

『恐るべき子供たち』ジャン・コクトー

恐るべき子供たち

こちらは『肉体の悪魔』に比べて最初から読みやすかった。
同じく父の書斎にあったような。
『さようなら、ギャングたち(著・高橋源一郎)』の
「アガートは大好きさ、フレガートが」は
ここから引用されていたことがわかって嬉しい。

環境もお金も友人も何もかもが彼らの救済にはならなかった。
色彩的な描写が美しく、それぞれに象徴的な色が付与されている。
白、赤、黒。空気を感じる。
これも結末に驚いた作品。とても哀しい。

『肉体の悪魔』レイモン・ラディゲ

その昔、実家の父の書斎で背表紙を見たような気もする。
薄い本なので寝る前に少しずつ読んでも3日ぐらいで読了できた。
本の内容が多少夢見に影響したが、さほどの悪影響でもない。

どこかのレビューにもあったが、最初は少し退屈。でも、途中から面白くなる。
主人公が何をしたいのか、どうなりたいのか。マルトは性悪なのか、溺れているのか。

個人的に年下の異性には興味が無いので直接共感しにくいところもあるのだが、
それでも恋いこがれる気持ちはよくわかる。