メイン

books and magazines アーカイブ

2005年7月17日

力技文学読書記憶

 日曜なので今日もムビはお休み。

 この覚え書きは自分用なので、かなり読みにくいことをあらかじめ告白。

 好きな作家。作家指名でよく読んでいるのは村上春樹、椎名誠、高橋源一郎様。ハルキと椎名誠は、いずれもおすすめされて読み始めた。源一郎様はなんだったけな。そうだ、小学生の頃にラジオドラマを聞いて好きになったんだった。

 小さい頃からインドア派で、絵を描くか本を読んでばかりだった。かなり早い段階でそれらが融合し、漫画にのめりこんでしまった私。

[小学生以前]

 絵本大好き。図書館大好き、なぜなら図書館の隣に住んでいたから。寝る前には必ず本を読んでもらっており、そこから自然と文字を覚えたらしい。就寝前の読書習慣はこのころ形成された。

[小学生]

 あいかわらず図書館好き。学校サボって図書館に行ったのが母にバレて怒られる。2年生になって学校の図書室を使えるようになって喜ぶ。ルパンシリーズや伝記をよく読んでいた。ホームズも好き。ぽっぺん先生シリーズも大好き。しかし赤毛のアンや若草物語には興味ひかれず。漫画、描くのも読むのも大好き。コバルト文庫に手をだす。氷室冴子、新井素子。谷山浩子のファンタジックな歌も好きだった。映画の影響で「はてしない物語」を読んで感動する。  NHKのFMラジオドラマで源一郎様の「さようなら、ギャングたち」を聞く。不思議な世界観にハマり、まもなく母が原作小説を買ってくる。それ以降、何度も読んでいる。

[中学生]

 大流行の赤川次郎にハマる。猫好きゆえ、三毛猫ホームズが大好きだった。ファンタジーにもハマる。グイン・サーガ。早川文庫の背表紙がベージュのシリーズ。魔法の王国ザンスシリーズ、ランドオーヴァーシリーズ。安房直子の幻想的な小説にハマる。母(?)が好きだったマンボウ・マブゼシリーズを読む。部活忙しく、図書館行けず。

[高校生]

 谷崎潤一郎。椎名誠はこの頃おすすめされて読み始めた。「アド・バード」「武装島田倉庫」今でも大好きでたまに読み返す。怪しい探検隊シリーズもふくめてかなり読んだ。源一郎様の本を集めはじめる。「ジョン・レノン対火星人」。図書館でも探す。手に入るもの及び図書館にあるものは全部読んだ。グイン・サーガ、途中で疲れて読むのをやめる。指輪物語に手を出そうとするが、冒頭で挫折。筋肉少女帯を聴くようになり、その流れで江戸川乱歩。人間椅子、押し絵と旅する男。少しだけ稲垣足穂。ドグラ・マグラは読みかけて挫折。ラヴクラフトも同様に。美術予備校の帰りに本屋に入り浸る。スティーブン・キングも読み始める。かなりたくさん読んだ。市立図書館にもよく通い、新着図書コーナーから手当たりしだい読みあさった。記憶にあるのは、地下鉄に住んでいる少年の話と、世界幻想文学全集のような全集モノ。マーブリングの装丁が美しかった。ちょうどジェイムス・ジョイスのユリシーズの訳本が刊行された頃で、ふざけて借りたりしたものだ(もちろん読んでいない)。星新一のショートショート、清水義範のバスティーシュ小説も好きだった。

[大学生]

 美大生になって有頂天。アートぶりたいお年頃。橋本治の窯変・源氏物語。川端康成の変態性に喜ぶ。村上春樹をおすすめされて読み始めた。世界の終わり、ねじまき鳥が大好きだった。当時刊行されていたものはほとんど読んだような。家畜人ヤプーと諸星大二郎はこのあたり。悪童日記。三島由紀夫は「春の雪」を読んで装飾過多に疲れてしまう。1回生の秋から一人暮らしを始めたので、読書量が減る。通学電車に乗らなくなったことと、芝居と恋愛に時間を費やしていたからだ。演劇部の部室で読書自慢をする後輩を横目に「読書は娯楽のためにするものであり、けして○○を読んだと自慢するためのものではない」と思っていた。

[社会人その1/会社員時代]

 通勤時間は睡眠時間となる。途中で止まっていた橋本源氏を読み返したり。文学を読んでいた記憶は少ない。雑誌や漫画ばかり読んでいたかもしれない。転職してからも同様。そうそう、この頃に英語の勉強もかねてハリーポッターの原書に手を出し始めた。Yonda?パンダのグッズ目当てでいろいろと新潮文庫を読んだ。日本の現代作家が多かったかな。しかし何を読んだのかほとんど覚えていない。

[社会人その2/フリー時代〜現在]

 ぱっと何を読んだのか思い出せない悲しさよ。少なくとも指輪物語全巻とぽっぺん先生シリーズは大人買いして読んだのだが……。

 書いていて、一番本を読んでいたのは高校時代だと気づかされた。そうだったのか。さてもさても何を読んだか覚えていないことよ。読書記録はなるべくつけていきたいものだ。自分のために。

2005年7月18日

『肉体の悪魔』レイモン・ラディゲ

その昔、実家の父の書斎で背表紙を見たような気もする。
薄い本なので寝る前に少しずつ読んでも3日ぐらいで読了できた。
本の内容が多少夢見に影響したが、さほどの悪影響でもない。

どこかのレビューにもあったが、最初は少し退屈。でも、途中から面白くなる。
主人公が何をしたいのか、どうなりたいのか。マルトは性悪なのか、溺れているのか。

個人的に年下の異性には興味が無いので直接共感しにくいところもあるのだが、
それでも恋いこがれる気持ちはよくわかる。

『恐るべき子供たち』ジャン・コクトー

恐るべき子供たち

こちらは『肉体の悪魔』に比べて最初から読みやすかった。
同じく父の書斎にあったような。
『さようなら、ギャングたち(著・高橋源一郎)』の
「アガートは大好きさ、フレガートが」は
ここから引用されていたことがわかって嬉しい。

環境もお金も友人も何もかもが彼らの救済にはならなかった。
色彩的な描写が美しく、それぞれに象徴的な色が付与されている。
白、赤、黒。空気を感じる。
これも結末に驚いた作品。とても哀しい。

2005年7月19日

『異邦人』アルベール・カミュ

異邦人

「昨日、ママンが死んだ」と「それは太陽のせいだ」のおかげで
『悲しみよ、こんにちは』や『太陽がいっぱい』と混同していた。
全然違いました。舞台はフランスではなくアルジェリア、主人公は若い男性。

すべてを淡々と眺めて客観的に綴られる一人称は淋しく、
そんな彼を愛してしまったマリイの言動にはとても共感できる。

彼が駄目なわけではなく、基準が違っただけなのかな。
自分が正しいと思わない人間はいない。私だってそう。
感情のありかたや、その表現の仕方は人それぞれだろう。
演技するかしないかも自由。

※ムビ作りの時間はすべて読書に費やされ中。

2005年7月20日

『郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす』ジェイムズ・M・ケイン

郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす

ちょいとフランス文学から離れてアメリカ文学。
訳が何種類かあり、
「絶対に早川の小鷹信光訳で読め」
とのお言葉をいただいたので素直に従う。
映画は見たことありません。


フランク、かわいそうなあなた。

それで幸せになれると本気で思っていたの?

どうしてそうしようと思ったの?
それが一番いいやり方だったの?

賢くないね。

コーラ、かわいそうなあなた。

焦ってたの? 嫌だったの? それとも飽きてたの?
愛なの? それとも非日常なの?

あなたの中に女の冷酷さを見ました。

「やっちまった」

すごい言葉。すごくわかる言葉。炎とはまさにこのこと。
ただし、光が強烈であればあるほど鎮火は早い。
飛んで火にいるなんとやら、その魅力にあがなうことができようか。
彼女にとって背徳の魅力だったのか、彼の本心の愛だったのか。

最後はやっぱりそうなっちゃうのね。
悲しいね。哀しいね。

おわりのページを読み終えたとき、
私も祈らずにはいられませんでした。

2005年7月25日

人間関係の把握が難しい

現実の人間関係のことではなく、小説のお話。
現在読んでいる小説で複数の人間が出てきて血縁関係もややこしいので少し人間関係の把握に手間取っている。

こういう時の対処策は昔からひとつ。たいしたことではなく、単純に登場人物の相関図メモを作ることだ。

人物の名前、年齢、他の人物との関係、その他なんでもどんどん書き込む。
風貌が描写されたら絵も描く。これで随時把握していける。このやり方を行ったのは過去に数回。

■超長編映画「マハーバーラタ」を見ていたとき。
上映時間5時間。さらに前衛的な映画だったので、どうみても親子に見えない親子が出てきたり、人種入り乱れてたり、系譜入り乱れてたり。ついでに名前がややこしいの続出で混乱した。ユディシュティラ、ドゥリオダナ、ドリタラシュトゥラ。ややこしい! クリシュナがかっこよかった。ハレ クリシュナー、ハレハレ クリシュナー。DVDが欲しいがPALかリージョン1しか存在せず。NTSCでリージョン2もしくはフリーリージョン希望。日本語字幕つけろとまでは言わないから。

■「ツインピークス」を見ていたとき。
説明無用変態D・リンチの変態ドラマ。「難解系ブーム」と言われていた当時、登場人物の多さとオカルトとサスペンス入り乱れで視聴者を大混乱に陥れる。面白さ最高で、翻弄されるの大好きなマゾ視聴者はハマりまくる。私も学生時代ハマりまくった。Kと二人で下宿に数日こもって全話見たものだ。ラストは微妙。

■綾辻行人の小説を読んだとき。
具体的には「館」シリーズの数冊。翻訳物のミステリーはたいてい人物紹介がカバー見返しにあるのだが、確か講談社文庫の「館」シリーズには無かったように思う。10人近く登場人物出てくると、さっぱり把握できません。


相関図メモのおかげで一通り把握できたので、読みすすめることにする。

※ちなみに読み切り漫画の登場人物の目安は4人ぐらいが適当だといわれている。キャラクターをイメージさせやすい命名も大事だそうな。勇ましい人物なら勇ましい名前、弱気な人物なら弱気そうな名前。参考までに。

2005年7月28日

『武蔵野夫人』大岡昇平

「武蔵野に住んでて“武蔵野夫人”を読んだことが無いなんて」と、
とある宴席で指摘されたのでやっきになって読んだ。

武蔵野といえど武蔵野市のことではなく、国分寺や武蔵小金井のあたりが舞台。
小金井の皮膚科や西国分寺の印刷会社にはちょくちょく行くので
知っている地名が出てきて面白かった。

役割論については共感できた。
誰しも意識・無意識にかかわらず役割を演じているのだろう。
夫、妻、子供。兄、妹、姉、弟。
そういえば「家族ゲーム」なんてのもあったね。

「誓い」はくだらない。
背徳の関係で、すでに裏切ったものがあるというのに、
今更なにを誓おうというのか。

最後、ヒロインの決着のつけかたに納得いかず。
時代の気風というものもあるのだろうが、
なんというかもっとエゴに走ってもいいのではなくて?
それが不倫というものではなくて?
子供がいなければなおさらでしょうに。
それほどの代償を払う覚悟で惹かれたのでしょう?
実母が不倫の末に家を出て行ったのを見送った私は思うのだった。
周囲を巻き込んでおいて幸せに得られないなんてナンセンス。

2005年9月 5日

『昼顔』ジョゼフ・ケッセル

カトリーヌ・ドヌーヴの代表的主演映画の原作という程度の認識しかない状態で読んだ。
最近はなぜか日本人作家の作品よりも翻訳物の方が読みやすく、多少古い文体のこの本も楽しく読めた。
翻訳だと過剰な文章装飾が行われにくいせいだろうか。

舞台は1920年代後半のパリ。
第一次大戦後とアール・ヌーヴォーが去り、バウハウスができてアール・デコがやってきた時代。
同時にダダイズムとシュルレアリスムが生まれた頃。もうすぐロシア構成主義も流行するのだ。
ガブリエル・シャネルも服を作り始めているが、まだシャネルスーツは完成していない。
資産家の夫人達はコルセットをとっくに脱ぎ捨て、パリ・オートクチュールが黄金期を迎える。
世界恐慌と第二次大戦を目前に控え、富裕層の文化は華やかに競うように咲き誇る。

主人公はそんな時代の裕福な医者の妻、セブリーヌ。
傍目には満ち足りていた彼女は、自分が持っていなかったものに気づく。
彼女は「昼顔」となることでそれを得られるのだが、代償も大きいものだった。
それは、本編の最後の一文を読んだときにぞっとしたほど大きい。
その後が書かれていないだけに想像をかきたてられる。
「家庭を壊した女」に心当たりがあるだけに、肩がこわばるほどだ。

しかし、彼女の心の動きを追うのはとても面白かった。
すべてを円満におさめるには、彼女では足りない部分が多かったのだ。
それは、判断力だったり、機転だったり、他者の感情に対する想像力だったり。

ドヌーヴ主演の映画は未見だったが、監督がルイス・ブニュエルと知り、俄然見たくなった。
どうやらシュールな映画らしい。なにせ、シュルレアリストでダリの親友だったブニュエルだけに。
映画『昼顔』の撮影は『アンダルシアの犬』から約40年後なので、
かなり後者とはおもむきが異なるものだろうと思われる。
ドヌーヴが大物女優なおかげでレンタル屋にあるだろうから、いずれ借りて見てみよう。

ちなみに新潮文庫版は絶版。私は古本屋で購入した。
現在は電子書籍化されており、下記のページから購入可能。
http://books.bitway.ne.jp/shop/mt-list_thum/trid-auth/ccid-auth_ka/sort-new/auid-2540/start-1.html

2005年10月 5日

なんじゃもんじゃ博士

探してみるもんですね。
なんとなく思い出して検索すると発見してしまい、運命を感じた。
私の人生で大事な本の一冊だから(実際は二冊)。

なんじゃもんじゃ博士 ハラハラ編

なんじゃもんじゃ博士 ドキドキ編

思い起こせば小学1年生の時。
例によって図書館で面白い本はないかと物色していた私の目に飛び込んできた本が、
ピンクの表紙の「マンガどうわ なんじゃもんじゃ博士」。
恐らくかなり昔に絶版になっており、
ちょっと前に復刊.comなどで復刊投票が行われていたものだ。

何がそれほど人生で大事なのか?

題名に「マンガどうわ」とあるように、これはある意味マンガだ。
しかし、いわゆる漫画を想像して読むと意表を突かれてしまうこと確実。

必ず1コマめは「博士とゾウアザラシがやってきました」から始まり、
見開き15コマに描かれた一人と一匹の旅は、
毎回変なオバケや動物によって事件に巻き込まれてしまうが、
最終的には無事に旅を再開する。
ただそれだけ。
ただそれだけなのに、すごく魅力的。
これが「母の友」誌に延々200回も連載されていたのだ。

小1の私は図書館でこの本を借りるや否や、どっぷりハマってしまう。
それは、模倣した漫画をノートに書き続けてしまうほどに。
博士とゾウアザラシに倣って、主人公は私の父がモデル。居候の猫は私。
タイトルは覚えているけれど、あまりにも恥ずかしいので秘密。
この漫画はクラスの女の子や掃除当番でやってくる上級生にも好評で、
毎回描く度にみんなに回覧されたものだ。
思い出せるかぎり、人生で初めて描いた漫画である。

それほどの影響力があった漫画が、復刻されている。
これを買わずにいられようか。いや、買う。絶対買う。

そんなこんなでamazonから本が届き、夢中で開封する私。
博士とゾウアザラシに再会するのは実に23年ぶりである。
それは、記憶よりもかなり不条理で、
いや、もう最高にほにゃほにゃとしていた。
イイヨー、イイヨー。

ムビ作ったり、ゲーム作ったり、
漫画描いたり、子供向けコンテンツ作る人はぜひ読んでいただきたい。
脱力系と不条理系が好きな人にもおすすめ。
そしてもちろん小学生ぐらいの子供たちにも!

2005年10月20日

『マノン・レスコー』アベ・プレヴォ

マノン・レスコー

読了まで少し時間がかかってしまったが、基本的にサクサク読めた。
主人公のシュバリエ君のひたむきなダメさが面白かったが、
これは時代によってはかなり真面目な恋愛小説だと受け止められたのではなかろうか。

私の感覚からすると、マノンは頭が悪く金品に弱い女にしか見えなかったが、
ラストから受ける印象では聖女もかくやといえるほどの愛を持った女性という設定なのだろう。
『昼顔』のセブリーヌの方がよっぽど共感できたんだけどなあ。

いずれの時代でも、女は金品と豪奢な生活に弱いというのがよくわかるお話し。
一度味わった贅沢な生活は忘れられないという気の毒さを感じた。
シュバリエ君は頭悪くなさそうなので、もう少しうまく立ち回れたのではないだろうか。

2006年2月 3日

仕事の合間の読書とか。

あっさりと「ユージニア」読了。やはり想像通りで最後はよくわからない感じ、消化不良な感じ、なんだったんだーな感じ。途中は面白いんだけどねえ。あ、冒頭で表現されていた「夏のけだるさ」のくだりはすごく良かったです。

というわけで、オチがイマイチなのはわかってるけど「Q&A」を再読開始。なんとなく再読したかったので図書館で借りておいたのでした。今年はかなり図書館を活用できていい感じ。

ちなみに吉川三国志も2巻に突入。吉川版の呂布はなんだかエラそうなだけでイヤだなあ。今週は打ち合わせで外出することが多かったせいか、読書が進む進む。もっと読むぜ。

そんなこんなで仕事してたら恵方巻きを食べ忘れました。関西人として悔しいかぎりです。

2006年2月 6日

Q&A読了。

Q&A

去年に一度読んでいるのだが、なんとなくまた読みたくなって図書館で借りていたのだ。

日曜の午後、郊外の大型スーパーで大事故が発生。死傷者も出る大惨事になるが、原因となるものがわからない。小説は生存者や関係者へのインタビューだけで構成され、読者はだんだんと事故のあらましがわかってくる……という仕掛けなんだけど。

うーんうーん、そうなのさ。アイデアはすごくいいと思うのに、どうしてそんなオチなのさ。
最初はとても面白いくせに、後半1/3が途端に陳腐でつまらなくなるのは同じ作者の『ユージニア』同様。やっぱり恩田陸作品とは相性悪いのかなあと思いつつも、懲りずに『夜のピクニック』を読み始める。

『夜のピクニック』は高校生が主人公。学校行事の夜間ハイキングが舞台となっている。参加者は全校生徒で、24時間で80キロを歩破するらしい。以前に、KとEYEちゃんから同じような行事のことを聞いていただけに、少し親近感を感じながら読んでいる。今のところは、とても面白い。この感想を読了後にも持っていたいのだけど……。来週には読み終わるだろうから、自分的に乞うご期待。

2006年2月12日

『夜のピクニック』恩田陸

夜のピクニック

個人的に「恩田陸は面白いのかどうか確認キャンペーン」中なので、既読2冊がイマイチだったにも関わらず果敢に挑戦する私。

主人公は高校生の男女、貴子と、融(とおる)。舞台は毎年行われる学校行事の夜間ハイキング《歩行祭》、およそ一昼夜の間のできごと。

男女が主人公だからといって、この二人のラブストーリーでは無い。むしろ、ある理由から“かれら”はお互いに一言も言葉を交わした事がないぐらいだ。三年生の二人にとって最後の歩行祭で、それは受験・卒業を目前にした高校生活最後のイベント。

一昼夜歩き続けるという非日常の中で、友達との関係、貴子と融の関係がどう変わるのか、変わらないのか。文字通り切っても切れない筈の縁は切れてしまうのか。貴子が密かに行った賭けの勝敗も気になりつつ、ぐいぐいとひっぱられるように読んだ。

読後、「がっこう」という場所にいられる時間は、終ってみると本当に短かったんだな、と再認識した。幼稚園・小学校から永遠に続くかと思われた学校生活は、実は人生の中ではほんの少しの時間しか過ごせないのだ。読みながら、ずっと自分の高校時代を思い出していたような気がする。《片親》という意味でも感情移入していた。

ラストはいい意味で予想通りだった。これなら納得、満足。

今のところ、私にとっての恩田陸は1勝1敗1分け。もう1〜2冊読めば、個人的な評価が決まることだろう。次はやはり話題作だった「六番目の小夜子」かな。

2006年4月20日

ひさびさ更新なんですが。

覚え書きで恐縮です。

忘れないように3月以降に読んだ本のメモ。

「博士の愛した数式(小川洋子)」
「夜市(恒川光太郎)」
「マリー・ベル事件-11歳の殺人犯(ジッタ・セレニイ)」
「カスピアン王子のつのぶえ(C.S.ルイス)」

全部図書館で借りた本なのが嬉しい私は関西人。
住民税、なんぼでも取り返すで。

今読んでいるのは「どくろ杯(金子光晴)」。もうすぐ読了。
これは図書館ではない。

読んだ本それぞれに読書感想文を書く余裕があるのか否か。

レンタルやら手持ちのDVDやらで見た映画。

「JFK(オリバー・ストーン)」
「ベニスに死す(ヴィスコンティ)」
「アリス(シュヴァンクマイエル)」
「ファウスト(シュヴァンクマイエル)」

すべて再視聴。以前に一度ないし複数回見たことがあるもの。
シュヴァンクマイエルの「ファウスト」はとてもとても好きな一作。
シュールでエロティックでかわいらしくて、最高。

「ベニスに死す」はVHSしか無かったのが残念。
なぜか私の記憶ではモノクロだったのだが、カラーだった。
なおさら、DVDで細やかな部分が見たかった。

借りたい映画はヴィスコンティの「山猫」。
「神々の黄昏」もまた見たい。どっちもかなり長尺だが。

チェコアニメ映画祭も映画館に見に行かねば。
昨今の「アニメ」ということばから想像するものとはあまりにも違う「アニメ」がそこにある。

来月は「ダ・ヴィンチ・コード」も。
前売り券を買ってしまうほど楽しみ、主にロンドンとパリの描写が。

「ル・ボーズ」という小説を幸運にもネットで2章まで読むことができたが、
それ以降はいつ読めるようになるのか不明。
ネット小説といえば、今読んでいるのは「ササイ」。某SNSでも応援している。

2006年4月22日

『紫の履歴書』美輪明宏

紫の履歴書

美しい美輪明宏様の自伝。
初版はかなり古く1968年、てっきりもっと最近だと思っていた。
改訂を重ね出版社を変えて4回目の出版が1992年。
24年経過しても改訂版が出るというのはすごいことだ。

内容は幼き丸山臣吾坊ちゃん(まだ少年ですらない)の記憶から、33歳までの自伝。
三島由紀夫の『黒蜥蜴』初演のあたりまでである。
最近、自伝というものにいろいろ興味があり、その一環で図書館で借りた。

やはり三輪さんは歌手で役者なので、あまり文章はお上手ではない。
子供の頃の“チーヨ”と呼ばれていた頃の描写は美しくて良かったのだが、
思春期を終えて青年になっていくあたりから、退屈してしまったのは事実だ。

なにが読みにくいのかといえば、やはり説明不足のせいだと思う。
そもそも“チーヨ”というのが幼い頃の愛称だということも書いていないし、
なぜ丸山臣吾が丸山明宏になって、美輪明宏になったかも書いていない。
そして、折々の彼の恋人たちも、すべてMだのJだのとアルファベット表記なので
それぞれの人物を想像できない。
男性同士の恋愛の話で、初版が1968年ということも影響していただろうが、
やはり、そこは仮名にする工夫などが欲しかったと思った。

そんなことを偉そうに書いている私だが、
実はこれは受け売りで、先日の飲み会で自伝の書き方について聞いたからこそ得られた視点だ。
なるほど金子翁の「どくろ杯」は全員が実名もしくは仮名なので、
たくさんの人間が登場しても混乱せずに興味深く読めるあたり、詩人と役者の違いだと思った。

図書館から借りている本や、読みたくて手元にある本は数冊たまっているのだが、
自伝をいろいろ読み比べてみるのも面白そうだ。

ちなみに現在のバックオーダーは金子光晴の自伝の続き、ナルニアの続きなど。
そろそろハリーポッターも再開せねばと思っているが、どうなることやら。
三国志も北方版、吉川版、いずれも2巻ぐらいでストップしているし。
春の眠気が悪いのだと言い訳しておこう。

2006年5月 3日

『どくろ杯』金子光晴

どくろ杯

ようやく読了。詩人・金子光晴の自伝その1。
結婚して上海に行くまで。

詳細な記述は自伝とは思えないほどで、筆者の記憶力とその補完力に感動する。
三輪さんもこれの半分ぐらい詳細に書いてくれたらいいのに。
金子翁は詩人で文章のプロなので上手なのは当然だけどね。

自伝なので、伏線や盛り上がりは特になく、
淡々と小さな事件や大きな事件が起きてはまた去って行く。

そんな中、さりげなく描写される筆者と三千代夫人の就寝風景が好きなのは私だけだろうか。
腿を重ねたり、肩にもたれたり。そういうニュアンスが好きだ。
私が女だからかもしれない。甘過ぎない、夫婦の関係。
妻には恋人がいて、筆者もそれを知っているというのに。

そうそう、カタカナで表記される当時の外来語も興味深い。
頻出する“アナルシスト”が“アナーキスト”だとわかったのは、
本の後半になってからである。

残り2冊、すぐに読むのがもったいないほどだ。

2006年5月 7日

『朝びらき丸 東の海へ』C.S.ルイス

朝びらき丸 東の海へ

ナルニアの3冊目、ささっと2日ぐらいで読了。
うーん、残念ながら『指輪物語』の方が物語が複雑で面白く、
『ハリー・ポッター』の方がエンターテイメントとして楽しい。
そして、教訓的ないい話しとしては『はてしない物語』に軍配があがる。

シリーズは7冊あるので、一応全部読むつもりではいるが、
買ってまで読むほどではないといった感じ。ありがとう、図書館。

ただ、子供の頃に読んでいたらどうだったかはわからないので、
三十路で初読するには適さないだけなのかもしれない。残念。
心の汚れた大人になってしまったことよ。

2006年5月11日

『ジョン・レノン対火星人』高橋源一郎

ジョン・レノン対火星人

初めて書名を知ったとき、私は小学生だった。
同じ著者による『さようなら、ギャングたち』の最後のページには
著者の略年譜が掲載されていた。
その一番最後、すなわち最新の欄に「ジョン・レノン対火星人を執筆中」とあった。

ビートルズを愛する母のおかげで、ジョン・レノンのことは知っていたので、
なんでまた、ジョン・レノンが火星人と対決するのだろうと不思議に思ったものだ。
そして、この書名はきっと冗談に違いないと思った。

中学生になって、『ジョン・レノン対火星人』が文庫になっているのを本屋で見つけた。
セーラー服を着た私は、早速それを小遣いで買った。
小説の中では、中3の理科1分野で学ぶ「右ねじの法則」が引用されており、
学校でまさにその単元を学んでいた私は、あまりのタイムリーさに驚いたものだ。

閑話休題。
それ以来何度か再読しているこの小説の一冊なのだが、
なぜかここ10年ぐらいは読んでいなかった。
一昨日、たまたま天袋の箱の中から発掘したので、
10年ぶりに再読することにした。
私の記憶が確かならば、金子光晴の名もこの本で知った筈だったから。

小学生からは多少知識の増えた目で読むと、いろいろな発見があるものだ。
当時は日常でありながらも奇妙な描写に夢中だったが、
今になってようやくストーリーがつかめたような気がする。

深淵によって目にするビジョンのすべてが死体で埋め尽くされている「すばらしい日本の戦争」、
その彼を救うべく「わたし」と「T・O(テータム・オニール)」は尽力する。
「わたし」の恋人のパパゲーノ、T・Oの同僚の「石野真子ちゃん」も手伝う。
主にT・Oの愛ある“レッスン”によって、
「すばらしい日本の戦争」は深淵か徐々に逃れられるようになり、
“死体を見なくてもすむ時間”は増えていく。
しかし、物語は悲しい結末を迎える。

正直にいうと、前著の『さようなら、ギャングたち』よりは荒い印象(結末は特にそう)で、
完成度としてもそちらの方がいいだろう。
ただ、冒頭から後半にかけての流れるような展開と、
随所に挟まれる“チャーミング”な挿話は、とても高橋源一郎らしく魅力的だと思う。
その“チャーミング”具合の感じ方は、
15歳だろうが32歳だろうが、私の中では変わっていなかった。素直に嬉しい。

ちなみに金子光晴は“いちごちゃん”に同情される姿で冒頭に現れる。
また、金子光晴本人ではないが、
“金子光晴がこれから書こうとしているハードボイルドなイエス・キリスト”は
横浜の山下公園で主人公と遭遇している。

今回気付いたのだが、高橋源一郎は一人称を「わたし」と平仮名で開いて表記していた。
一人称は単純なようでいて、作中にかなりの頻度で登場する言葉なので、
どのように表記するかは、実はかなり重要なものかもしれない。

『さようなら、ギャングたち』や『ペンギン村に陽は落ちて』を再読したくなった。
また、天袋から発掘されることが期待される。

2006年6月 9日

最近の読書。金子光晴および椎名誠のSF。

今読んでいるものは金子光晴の「ねむれ巴里」。
タイトルがパリなのに、まだまだ舞台はクアラルンプール。
なぜか諸葛亮の南蛮侵攻が比喩として出てくるのが面白い。
やはり、三国志は基礎知識として知っておく必要がありそうだ
(いつも途中で挫折しているので、半端な知識しかないけれど)。
さほど厚い本ではなく、するすると読めるのだが、
改行がほとんど無いので、実は文字量はかなりある。
それだけ楽しみが持続するということなので、喜んで寝床で読んでいる毎日。
読み終えたら、あらためて感想を書こう。

さて新聞の広告欄で椎名誠が新刊を出したことを知る。
タイトルは『砲艦銀鼠号』。登場人物は灰汁(あく)、可児(かに)……ということは、
これはもしかしなくとも名作『武装島田倉庫』の続編(?)ではないか!

椎名誠のSF三部作『アド・バード』、『水域』、「武装島田倉庫』、
どれも高校時代に大好きだった小説たちだ。
SFなのにピカピカした雰囲気は無く、むしろ錆や木っ端や廃墟に囲まれ、
登場する固有名詞もカタカナではなくあくまで日本語で、
日本のなれの果てのような、日本の異父弟のような世界が舞台である。
思い出したら楽しくなってしまったので、簡単な説明を。


アド・バード

ふたつの広告会社によって行われた広告戦争の結果、人間が住めなくなった世界。
改造されて人間の脳髄を埋められ、永遠に広告を発する生物が徘徊する中、
主人公マサルと弟の菊丸は父を探しに出かける。これが『アド・バード』。

初読のとき、よもや自分が広告業界(の端くれ)で暮らすことになるとは夢にも思わず、
今読み返すと、また違った見え方をするのが面白い。
とはいえ、主人公が少年なので普通に冒険小説としても楽しめる。
※ちなみにハードカバーの方が表題ロゴがかっこいいのでおすすめ。
 たむらしげる氏の装画もステキ。


水域

『水域』。すべてが水に沈んだ世界、人々は船に乗って“水域”で生活している。
産業などは何もなく、物々交換か釣りか、過去の遺物を拾う日々。
怪異な生物、ツバハキウツボ、スソガラミ、サキヌマドクタラシ。
主人公ハルが出会う事件。悪人、善人。廃墟となったホテルは建物の先端だけを水の上に覗かせる。

個人的にはその前編といえる短編『雨がやんだら』が怖くて大好きなのだが、
『水域』の方がエンターテイメント性が上がっている。
※ちなみに『雨がやんだら』は雨が降り続く世界の女の子の日記の体裁をとっている。
ただの長雨だと思われていたのに徐々に危機感が増大していく。
それを女の子のそっけない文体が淡々と描写し続けるのがさらに怖い。


武装島田倉庫

そして『武装島田倉庫』。近未来、主人公・可児(かに)が島田倉庫に就職したところから始まる連作中篇集。
白拍子と呼ばれる略奪武装組織から自衛するために島田倉庫は武装し、巨大装甲車は山道を駆け巡る。
北政府は“知り玉”を飛ばして人々を監視する。生物は異常進化し、人々に襲いかかる。

なにが素晴らしいって、独特の名詞群だ。地名だけでもすばらしい。
泥濘湾(でいねいわん)、総崩川(みなくずれがわ)、肋堰(あばらダム)。
あぁ、わくわくする。


一番好きなのが『武装島田倉庫』だったので、この新作の報はとても嬉しい。
金子光晴の次に読むのはこれに決定。もちろん、『武装島田倉庫』から再読する。

2006年6月16日

仕事関連で漫画を。

描くんじゃなくて読んでいる。
エッセイ漫画の類いだが、漫画家さん本人が新人さんということもあり
なんとも中途半端な印象でもったいない。題材はすごく面白いのにね。

まだ3巻までしか読んでないので、
手元にある4〜5巻でどれだけ成長(失礼)するかが楽しみだ。

さて、エッセイ漫画といえばおすすめはやはり西原理恵子先生。
ここ最近のは読んでいないのだが、鳥頭紀行やできるかなシリーズは大好きで今でもたまに読み返す。
乱暴そうに見えて、実はすごく優しい人だというのが伝わってくるので読んでて嬉しい。
ちなみにサイバラ先生は私と同じ地域にお住まいのようで、
街で目撃できないものかと(勝手に)楽しみにしている。

鳥頭紀行ぜんぶ

できるかなV3

もうひとつ。エッセイ漫画のおすすめは「夫すごろく」。
堀内三佳さんによる長期連載で、
そこまで描くかというほどにご一家4人とその周辺の人達の日常が細かく描写されている。
実際に画面そのものも細かい文字でこれでもかと書き込んであるので、
読み応えたっぷりなので、コストパフォーマンスもいい感じ。
「夫」氏の料理レシピは我が家でも度々真似ている。
ギャグ漫画タッチの絵なれど画力は白眉モノで、何気ないコマの絵でもすごく上手さを感じる。

夫すごろく 5 (5)

2006年6月30日

『ねむれ巴里』金子光晴

ねむれ巴里

金子光晴の自伝、その2。
シンガポールからマレーシアを経由してマルセイユへ。
ついにパリで夫人と合流。
パリでの借金と嘘にまみれた生活、そしてブリュッセルへ。

いろいろと移動はしているが、やはりメインはパリでの生活だ。
夫人と再会しつつもうつろな夫婦関係を続けつつ、
とにかくもお金が無い辛さと、
パリの華やかな外見の底に沈殿している欲と嘘が綴られる。

しかし、それでも筆者はパリが好きなのだ。
餓死寸前であろうと、ゆすりたかりを続けることになろうと、
人種を問わず男達の視線を集める三千代夫人の存在が気がかりだろうと、
在パリの日本人たちの不憫な状況を目の当たりにしようと、
それでもしぶとくパリにいて、パリにこだわる。

後半、ブリュッセルに移動してもそれは続き、
パリとの比較、ブリュッセルからパリへの小旅行が述懐されている。

夫婦で日本に帰国する金が用意できず、
三千代夫人を残して一人でアントワープから旅立つところで本編は終っている。

私は金子光晴の生涯をまったく知らないので、
どうなることかとはらはらさせられたまま、最後のページを閉じた。
続きは自伝その3の『西ひがし』にて。

2006年8月10日

テレプシコーラの9巻

最近の昼食は、もっぱら近所のパン屋のパン。
もともとはこのあたりで有名なケーキ屋だが、
先月、我が家の近所にパン屋をオープンしたのだ。
パンはお店で焼かれており、毎日焼きたてを食べられる至福。
いろいろな種類のパンが売っており、どれもハズレは無いのが嬉しい。
今日はハモンセラーノとカマンベールのサンドイッチにした。

本屋で「舞姫 テレプシコーラ」の8巻を購入。
先日買った9巻と合わせて一気に読了。
なかなかに容赦の無い展開で、とても続きが気になる。

舞姫(テレプシコーラ) 9 (9)

繊細で美しいバレエという題材の中に
作者・山岸涼子独特の怖さが混ぜ込まれたとても面白い作品だ。
デビュー2年目にして描かれた傑作「アラベスク」から約30年後、
現在の山岸涼子が現在のバレエ業界事情をふまえた上で描く。
親の見栄、バレエ教師同士の事情、
うっすらと匂わされている“いじめ”、
児童ポルノの問題、インターネットの噂の問題。
バレエ漫画とは一言でくくれない数多の要素が複雑に絡み合っている。
掲載誌がダ・ヴィンチというのもトリッキーで面白い。
年に1〜2冊は単行本が出ているのも、読者としては嬉しい。

夜は仕事をしつつ、発表会のプログラムのプリントを山盛り。
なぜか、毎回私(及びK)がプログラム作成担当になっている。

2006年9月16日

『チェコのマッチラベル』

前々から欲しくてようやく入手できた一冊。
1950〜60年代の社会主義国家時代のチェコスロバキア共和国のマッチラベルを集めた本。
こういう本を出すのはもちろんPIE BOOKS。大好きな出版社だ。

当時のチェコではプロパガンダの一環としてマッチのラベルが使われており、社会主義国らしいスローガンやら国の宣伝やらが、さながら記念切手のように色とりどりにデザインされている。

チェコは古くから人形の国でもあり、現在でも「チェコアニメ」というジャンルが確立されているぐらいに愛らしいキャラクターを作らせると絶品なのだが、そこにロシア構成主義に代表される幾何学的な抽象性も加わり、とても美しいデザインができあがっている(“samolost”のJakub氏もチェコ出身だ)。

当時はプロセスカラーによるフルカラー印刷が高価だったのか、ほとんどのラベルが3〜5色の特色刷りで、網点も無いベタの色面によってデザインされている。この配色センスがよろしくて、ヨーロッパ的な原色と中間色の使い方は、今見てもまったく遜色が無い。

プロセス4色が全盛の現代では特色印刷の方がコストがかかるせいもあり、多色刷りの見本としても貴重な一冊。もちろん、資料的な価値だけではなく、単純に眺めているだけでも楽しい。

このすてきな本を、いかに次の仕事に活かしてやろうかと目論んでいる。

チェコのマッチラベル チェコで見つけた、あたたかなともしび
南陀楼綾繁
ピエ・ブックス (2005/07/10)
売り上げランキング: 4,805

2006年9月18日

「F.S.S.」と「アルカサル」

今日のエントリはオタクな内容なのであしからず。

世間は皇室関連のニュースで賑わっている。
同時に「皇位継承権」「皇位継承順位」などという言葉もよく耳にする。

そうなるとだね。
私としてはグリース王国の光の神様とか、スペインのペドロ残酷王を思い出してしまうのですよ。

前者は永野護の「ファイブスター物語(F.S.S.)」の主人公、
後者は青池保子の「アルカサル」の主人公。
いずれも大好きな漫画で、
皇位継承を巡るドロドロだの、政略結婚だのがてんこもり。

そんなわけで現在、「F.S.S.」を読み返す日々。
永野護、変態で最高。
何度読んでもクリスのシーンは泣ける。
そして「クローソー、コーラスを救ってくれ」のシーンで
すでにコーラス三世が死んでたことに今頃気づいた私。
Kに激しくバカにされる。

現在「F.S.S.」は7巻あたりを読んでいる。
残りの5冊を読んだら「アルカサル」を押し入れから引っ張りだすことにしよう。

ファイブスター物語 (12)
永野 護
角川書店 (2006/04/07)
アルカサル-王城- (12)
アルカサル-王城- (12)
posted with amazlet on 06.09.18
青池 保子
秋田書店 (1994/07)
売り上げランキング: 23,851

2007年3月19日

『理由』

理由 特別版

(2004年 日本)監督:大林宣彦
http://www.wowow.co.jp/stock/riyuu/

 もろもろの多忙も少し落ち着きが見え始めた。今夜はDVDを見る余裕があったほどだ。DVD見るのは何週間ぶりだろう。映画館も久しく行く余裕がなかった。

 キムチから借りた「理由」をDVDで鑑賞する。
 かつての下町・荒川区の高級マンションで起きた一家四人殺人事件を主軸に、総勢107人の登場人物による証言で構成されている。この107人を演じた役者陣が豪華で、これだけの面子を集められたのも大林宣彦ならではだろう。内容は107人という人数に混乱することもなく、ミステリーの真相に向かってぐいぐいとストーリーに引き込まれる。ところどころにいわゆる「大林臭さ」が漂っているので、そこで好き嫌いが別れるかもしれないけれど。
 宮部みゆきによる原作も面白そうなので、読んでみたくなった。

 「理由」の余韻が残っているにもかかわらず、就寝前には先日から再読していた「アルジャーノンに花束を」を読了する。初読は10年以上前か。
 初読のときと同じように、「同じような題材なら、映画“レナードの朝”の方が好きだな」という感想を持つ。“レナード”は実話だしね。デ・ニーロだしね。

2007年5月10日

ばたばたと連休。橋本源氏。

 なにがアレって連休前後は公私ともにめまぐるしい日々だった。

↓めまぐるしい日々ここから

 “公”の部分では「連休明けにお願いシマスー」という案件をステキにどっさりいただいたり、納品した筈の“なんだかすごい突貫スケジュール”に苦しめられたり、Flash Liteのfor文の書き方でで悩んでJ先生に助けていただいたり、仕事だということを忘れるほどに夢中になってる某ネットショップのカスタマイズに燃えてみたり。

 “私”の部分では、従兄の結婚式があったり、朝の7時に美容院でセットしてもらったり、実家の父が我が家に滞在したり、なぜかKはピアノの師匠のコンサートスタッフに駆り出されたり。ついでに私の誕生日があったり、学生時代のゼミの友だちと緊急同窓飲み会があったり。

↑めまぐるしい日々ここまで

 さてもさても、ばたばたしていたものよ。


 そんな合間の「一人の娯楽」といえば、やはり橋本源氏。ようやく9巻の「若菜(下)」まで到達し、第二部の役者が揃ったところ。ついに出ました、女三の宮の降嫁。

 橋本源氏は各帖の冒頭に年齢付きの系図があり、今まではあまり気にしなかった登場人物の年齢を把握できるのが面白い。
 光源氏は故・藤壷の女院の面影を求めて女三の宮を娶ったあげく「予想外に幼稚」だと失望する。降嫁時の光源氏は40歳、女三の宮は14歳。そりゃあ、いくらなんでも物足りなくて当然でしょう。事実上の正妻・紫の上ですら31歳になってるのだし、比較される女三の宮が気の毒になってくる。
 さらに同じ頃、源氏の娘・明石の女御が春宮の子を懐妊している。年齢を知って驚いたことに、春宮は14歳で明石の女御は12歳である。橋本源氏において、朱雀院とその息子の春宮はねちねちといやらしいニュアンスで描かれている。朱雀院はぱっとしないまま譲位したダメな上皇だし、春宮は早熟で女好きな印象だ。その影響なのか、光源氏は実の娘・明石の女御すらもあまり好いてはいない様子をかもしだしている。むしろ、血がつながっていない玉鬘を尊敬して溺愛しているようだ。

 橋本治の「窯変・源氏物語」は現代語訳ではなく意訳小説なので、そのあたりは筆者の解釈なのかもしれない。谷崎やら円地やらの現代語訳を読んで比較してみたい気もするが、なにせ54帖もあって長いので躊躇してしまう。
 読みかけの「若菜(下)」では、いよいよ柏木と女三の宮の密通のシーンが登場する模様。因果応報なのかしらね。

2007年5月12日

いらないけど捨てたくない本

 8時に目覚める。ポンジュースを飲んでネットの巡回をする。メールを確認するも、さして重要なものも無く。やっぱり眠いので布団に戻る。

 昼過ぎ、Kに声をかけられて起こされる。この週末は珍しく急ぎの仕事が入っていないので、今日は一日仕事を忘れることにした。まったく仕事をしない日は滅多にないので、とても嬉しい。

 連休前後から家の片付けを進めている。もっともっとモノを減らしたい。どうせいつの間にか増やしてしまうのだから、ちょっとでも「不要」と感じたものは躊躇せずに処分し続けたい。でも、ゴミにするのは気が引ける。
 そんな行き場の無い不要品のひとつが本である。

 昨夜、偶然から吉祥寺に新しい古本屋ができていたことを知った。その名は「百年」。店長氏のblogも読んでみて、良心的な印象を受けたので、「仕事しない日」に行くにはちょうど良さそうだ。
 早速、自分の本棚から「いらないけどゴミにはしたくない本」を数冊選んで持って行った。主に写真集や画集、服飾系の資料など。「ゴミにしない」が目的なので、タダで引き取ってもらってもいいぐらいなのだが、結果的に嬉しい値段で買い取ってもらえた。ついでに小説を一冊購入する。

 雑誌は躊躇せずに読んだらすぐ捨てるのだが、「書籍を捨てる」という行為はとても罪悪感を感じてしまう。基本的に買った本を紙ゴミの日に出す事だけは避けていて、たいていは人にあげたり、図書館の「ご自由にお持ちください」コーナーにこっそり放置したり、ネットオークションで売ったりする。
 とはいえ、それらの処分方法に当てはまらない本も出てきてしまうので困っていた。ついでに言うと、処分に困りそうな本を買う時にもいちいち罪悪感を感じていた。例えば、もらった方が困るような大型本や、図書館には不向きなサブカル本や、ネットオークションでは半年かけても売れないような本が該当する。それらの本は本棚の中で長年放置されたままになっていた。
 今日、買い取ってもらった本はそんな種類の本だった。行き場の無い本たちを有効に処分できた上にお金までもらえるとは、願ったり叶ったりである。

 「百年」はセレクトにこだわりを感じる古書店で、なんだか気に入ってしまったので、これを機会にさらに本を持ち込むことにした。次回は美術書や展覧会の図録の類いの買い取りをお願いしようと思う。
 ダリやクレーやウォーホルやリキテンシュタインや、展覧会に行くたびに買っていた図録だが、持ち帰ってもほとんど見返さない事に気付いた。「資料になる」と思って買った写真集などもそう。特に著名なアーティストの作品集なら、見たくなった時に図書館に行けばいいんだしね(あ、ビアズリーと九龍城砦関連の本は別格です。これらは中身が多少重複しようが10年間本棚で眠ってようが、まったく手放す気になりません)。
 そういう視点で本棚を見ると、処分できそうな本がいっぱいある。本棚に空間ができれば、本を買うことにも罪悪感を感じなくなるだろう。なるべくなら自分の本棚の中で完結できる蔵書量だけで生きて行きたいと思った。押し入れの中で箱に入ってたまりまくってる本もなんとかしなきゃね。

2007年5月16日

最近の橋本源氏

 気候が良い、すなわち寝床で読書するのに最適の季節となった。橋本源氏は10巻に入り、不義の子・薫が生まれ、柏木は死んだ。
 橋本源氏では"柏木"ではなく"右衛門の督"という呼称が使われている。他にも"夕霧"ではなく"息子"や"左大将"、"落葉の宮"ではなく"女二の宮"など、位階名や源氏から見た立場で表現されることがほとんどだ。地名が入る"六条の御息所"や明らかな固有名詞の"良清"はそのまま使われているが、後世になって固有名詞のように使われている名称は使わない方針のようだ。そういえば、古語で書かれた原文の『源氏物語』は主語が無い文章ばかりらしく、恐らくはそれを尊重しているのだろう。

 このペースだと来月には全14巻を読了できそうな雰囲気で、ますます読み応えがあって楽しい。本編終了後には、同じく橋本治による源氏物語にまつわるエッセイ『源氏供養(上・下)』が待っている。本そのものは既に購入済みで、ちらほらと目次を覗いただけでも面白そうでヨダレが出てきた。

 現在読んでいる10巻で光源氏本人が登場する物語は終わり、残る4巻以降は「宇治十帖」を含んだ光源氏の子孫の物語になる。いわゆる第三部というやつだ。個人的に第三部はあまり好きではないので、10巻を読了したら『源氏供養』に浮気する気配が濃厚だ。まあ、いずれは読むけどね、第三部。

 しかし、読むのも時間がかかるが、書く方もさぞや大変だったろうなと思う。裏表紙の著者コメントによると合計9000枚になるんだとか。もちろん原作を書いた紫式部の偉業あってこそだが、橋本治もがんばったんだなあ。
 我が家にある長編小説といえば『指輪物語(全10巻)』、『吉川三国志(全8巻)』、『北方三国志(全13巻)』などだが、私が読了したものは指輪物語だけである。三国志はいずれも途中で挫折しているので、死ぬまでに一度は通読したいところだ。まだまだ読みたいのに手つかずの本が世の中にはあふれまくっていることよ。

 以下余談。
 中学から高校にかけて読んでいた『グイン・サーガ(作・栗本薫)』は38巻ぐらいで挫折した。『グイン・サーガ』は現在113巻まで刊行されており、「個人による世界最長の小説」としてギネスブックにも申請されたが、複数冊だということで却下されたらしい。
 ギネスブックが認定した「世界最長の小説」は2004年まではプルーストの『失われた時を求めて』だったそうで、何十年も記録を保持していたとは知らなかった。もちろん、私は未読である。『グイン・サーガ』も再読する気力は無いので、実家に放置されている38冊は今後もホコリをかぶったままだろう(欲しい人がいたらタダであげます)。


窯変 源氏物語〈10〉横笛・鈴虫・夕霧・御法・幻
橋本 治
中央公論社 (1996/06)
売り上げランキング: 363629


源氏供養〈上巻〉
源氏供養〈上巻〉
posted with amazlet on 07.05.17
橋本 治
中央公論社 (1996/11)
売り上げランキング: 225815


豹頭の仮面―グイン・サーガ(1)
栗本 薫
早川書房 (1983/01)
売り上げランキング: 64475

2007年6月18日

本屋で漫画を衝動買い

 唐突に『パタリロ』が読みたくなってしまった。私が読んでいたのは18巻ぐらいまでなのだが、知らないうちに現在80巻まで刊行していた模様。「よっしゃ!」と、古本屋で大人買いする気満々だったのだが、「勘弁してくれ、80冊もどこに置くんだ」とKに制止されてしまう。仕方ないので、スキを見つけて漫画喫茶に行くとしよう。実家にある筈の「横須賀ロビン」も読みたいなぁ。

 さて、その反動というわけではないが、本屋で漫画の単行本を数冊衝動買い。雑誌はたまに買うけれど、単行本を買うのはひさしぶり。新聞の書評で気になっていた「臨死!!江古田ちゃん」と、偶然存在を知った「パタリロ源氏物語」。どちらも万人にはおすすめしないが、個人的にはとても気に入ってしまった。

 「臨死!!江古田ちゃん」は24歳でフリーターの女・江古田ちゃんが本命の彼氏を探しつつも、なぜか彼女持ちの男とばかり寝てしまったり、宿敵「猛禽」の女を威嚇したり、なぜか自宅ではずっと全裸だったり、暗黒舞踏を踊ってたり、フィリピンパブで働いたり、ヌードモデルやったりと、そういう漫画。皮肉な笑いが好きな女性なら、きっと楽しめるだろう。1巻しか買わなかったが、2巻も探して買う予定。

 「パタリロ源氏物語」は源氏物語をモチーフに、なぜか陰陽師の阿部家と賀茂家の戦いがメインで、バンコラン扮する光源氏はなんだか社会派な男に描かれている。豪華絢爛な王朝文学を期待するとがっかりしそうだが、魔夜峰央のオカルティックで耽美な作風が好きなら間違いなく気に入るだろう。ベールゼブブやサルガタナスといった魔王たちも出て来て楽しい。

臨死!! 江古田ちゃん 1
臨死!! 江古田ちゃん 1
posted with amazlet on 07.06.20
瀧波 ユカリ
講談社 (2006/04/21)
パタリロ源氏物語! (1)
パタリロ源氏物語! (1)
posted with amazlet on 07.06.20
魔夜 峰央
白泉社 (2004/12/04)

2007年8月21日

やどりぎ

 橋本源氏は「やどりぎ」を読んでいる。Wikipediaなどで調べると「宿木」と表記するのに、橋本源氏では「寄生」と表記している。原本が“かな”文学だからだろうか?

 女好きな匂宮は左大臣(夕霧)に押し切られて六の君と結婚する。片やすっかり匂宮にメロメロの中君は、初めての「夜離れ(よがれ)」を体験して一晩中泣いている。薫中将は唐突に大君の面影を妹の中君に見いだし、なんだか横恋慕している。アホかいな。
 かつて光源氏の恋愛はもっとパワフルだったというのに、その孫や息子はどうしようもなく小物である。特に若い頃の夕霧と、今の薫のうじうじとしたダメ男ぶりは、読んでいて苛立ってしまう。あ、薫は実は光源氏の息子じゃないけどさ。
 孫の匂宮は匂宮で、来るもの拒まずな様相だ。中君がありながら六の君の婿になった件については「中君への愛情が減ったのではない。中君への想いはそのままで、六の君への想いが“増えた”のだ」などと書かれている。ハイハイ、器用ですね。どうぞ、ご勝手に。
 さっさと“流されつつも拒む女”の浮舟に登場してもらって、主役交代してほしいものだ。ご都合主義な宇治十帖は、「あさきゆめみし」で読むよりは面白いけれど、やはり光源氏が生きている時代の物語の方が読んでいて楽しい。宇治十帖には、魅力的な人物が乏しいからかもしれない(だから、浮舟に期待している)。

窯変 源氏物語〈13〉
窯変 源氏物語〈13〉
posted with amazlet on 07.08.22
橋本 治
中央公論社 (1996/09)
売り上げランキング: 108144

2007年8月25日

本への憧憬

 今週の私はとても忙しかったので、この土日はまったりと過ごすことにする。

 金曜の夜、たくさんの出版業界の人たちとふれあう機会があった。とても楽しい時間だった。

 私が社会人になって10年経ち、デザイナー職として雑誌とはいろいろ関わりがあったものの、書籍とはほぼ無縁だった。今までに仕事で出会った出版業界の人たちは全員が雑誌の編集者だったが、先日出会った人たちは全員が書籍の編集者だった。
 今までに出会ったことのない職種の人たちとの会話は、とても興味深い。プロフェッショナルが語る専門的な話題は、聞いていて飽きることがない。ましてそれが、大好きなモノである「本」に関わる人たちならばなおさらだ。

 私の読書量では読書家とはとうてい言えないのだが、それでも本が好きなのである。
 「本」は、寡黙な物体なのに存在感があるのがすごいと思う。物体としては静かに存在しているだけなのに、手に取った人がページをめくって読みはじめた瞬間に、突如として本の世界に引き込んで語り始める。印刷された紙を綴じただけのモノなのに、数多の物語や知識が詰まっている。
 学生時代、「あなたにとって表現とはなんですか」という質問に、「私にとって絵が表現であり、表現とは私自身の体から切り離された私自身だ」と答えたことがある。青臭いことこの上なくて恥ずかしいが、今になって本も同様だと思った。筆者が紡いだ文章が、印刷されて製本されて書店に並び、人の手に渡る。たとえ筆者自身が存在しなくなっても、本が存在してページをめくる人がいるかぎり、作品は語りつづける。
 かっこいいなぁ、本。

P8260001.jpg

P8260002.jpg


*写真は友人の誕生日プレゼント用に作った豆本。この小さなハードカバーの本は、世界に二冊しか存在しない。しばらく手製本遊びをしていないが、そろそろ再開したいものだ。

2007年10月14日

うっかりとライトノベル

 昨日の疲れからすっかり熟睡してしまう。目覚めたら、父はいなくなっていた。昨日から予告されていたように、朝から一人で上野に遊びに行ったようだ。さすが、年寄りは起床が早い。とりあえず電話して、昨日の礼を伝える。そのまま新幹線で奈良に帰る模様。

 最近、書店で装丁について注視している。その一環で、なんとなく装丁が気になった本を買ってみるも、後からライトノベルだったことに気づく。ほかのライトノベルを読んだことが無いのでおおざっぱな感想しか書けないのだけれど、この作品に関して感じたことは以下のとおり。

・会話文が多用されているせいか、漫画かアニメ作品のノベライズのように思える。
・基礎知識として、いくつかのアニメ作品を知っていることが前提の小ネタがある。
・典型的な個性を付与されたキャラクター造形が多い割には、活躍せずに死んでいく。

 やはり、総合的に考えてみると、ライトノベルやいわゆるオタク文化に疎い人にはとっつきにくいものだろうな。私個人はオタク文化にはそこそこ詳しい方だけど、それでも読んでいて辛い箇所があった(単純にライトノベルを読み慣れていないせいもあるだろうけど)。
 とはいえ、現在活気のあるジャンルなので、時々は覗いておきたい世界だとも言える。
 ライトノベルといえばアニメ調のイラストが表紙になっているのが定番だけれど、この本に関しては、そういった要素は一切排除されていた。それが作品にとって、いいのか悪いのか。

 ここ半年ほど、本について考えている。
 装丁と作品と売り上げの関係について、文化的なモノであることと商品であることについて(これはデザインはアートかという議論にもつながりそうだ)、いろいろと悩ましく難しいメディアである。

Wikipedia(※“ライトノベル作家の一般文芸への越境”についての記述がある)
http://ja.wikipedia.org/wiki/ライトノベル

2007年10月29日

『チーム・バチスタの栄光』海堂 尊

 昼から事務所で打ち合わせ。コートツリーを組み立てたりして、少しずつ事務所も整備されてきた。

 図書館で借りていた『チーム・バチスタの栄光(海堂尊 著/宝島社 刊)』を読了。メディカル・ミステリーという、普段は読まないジャンルの小説である。
 以前にも書いたけれど、最近書籍の装丁に注目しており、気になった装丁の本の署名などを片っ端からメモしている。そのリストの中に偶然にも海堂尊の本が二冊あったので、これも奇遇と読んでみることにした。

 専門的な医療用語が羅列されて読みにくいかと思いきや、物語の楽しみは全く邪魔されず、さすがだと思った。
 小説作品の中で、専門用語をどこまで説明するかの見極めは難しいものだ。あまり解説しすぎると説明くさくて興ざめだけど、聞いたことも無い単語ばかりが並んでいると読む気が失せる。読者が説明だと気付かない程度に説明するのがいいんだろうなぁ、多分。

 amazonのレビューによれば、この作品は外科医学関係者に不評のようだ。なんでも、現代の外科医学的には不自然な箇所があるらしい。これまた難しいポイントで、考証や監修に忠実にすることで物語の面白さが削がれてしまう場合もある。
 個人的に趣味の漫画を描いていた頃は「その筋の専門家にツッコミを入れさせない」をモットーに、自分が知らないことは書かないか、徹底的に図書館などで資料を収集するかのいずれかだった。
 例えば、私は建築については無知であるので、背景の建物などを描いていると知らず知らずに嘘の建物を描いてしまう可能性がある(梁の位置がおかしい、窓の位置がおかしい、など)。それが怖くて「ビクトリア様式の建物とインテリアしか出さない」と決め事を作って写真資料に忠実に描いてみたり、別の作品では「風景や町並みは奈良の田舎」と統一してみたり、自分の想像よりも、資料の信憑性を重視していたのだ。
 だけど、資料は所詮資料でしかないんだよね。ノンフィクションは別として、創作作品であるのなら、物語や作品として面白ければ多少の逸脱も有りでしょう。本当に専門的な箇所で、専門家が白けるようなウソが無ければ、多少の創作は許容されてしかるべきでないかしら。だって、エンターテイメントなのだし、学術論文じゃないのだし、読んで楽しむものなのだし。

 医療や医学について無知な私にとっては面白い小説作品でした。軽い雰囲気の会話や文体だったり、比較的ありがちな登場人物がいたとしても、先日のライトノベルよりも読後感が爽快だった。やはり私はライトノベルに慣れていないということか。
 関係ないけれど、普通のハードカバーなのに4日ぐらいで読めてしまった。橋本源氏と比べるととても短時間に感じる。善し悪しの問題でなく、橋本源氏はそれだけじっくり読むタイプの小説なんだろうなと思った。

 読んで面白かったもので、帰り道に図書館に立寄り、続編にあたる『ナイチンゲールの沈黙』も借りてきてしまった。読書の秋らしくて、いい感じである。

チーム・バチスタの栄光
海堂 尊
宝島社 (2006/01)
売り上げランキング: 1169

2007年11月 9日

『ゲームクリエイター作法』木村央志

 絶版になっていたので、Amazonのマーケットプレイスで購入。知る人ぞ知る変態ゲーム「クーロンズ・ゲート」を作った木村央志氏の本である。
 「クーロンズ・ゲート」は私が今まで遊んだゲームの中で一番好きなゲームである。なにがいいって、変態性と様式美を哲学的な観念で味付けしてる世界観が最高で、そりゃ一般ウケするわけがない。そんなゲームを作った人が書いた本なので、ファミ通などで読む「クリエイターインタビュー」とは違った内容になって当然であろう。
 ゲームとはなにかという概念を製作行程として解体しながら解説してあり、映画とも小説とも違ったゲームというメディアそのものについて考えさせられる。

 まだ一度通読しただけなのだが、私の場合は、何度か繰り返して読むことで味わいが増しそうな本になりそうだ。初読では、おぼろげに「"与える"と"奪う"」や「描写されていないのに存在するイメージ」などに翻弄されてしまい、まだ全体をガバッと掴むまでには至っていない。
 難しい内容ではないけれど、とらえようとすると指先に絡まってしまい、捕まえたのか絡めとられたのかがわからなくなってくる(こういう比喩を使いたくなるあたり、既に蝕まれていることは明らかだ)。何度か、頭の中を整理しながら読もうと思う。もっと賢く、頭がよくなりたいよう。

 今のところは「廃墟好きはマニエリズムに通じる」とか「白は無を表す恐ろしい色である」とか、そういう枝葉末節のキーワードのようなものを捕まえるのがやっとである。
 枝葉末節で言えば、随所に挿入されている参考になる映画や本やゲームを眺めるのも面白い。どれも面白そうなもので、以前から感じていた著者の引き出しの多様さをうかがわせる(その三分の一ぐらいは、私が既知のものであるあたりもツボが重なっていて良い)。

 ここ最近、業務としてゲームに携わることが増えた私にとっては、ひとつのガイドになりそうな本だ。そういう意味では「高木工務店」に通じるものがあるね。


ゲームクリエイター作法
木村 央志
NTT出版
売り上げランキング: 256471


●著者による書籍紹介ページ
http://www.zeque.co.jp/nttbook/

●Wikipediaの「クーロンズ・ゲート」のページ
http://ja.wikipedia.org/wiki/クーロンズゲート

●メーカーによる「クーロンズ・ゲート」紹介サイト
http://www.sonymusic.co.jp/Amusement/kowloonet/

※私が「クーロンズ・ゲート」について熱く語っているエントリ
http://visualclip.net/inagaki-log/2005/05/post_37.html

2007年11月22日

橋本源氏、読了。

 去年の年末から読み始めた橋本源氏こと『窯変 源氏物語』をようやく読了。分厚い文庫で全14巻、1年弱もかかってしまった。やっぱりアレよね、源氏物語で面白いのは光源氏が死ぬまでで、百歩譲って宇治十帖までが面白い。言い換えると宇治十帖が面白くない。
 期待していた浮舟も、なんだかねー。玉鬘のように“拒む女”ではなく、“当代の貴公子二人に求愛されたあげく、どっちつかずのまま死すら選べなかった女”なんだよね。まあ、言い寄ってくる貴公子のお二人も情けない連中で面白みに欠ける。

 橋本源氏は、光源氏の死の前後の美しく澄みきった空気が素晴らしかった。通常は三人称で描写される『源氏物語』だが、橋本源氏は光源氏の一人称なのが面白い。だからこそ、最愛の恋人である“春を愛でる人(紫の上)”との別れの切なさや、そのあとの本人の厭世感と空しさが深く味わえるのである。

 紫の上は光源氏の正妻ではなく愛人である。しかし、光源氏に最も愛された女性であり、自他ともに認める光源氏の人生のパートナーで事実上の正妻だった。光源氏本人も、彼女に大しては他の愛人たちとは格別の扱いをしている。
 だからこそ、17年間も空席だった“光源氏の正妻”という地位を、女三の宮という少女に奪われてしまった無念さは凄まじかったと思う。女三の宮は文字通り降ってきた内親王であり、最強の血統である。ましてや、出家した先帝が溺愛する娘であり、今上帝の妹にあたる女性だ。光源氏がしつこく藤壷の面影を求めたということもあるだろうけれど、ブランドにやられたという側面も大きいだろう。

 新婚初夜、新妻・女三の宮の寝殿へ向かう光源氏を見送る紫の上。「お互いがお互いを必要としている」と思っていた相手に裏切られたのである。もう、こんなに口惜しくて腹立たしくて悲しいことはないだろうに。
 で、結局、光源氏は女三の宮のお子様っぷりに、早速飽きてしまうのだ。そんなにすぐ飽きるのならどうして降嫁なんてさせたのか、二人で生きて行こうと決めた私を悲しみの淵に突き落とした結果がこれか、と紫の上は思ったことであろう。しかも、“飽きて放置された正妻”の女三の宮は、その後別の男と密通して子供まで生んでしまうのだ。結果的に女三の宮の降嫁が心労となって、紫の上は寿命を縮めてしまう。

 だらだらと書いたけれど、そんな光源氏の晩年を一人称で読むのは凄みがあってよかった。衰弱していく紫の上をつなぎとめられない口惜しさ、彼女の心を傷つけた自責、それなのに女三の宮が他の男の子供を出産してしまう空しさ、それらが凛々しくも切ない空気にあふれて描写されている。読んでいて興奮したし、心を揺れ動かされた。
 そんな迫力に満ちた光源氏の死後、薫と匂宮のどうしようもない貴公子コンビと浮舟の三角関係が滑稽かつ陳腐なものに見えるのは当然と言えよう。
 でも、読み始めたら最後まで読みたい。読み切ったからこそ、こうして感想も書ける。

 思っていたよりも長くかかってしまったけれど、日本の歴史のなかで一番長かった平安時代の気分を味わえたり、楽しい読書だった。もちろん、長編を読破した達成感もあるしね。今後しばらくは、短編や1冊で完結する本を読むつもり。

 さて、光源氏存命中は光源氏の一人称だった橋本源氏。光源氏の死後はいったいどういう文体で描写されていたのでしょうか。興味のある人はぜひ橋本源氏を読んでみてください。ぜひ、一巻からね。

窯変 源氏物語〈14〉
窯変 源氏物語〈14〉
posted with amazlet on 07.11.25
橋本 治
中央公論社 (1996/10)
売り上げランキング: 78573

2007年11月23日

「みずうみ」から出てきた見覚えのない半券

 渋谷あたりでイベントが行われたらしい。間接的にちょこっとお手伝いをする。Kには「お前は便利すぎる」と苦笑されるが、頼み事を断れない相手がこの世に数人いるんだもーん。役立って感謝されるのは嬉しい。

 橋本源氏も読み終わって呆けているのも勿体ないし、なにより本を持たずに床にはつけない。適当に本棚から文庫本をひっぱりだしてみた。なるべく薄くてさっと読めるもの、というわけで川端康成の「みずうみ」を選択する。再読するのは10年ぶりではなかろうか。
 枕元の白熱灯スタンドでページをめくっていると、なにやら紙片が挟まっていたのを発見した。黄ばんだ美術館の入場チケットの半券だ。
 黄変しているのも当然で、打刻された日付は1996年10月である。東京都現代美術館のホックニー版画展と常設展と印字されている。
 日付から察するに当時の私は京都在住の大学4年生、ちょうど東京の会社に就職が内定して小躍りしていた頃だ。内定式はまだ先だったし、その頃に上京する理由がない。しかも、ホックニーを見た記憶は皆無だし、なにより私は上京するまで都現美には行ったことがなかった筈だ。
 尾行癖がある高校教師・桃井銀平がトルコ風呂で妄想している「みずうみ」の続きも気になるのだが、行った記憶がない場所の“行った証拠”が出てくるのも気になるを通り越して気持ちが悪い。
 困ったときは人に尋ねるのが一番なので、目の前でヘッドホンをつけてピアノの練習をしているKに聞いてみることにした。

「ねえ、私は96年の秋に都現美でホックニー展なんて見たのだろうか」
「なんの話?」
「本から半券が出てきたの」
「それは俺だよ」

 聞けば、当時私がKに「みずうみ」を貸して、彼がそれを片手に就職活動で上京したことがあったんだそうな。で、その際にホックニー展を見たので、そのまま半券が挟み込まれたということらしい。聞けば簡単な事の次第に安堵して、私はまた桃井銀平と“ミス・トルコ”の会話に戻ろうとした。それを追いかけるようにヘッドホンを外したまま、Kがつぶやく。

「俺がホックニーの絵葉書を送ったことも忘れてるんだな」

 少しの間。Kは私の返事を待たずに、落胆した様子でヘッドホンを手にとる。

「あぁ、そうだったよね」

 Kはにっこりと笑顔になって、また鍵盤に向かった。コトコトと電子ピアノの鍵盤を弾く音だけが聞こえ始める。

 ごめんなさい、ごめんなさい。思い出したフリをしたけれど、実はいまだに記憶から抜け落ちています。
 記憶は取捨選択ができないのがもどかしく、申し訳ない。

↓10年前、“間接的”に「みずうみ」を読むきっかけになった映像。

2007年12月21日

『淋しいおさかな』別役 実

 電車で移動中、遠く窓の外にもくもくと煙を吐く煙突を見て、子供の頃に好きだった童話集を思い出した。別役実の『淋しいおさかな』という童話集だ。

 平仮名しか読めなかった幼稚園児の私にとって、読書家の両親の書架は未知の世界だった。そこに並んだ漢字だらけの題名が記された背表紙は、「わたしたちは難しい大人のための本である」と威丈高に見えたものだ(後年、それは誤解だとわかるのだけれど)。
 そんな中、この『淋しいおさかな』だけは、なんとなく優しく見えた。"おさかな"とは海を泳ぐあの"お魚"だとすぐわかったのと、装画のかわいらしさが子供心に魅力的だったのだ。
 だけども、やっぱり中身は漢字が多くて読めないし、なにより"おさかな"の前についている"淋しい"が読めないのが残念だった。一体、"淋しい"はどう読むのかと、子供心に想像したものだ。たのしい? うれしい? おいしい? あたらしい? それ以外の言葉を4歳の子供は思いつかない。あげく、母親に尋ねて「さびしい」だと知る。でも、4歳の子供の心には"淋しい"というコトバは理解できなかった。今思えば、その頃の私は幸せだったのだなと思う。
 結局、きちんと覚えられたのは小学校に上がってからだったように記憶している。そのせいか、今でも「さびしい」と書くときは"寂しい"ではなく"淋しい"と書くのが好きだ。漢字が平気になってから読んだ内容は、せつなくて空しくて、でも優しくて、大好きになった。

 実家にあった初版本の『淋しいおさかな』は、幼児だった私によってラクガキだらけになっていた。表紙の"顔"にはメガネが書き加えられ、背景の"星"も無数に結ばれている。恐らくは読めないけれど気になる本だったので、なにかしら関わりたかったのだろう。
 中学生になると、自分でしでかしたラクガキが恥ずかしくなってカバーを捨ててしまった。カバーを外すと真っ黒いハードカバーの表紙が出現し、緑色の細い線で描かれた小さな装画が上品で素敵だなと思った。

 さて、そんなカバーの無い裸の本がさらに恥ずかしくなった大学生の頃、私は同じ本をハードカバーで買い直した記憶がある。今度こそは大事にしようと思っていたのに、たった今、自分の本棚を見ても『淋しいおさかな』はいない。
 実家に置いてあるのか、はたまた今の部屋の押し入れの段ボール箱に入っているのか。カバーを外した裸の本も、買い直した本も、どこにあるのだろうか。

 古い本なので絶版になっているのかと不安になったが、どうやら文庫で復刊されているらしい。よかった。明日は書店に行かねばと思った。

淋しいおさかな (PHP文庫)
別役 実
PHP研究所 (2006/09/02)
売り上げランキング: 40128

2007年12月23日

『螺鈿迷宮』海堂 尊

 『チーム・バチスタの栄光』の映画化で話題になっている海堂 尊だが、私がそもそも興味を持ったのは本作と『ブラックペアン1988』の装丁が気になったからだ。
 実際に読んだのは『チーム・バチスタの栄光』、『ナイチンゲールの沈黙』に続いて三冊目である。三作とも同一世界であり、時間軸も似たようなものだ。

 『バチスタ』は確かに面白かった。主要登場人物の二人のやりとりも、謎とそれに対する伏線も、ドキドキしながら続きを貪り読んだものだ。
 だが、『ナイチンゲール』と本作と、なんだか著者のクセが鼻につきはじめてしまった。

 著者が登場人物に愛情を注いでいるのはわかる。だからといって、主要人物のほぼ全員がキザな別名を持っているのは不自然で読んでいて萎える。「グチ外来」は面白いネーミングなのでいい。「論理怪獣(ロジカル・モンスター)」、「火喰い鳥」、「氷姫」、「電子猟犬(デジタル・ハウンドドッグ)」、ちょっとのけぞるが我慢しよう。「血まみれヒイラギ」、「アンラッキー・トルネード」、「ミス・ドミノ」、「銀獅子」、「懐刀」、「死の女王」、「生の女神」、「赤い孫悟空」......そろそろ胸焼けがしてくる。他にも思い出せないほどに、いろいろなニックネームが出てきた。

 『バチスタ』は合理的で納得がいく展開だったのだが、『ナイチンゲール』と本作は、いずれも後半に超展開が繰り広げられてしまう。超展開と「リアリティの無いニックネーム」によって絵空事な印象ばかりが前面に出てくるのだ。
 医療ミステリーを銘打って、現代の医学や医療をモチーフに時に警鐘を鳴らすようなくだりもあるのだから、読んでいて「非現実」が鼻につくと、それだけで白ける。続きを読むのが義務的に感じるようになる。
 これが漫画なら違和感が無かったかもしれないのにね。漫画も小説も創作には変わりないのだけれど、片方で許容されて片方で許容されない文法があるのが面白い(そんなことを感じるのは少数派かもしれないけれど)。

 ともかく、同じ作者の本を3冊読んだところで、個人的には食傷気味だ。まったく面白くないわけではないのだけれどね。まさしく、英語で言うところの「not my cup of tea」である。

螺鈿迷宮
螺鈿迷宮
posted with amazlet on 07.12.23
海堂 尊
角川書店 (2006/11/30)
売り上げランキング: 736

2007年12月25日

『働きマン』安野モヨコ

 昨夜は無事に年賀状を投函できた喜びから、ついつい久しぶりに漫画喫茶に行ってしまった。

 今さら『働きマン』を読みはじめたところ、面白くて既刊4冊を一気読みしてしまう。最近、出版業界の人々と交流があるせいか、なんだかのめりこんでしまった。
 個人的には、出版営業担当者のエピソードが良かった。当初、初刷2万部予定だったのが5万部に覆る展開や、クールだった出版営業担当者が、ミリオンセラー記念パーティーで初めて会った著者から「あなたが売ってくださったんですね」と声をかけられるくだりは、グッときてホロリと泣けたほどに。

 家内制手工業で手売りしているのでなければ、どんなモノでも一人の力では完成しないし流通しない。いろいろな工程を経て完成するモノは、いろんな人の手と力が必要なんだよー。そんな当たり前のことを再確認した。
 私程度でも、ついついエラそうに「だってクリエイターだし」「だってデザイナーだし」とふんぞりかえってしまうことも多々ある。やっぱり基本の謙虚さも忘れちゃいけないなと思った。強気で攻めるべき瞬間というのもあるから、謙虚だけでもいけないけどね。でも、謙虚さを捨ててはいけないね。不必要な虚勢だけではいけないね。

 なにごともバランスが大事だなと、当たり前の結論に至る。昔は苦手だった安野モヨコの漫画だが、『さくらん』以降は好きになってきた。早く『働きマン』の5巻が出ないかなー。

働きマン (1) (モーニングKC (999))
安野 モヨコ
講談社 (2004/11/22)

2008年1月 2日

『ハッピーエンドにさよならを』歌野晶午

 新聞の書評で気になって図書館で借りた本である。

 新聞の書評に載った本は、たいていが新刊であることも影響して、図書館では貸し出し中になっていることがほとんどだ。予約を入れて、忘れた頃に「貸し出し可能」の連絡メールが来る。
 小さな枠の書評では表紙の画像が掲載されることは少なく、したがって、図書館のカウンターで初めてその本の表紙を目にすることも多々ある。版型もふくめて、装丁に驚かされることも楽しみのひとつだ。
 この本も、そんな一冊で、カウンターの奥の予約資料用書架から取り出されてきたときには驚いたものだ。喪中ハガキを連想させる黒い縁取りの表紙(しかも微妙に黒枠が版型とずらしてあるので不安感を煽る)、黒い紙が使われた遊びと見返し、小口を含めた三方は真っ黒に塗られている。見るからに不吉な様相は、書店でどういう帯がついていたのか興味深いところだ。半立体のイラストレーションも忌まわしいイメージでどきどきさせられる。

 さて、内容はといえば、ミステリーの短編集だ。タイトルのように、どれもハッピーエンドではない短編が集められている。
 長さも様々な11本の物語、そのモチーフや主人公に際立って目新しい印象は無い。自分の出生に不信感を抱く少女、ヒモ同然の中年夫を支える妻、ストーカー、ホームレス、パチンコに入れ込む母親などなど。それなのに、それぞれ「こういうオチかな」という読み手の予想をさらっと裏切る結末を迎える。なるほど、どんでん返しが得意な推理作家の作品だと納得させられる。こういう皮肉でブラックな味付けの本は大好きだ。
 読みやすいのは短編集だからか、物語の展開が小気味いいからか、読みやすいニュートラルな文体だからか。するっと物語の中に入り込めて、地味だけれど鮮やかな手付きの手品を見せられたような読後感を迎えられる。

 この作家の本を読んだのは初めてだけれど、短編ではない作品も読んでみたいと思った。

ハッピーエンドにさよならを
歌野 晶午
角川書店 (2007/09)
売り上げランキング: 107653

2008年1月16日

『ジェネラル・ルージュの凱旋』海堂 尊

 我ながら、まだ読むかという感じで読了した、海堂 尊の4冊目である。

 既に興味は薄れていたのだが、「図書館で予約が回ってきたし、せっかくだから読んでみよっかな」という不真面目な姿勢で読んだら、実は面白かった。
 前2冊『ナイチンゲールの沈黙』と『螺鈿迷宮』が非現実な超展開で胸焼けがしていたのだが、この4冊目はそういったハナにつく鬱陶しさが無くて良い。女性があまり前面に出てこないのも影響しているかもしれない。

 とはいえ、この作者のクセだと思われる「キザな別名」や「漫画的な台詞回し」は健在で、つくづく「漫画作品にしたら面白くなるのになぁ」と思わされた。今回の主要人物であるICU部長のあだ名"ジェネラル・ルージュ"の由来のくだりなど、小説で読むにはあまりにもクサすぎて、本を投げそうになった。
 週刊モーニングあたりでババーンとドラマチックな絵で漫画連載すれば、紋切り型の台詞やご都合主義も目立たずに、面白いエンターテイメントになるのになぁ。小説だと、読者がシラケてツッコミを入れてしまう隙が出るのでもったいない。

 女性の描写にも似たようなことが言えて、気が強くて厳しいけれどホロリと女らしさを見せる看護師長や、第一線は退いているが病院内事情に精通しているベテラン看護師、研修成績は悪いが実技は抜群で正義感あふれる"ICUの爆弾娘"の若い看護師、などなど。誰もが「いかにも」なキャラクターで、まるで連続ドラマか漫画に出てきそうなステレオタイプの人物たちである。男性陣については、もう少しひねられていて魅力的なので、恐らくは作者の女性観が関係しているのかもしれない。
 舞台が病院ということで、登場人物に職業による個性付けが難しいという制約もあるのだろうけれど、そこはぜひともがんばっていただきたいなと思った。

 さて、この流れでいくと『ブラックペアン1988』に進めばいいのだろうけれど、あいにくと図書館では予約が98人も入っているので、私が読むのはしばらく後になりそうだ。今は「海堂 尊はお腹いっぱい」というの心境なので、予約が回ってくる頃には新鮮な気分で読めることだろう。

 そうそう。この本はタイトルに「ルージュ」という言葉が入ることもあって、装丁が真っ赤である。表紙や見返しが赤いのは別にいいのだけれど、本を開いたときにページの両脇にちらりと見える「表紙と裏表紙の端っこ」も赤いので、読書中に少々目障りだった。書店で目立つのも大事だけど、可読性も大事よね、と思った次第。『チーム・バチスタ〜』の黄色はさほど辛くなかったんだけどね。赤という色はそれほどに強い色なのかもしれない。

ジェネラル・ルージュの凱旋
海堂 尊
宝島社 (2007/04/07)
売り上げランキング: 526

2008年1月18日

『スカイウォーカー』いくえみ綾

 今週頭から滞在中の義妹EYEが貸してくれた一冊。実は、きちんといくえみ綾の漫画を読むのは初めてである。
 奥田民生の歌詞から着想を得たという数編の読み切り短編がまとめられており、どれも中・高校生が主人公のステキな物語だ。

 若くしてデビューした少女漫画家が、自身が成長するにつれて対象読者の年齢を上げていくのは珍しいことではないのに、デビューして30年弱経過しているいくえみ綾が、今でも中・高校生を主人公にした魅力ある作品を描けるというのはすごいことだと思う。そして、その間ずっと第一線で人気を保っていることも、すさまじい実力というものを思い知らされる。

 私が高校時代、すなわち今から15年ほど前、いくえみ綾に夢中になっている同級生は腐るほどいた。当時からひねくれていた私は、「メジャーな人気少女漫画家の漫画なんて、陳腐でありきたりで退屈に違いない」と一方的に決めつけて、面白いから読んでみなよという友達の申し出を即答で拒絶していた。
 特にマーガレットコミックスは“低俗である”と毛嫌いしており、読むのはもっぱら“ぶ〜けコミックス”だった(その頃私が夢中になっていた少女漫画家は松苗あけみや吉野朔実、鈴木志保など。十分にメジャーで人気なラインナップが、今思うと恥ずかしい)。無意味なプライドにまみれた、美大受験生のアートかぶれも甚だしい。

 そして、すっかり乙女でも少女でもなくなった今頃、初めていくえみ綾の作品を読んでみた。
 素直に素敵だなと思った。自分が制服で中学や高校に通っていた頃に、こういう漫画と出会っていたら、学校生活は少し違った見え方をしたかもしれないと思った。
 安定して、微妙なニュアンスを器用に表現する画力・描写力もそうだけれど、きっと作者本人の人間性がにじみでているのであろう、作品全体に漂う「優しさ」が、皺が刻まれ始めた心に沁みた。ベタベタと嫌味ではなく、さらっと、でもしっとりと。
 もしかすると、作者の思い入れがある奥田民生の歌が、相乗効果をかもしだしているのかもしれない。でも、“好き”だけでは作品として昇華することはできないので、やっぱり、作者の力量がすごいのだろう。

 今まで食わず嫌いでごめんなさい。
 10代で享受しておくべき「ステキなこと」を確実にひとつ漏らしてしまった、と実感した三十路女のつぶやきである。

2008年1月19日

『パリパリ伝説』かわかみじゅんこ

 なんだか連日、漫画の感想ばかりである。かわかみじゅんこの『パリパリ伝説』、フランス人と結婚してパリに移住した作者の日常4コマ漫画である。フィールヤング誌で現在も連載中で、実は連載当初から読んでいるお気に入りの漫画のひとつだ。
 雑誌連載で愛読中なのだけれど、まとめて読みたくなったので単行本の1巻を購入。

 何がいいって、さっぱりした絵で淡々とパリの日常が描かれているのが楽しい。異文化にハイテンションではしゃぐでもなく、フランス人の悪口を書くでもなく、さらりと日本とは違ったパリ生活を切り取って、ふむふむと思わせつつ笑わせるのがいい。
 恐らくは「素敵でオシャレなパリライフ!」というニュアンスが皆無で、「実際、日常っていうのはこんなですよ、ふふふ」的な気の抜けた感じが読みやすさにつながっているのだろう。口元に微笑をたたえつつも、常に無表情な自画像もいい雰囲気を出している。
 現在は3巻まで発売中。もちろん、残りの2〜3巻も近日中に買う予定。

パリパリ伝説―不思議いっぱいパリ暮らし! (1)
かわかみ じゅんこ
祥伝社 (2004/12/08)

2008年2月 8日

『ゴースト・バスターズ──冒険小説』 高橋源一郎

 思っていたよりも時間がかかってしまったけれど、ようやく読了。

 物語はブッチ・キャシディがサンダンス・キッドと一緒にゴーストを探しに行くお話である。途中で二人が出会う人たちや想像の中で登場する人たちの挿話がいくつも差し挟まれる。それは松尾芭蕉と河合曾良だったり、芭蕉と連句するアルチュール・ランボーだったり、ドン・キホーテとサンチョだったり、はたまた則巻千兵衛博士とハルばあさんだったり......。それぞれの切ない物語がちりばめられ、終着地点にはゴーストが絡んでいる。
 文学と映画に詳しければ、もっとたくさんの登場人物を見つけられるのだろう。ゴーストの存在理由や秘密も見つけられるのかもしれない。

 でもね。そういうことは私にとってどうでもいいことなのよ。それよりも、ペンギン村にたった一人残された千兵衛博士が挑み続けた黒いドアと"死"の正体や、姪を残して「疲レチャッタ」とつぶやきながら死んでいくドン・キホーテや、長年の悲しみから馬房の闇の中に滲んでしまった黒人の老婆や、初仕事で流れ弾に当たって落馬する15歳の少年探偵の、淋しくも素敵な物語を味わうことの方が大事。
 物語の最後、芭蕉と車掌を乗せた俳句鉄道888は光の彼方へ消滅していくのだ。その刹那的で美しい情景ときたら。
 こうやって羅列するとまるで荒唐無稽にしか思えない事象なのに、作品の中では円環状にきれいにまとめてられている。乾いた文章なのに情緒があってね。終わりに近づくにつれて、心がゆっくり"きゅーっ"と絞られていく感じ。

 どこがどう好き、と具体的に書けないのがくやしいのだけれど、やっぱり私は高橋源一郎の小説が大好きなのだと再認識する。やっぱり好きです、愛しています。

ゴーストバスターズ―冒険小説
高橋 源一郎
講談社 (1997/06)
売り上げランキング: 187122

2008年2月 9日

『怖い絵』 中野京子

 個人的に思い入れたっぷりの高橋源一郎作品を丁寧に味わった後なので、とてもスピーディーに読了できた。だからといってこの本の内容が軽いというわけではない。

 西洋絵画の中から「怖い絵」を20点ピックアップし、なぜ怖いかについて歴史的・社会学的・文学史的・図像学的観点から解説している。
 中にはこじつけ的なものも少々あるのだが、ほとんどは知識欲を満たしてくれる内容で占められており、知識が派生していくのが興味深い。私も、クノップフの『見捨てられた街』という絵の解説から『死都ブリュージュ』という小説を読みたくなった。

khnopff.jpg
『見捨てられた街』クノップフ


 ちなみに、掲載されている20点中7点しか知らなかったというのは、元美大生としていかがなものかと思われる。西洋美術史は必修だったんだけどなぁ。知らなかった作品で言えばルドンの『キュクロプス』。母に疎まれた子供としての画家の心情が、身勝手で偏執的な愛し方しかできない幼稚なキュクロプスに反映されているそうな。前々から思っていたけれど、ルドンは私好みなのではなかろうか。画集が欲しくなってきた。

kyklops.jpg
『キュクロプス』ルドン


 "知っていた7点"の中には、大好きな絵のひとつであるブロンズィーノの『愛のアレゴリー』も含まれている。

amore.jpg
『愛のアレゴリー』ブロンズィーノ

 西洋美術に少しでも興味のある人には楽しい読み物となるだろう。絵画作品は図版付きで個別に解説されているので、ぱらぱらとめくって気になる図版の解説から読むというのも面白い。

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet at 08.10.12
中野京子
朝日出版社
売り上げランキング: 547


↓続編も発売されている。

怖い絵2
怖い絵2
posted with amazlet at 08.10.12
中野京子
朝日出版社
売り上げランキング: 1196

2008年2月22日

さいきんのわたくし

2/18
春めいてきた。
P2180002.jpg

2/19
 『酔いがさめたら、うちに帰ろう。(著・鴨志田穣)』を読了。
 アルコール依存症による吐血から何度も入院を繰り返す筆者は、ご存知、漫画家の西原理恵子さんの亡夫・鴨ちゃんである。度重なる吐血からついに閉鎖病棟に入院し、そこでの闘病記と私小説と告白の入り交じった作品である。淡々と綴られる全編に「どうでもいいや」という虚脱状態と「依存症から解放されて、家族のもとに帰りたい」という思いが交錯している。個人的には、登場回数こそ少ないものの、愛情のこもった妻の描写に切なくなった。
 残念なことに、刊行から半年後に著者は鬼籍に入る。死因は腎臓癌。発売当時、近所の書店で著者のサイン会が行われているのを見かけたことを思い出す。やつれた頬が痛々しかったけれど、にこやかな笑顔でファン一人一人にサインや声かけをしていた。私は気づかなかったのだけれど、傍らで西原理恵子さんが見守っていらしたとか。来月には遺稿集も出るらしい。

酔いがさめたら、うちに帰ろう。
鴨志田 穣
スターツ出版 (2006/11)
売り上げランキング: 77207

2/20
Dreamweaverの10周年イベントがあったのだが、業務の都合で行けず。

2/21
夜、ひさしぶりに新宿の刀削麺屋へ。

2/22
吉祥寺で打ち合わせが一件。甘党のライター某氏は「一人じゃ食べられないから」と苺クレープを召し上がっていた。

2008年2月23日

デザインのひきだし・4

 「うわ、いつの間に新刊が出ていたの!?」というわけで問答無用で『デザインのひきだし 4』を購入する。
 この雑誌(のフリした書籍)は毎号の内容がとてもツボすぎて、書店で表紙を見ただけで瞬時に脳汁が出まくってしまい、危うく公衆の面前で悶絶羞恥プレイを演じてしまいそうになる。印刷と紙と加工に萌える人にはたまらないシリーズだ。

 今回の特集は「折り・抜き・紙の加工」、個人的ストライクゾーンど真ん中である。前号の「コストに優しいおもしろ印刷」もかなり面白かったのだが、今号はさらにオカシイことになっている。だって、いきなり表紙にジッパー罫だし、綴じ込みの加工見本は表面がツヤツヤシルバーで裏面が真っ黒という美しい紙を使ってるし、なんてチャーミングなんでしょうか。

 紙媒体のデザイン仕事で、紙やインクだけでなく、加工まで自由に采配できる案件は稀である。ハードカバー書籍の装丁なら多少はそういう遊びもできるけれど、予算やスケジュールの壁に阻まれて、なかなかそうも行かないことが多いのではなかろうか。
 誤解を恐れずに書けば、広義のグラフィックデザインという意味ではwebも紙も同じなのだけれど、電気信号でモニタに映し出されるだけの“現象”と、実在して手に取って手触りや立体感まで含めて味わえる“存在”は、大きく違う。善し悪しではなくて、種類が違う。
 近年の私は、もっぱらwebデザインばかり手がけているので“存在”に飢えているのだろう。皮肉なことに、かつて紙の仕事ばかりしていた頃は、webをやりたくてヤキモキしたものだ。人間は、無いものねだりしてしまう生き物なのである。

 いずれ、『デザインのひきだし』で目にした加工や技術を使う日がやってきますように。

デザインのひきだし 4―プロなら知っておきたいデザイン・印刷・紙・加工の実践情報誌 (4)
グラフィック社編集部
グラフィック社 (2008/02)
売り上げランキング: 7037

2008年3月19日

『死の接吻』アイラ・レヴィン

 前知識ゼロで読み始めたら大正解だった。ブックカバーをかけて読んでいたので、裏表紙のあらすじすら未読のままで読み始めた。

 大富豪の三姉妹を相手に逆玉の輿を狙った男が、完全犯罪に失敗してしまうお話。舞台は第二次大戦後のアメリカの大学から始まる。
 「来ないの」「マジ!?」という意味の会話は、当時のアメリカでも現代の日本でも、学生生活には付き物である(頻繁に起こることではないけれど、私の学生時代にも周囲で2〜3の事例を聞いた)。

 そして起こる第一の殺人、章が変わったところで読者は著者が仕込んでいた「仕掛け」に気づく。
 「仕掛け」そのものが面白いので残念ながら、ここではそこについて言及しないけれど、久しぶりに「文学にしかできない仕掛け」に出会った。これは映像や漫画では難しいと思うよ。ラジオドラマでぎりぎり再現できるかな? 当時の読者たちにはさぞかしショックだったろうなぁ。
 後日、何度も映画化されたり、プロットをまねたTVドラマが作られて関係者が謝罪することになったりしたそうな。面白いものはみんなが放っておけないのである。

 「仕掛け」以外にも物語りの筋がわかりやすくて面白い。少しずつ視点が切り替わり、登場人物も少なくないのに混乱せず、どんどん読み進めることができた。
 美貌を最大限に活用して狡猾に世渡りをしようとする男、隙の多い富豪の令嬢、娘に金を与えるだけの父親、令嬢に心を寄せる“騎士”役の男、それぞれに今では一般的なキャラクターだけれど、それでも物語はまったく陳腐にならず、むしろ新鮮な驚きをもって読めた。
 「なにか面白い本ない?」と聞かれたら、真っ先におすすめしたくなる一冊である。

死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1)
アイラ・レヴィン 中田 耕治
早川書房 (2000/00)
売り上げランキング: 84089

2008年3月24日

『みなさん、さようなら』久保寺 健彦

 新聞の書評を読んで気になった本。少年期のトラウマが原因で、住んでいる団地から出られなくなった青年のお話である。

 同級生もたくさん住んでいて、生活にまつわる基本機能を敷地内に備えた団地は、主人公にとって安全で居心地のいい場所だ。彼は、初恋も初体験も初任給も、すべて団地から一歩も外に出ないまま得ることになる。
 でも、変わらないものなど何も存在せず、団地は年月の経過とともにゆっくりと寂れていくのだ。同級生は引っ越して行くし、建物も老朽化する。

 私自身も12歳まで団地で育った。母が出て行ったことをきっかけに、13歳で駅の近くの新しいマンションに引っ越した。初めての自分の個室に夢中になってからは、団地のことはまったく思い出さなかった。
 22歳で気まぐれに訪れた団地は既に取り壊しが決まっており、ほとんどが空室でとても淋しい光景の中にあった。
 かつて自分が住んでいた部屋のドアの前に行き、空室になっているのを確認して新聞受けから中を覗いた。玄関しか見えなかったけれど、壁も下駄箱も知らない色のペンキで塗られているけれど、そこは確かに私がいた場所だった。四畳半の台所、六畳二間の居室。狭かったが、父の象徴である壁一面の本棚は威圧感よりも安心感を与えてくれたし、母の抜群のセンスで居心地よくまとめられた室内は浴室まで植物にあふれ、客観的に見ても素敵な空間だった。
 そんなことが頭にあふれて、涙が出た。意識したことはなかったが、団地は私にとって「両親が揃っていた」幸せな時代の象徴だったのだ。もうあの懐かしくて愛しい部屋には入れない。あの頃には戻れない。父と母と私で過ごした、三人の幸せな暮らしは帰ってこない。
 かつて、鍵を隠していたガスのメーターの小扉を開けてみたが、もちろん鍵は無かった。私は逃げるように、自宅のマンションに帰った。残念ながら父はセンスがよろしくないので、マンションの中は団地ほどに居心地がよくない。もう、あそこには帰れないのだ。帰れない場所ならば、さっさと壊してしまえと、憎しみさえ抱いた。
 それ以降、団地はおろか跡地にすら行っていない。二度とあの周辺は通りたくないと思うようになった。

 というように、私にとって"団地"はかつての愛すべき拠り所だったのだが、敷地から出られない主人公にとっては世界そのものである。そんな大切な場所が滅びていく一部始終を目のあたりにせねばならないなんて、なんと辛いことなのだろう。
 読み進むにつれて悲しい気分が募っていったが、最後には救いがあったので良かった。私も、私の団地の跡地に行ってみたくなった。

みなさん、さようなら
久保寺 健彦
幻冬舎 (2007/11)
売り上げランキング: 116811

2008年4月 6日

さいきんのわたくし

4/2
 『アップルの法則』を読了。Macintoshを使い始めて12年、実は詳しく知らなかったAppleのプロフィールを知ることができた。ようやく「ジョブズが」とか「アメリオが」とか、そういう話題についていくことができそうです。
 Appleの、というよりスティーブ・ジョブズの"ものづくり"に対する考え方は、他の物事にも応用できそうだ。
 マニアックになりすぎず、かといって簡単になりすぎず、Appleのファンなら楽しめる一冊。

アップルの法則 (青春新書INTELLIGENCE 195)
林 信行
青春出版社
売り上げランキング: 6323


4/3
 めでたくも高木敏光氏の『クリムゾン・ルーム』の発売日である。まずは予約していたリブロ某店にて自分用の一冊を受け取る。会計を済ませて棚を見ると、おぉ、ちゃんと店頭に並んでいる! 感慨深いなぁ。
 昼からはリブロ青山店を起点に、ライター某氏と一緒に書店めぐりをしてみた。
 さすがに配本翌日ということもあり、まだ店頭に並んでいない店舗もあったけれど、陳列されている書店では平積みになっているところがほとんどだった。ゲーム本のエリアに並んでいる店があったのはご愛嬌、今後変わっていくことでしょう。
 いろいろな意味で応援している本なので、たくさんの人に読んでもらいたいと思う。どんな本かは公式サイトをご参照ください。

クリムゾン・ルーム
クリムゾン・ルーム
posted with amazlet at 08.04.07
高木 敏光
サンマーク出版
売り上げランキング: 37771


クリムゾンルーム公式サイト

4/4
 友人のベリーダンサー・Rititaに頼まれていたフライヤーのデザインをする。今月から開講されるベリーダンス教室の告知用である。
 ベリーダンスといえば、アラビック。だけどRititaのレッスンはラテン音楽やヒップホップの音楽も使う。アラビア音楽だけではなく、汎用性の高いかっこいいダンスを学べるとのこと。
 デザインのコンセプトは「ベタなアラビア風じゃなくて、ラテンでブラジルでポップな感じ」とのことで、好きなようにやらせてもらった。Rititaの反応もいい感じで嬉しい。フライヤーが校了したら、このblogでも紹介します。

4/5
 日中は仕事の絡みもあって、Movabletypeの4をいじる。恥ずかしながら、初めて触るMT4であります。テストがてらに自分のblogで導入してみたのだけど、CSSがバグって表示が左寄せになってしまった。ソース見ながらいじればすぐに直せるんだけど、めんどくさいので放置する。ま、追々ね。

 夕方、ケーキと紅茶を大急ぎでいただいたり、セーラー服のスカーフの結び方について20年前の知識をほじくりおこして説明してみたり。慌ただしかったけど、かわいい少女たちが、ちょっとずつ親しんできてくれて嬉しい。

 夜は、気持ちいい和食の店で楽しい宴会に参加した。阿鼻叫喚の花見客を見下ろしながら、テラス&こたつでくつろぐのは贅沢な気分である。
 またしても面白そうな本のタイトルを聞いてしまい、「読みたい本リスト」が増えてしまって嬉しいやら困るやら。
 会計の際、店員を呼んだ某社長が「決算お願いします」と素で間違えていたのが面白かった。

4/6
 昨夜の飲酒がたたって、なんだかグロッキーである。そんなことにはめげずに、朝のうちに一仕事こなす。自分で自分を褒めてルンルンする。

 夜、なにげなくTVをつけたらN響アワーをやっていた。
 映画「アマデウス」のテーマ曲としても有名なモーツァルトの交響曲第25番が、8種類のパートしかないことを知って驚く。弦楽器以外はオーボエ、ファゴット、ホルンだけというシンプルさ。もっと大編成だと思い込んでいたのに、こんな小さい編成であれだけドラマチックな音楽を作れるんだねぇ。
 クラシックは音楽を聞くだけでなく、時には目で見て楽しむのも有りだなと思った。

2008年5月16日

三国志男、打ち合わせ、見舞い、エクセル

5/13
 『三国志男(著・さくら剛)』を読了。三国志の名所や墓所を巡る一人旅の写真入り紀行文である。まるでblogを書籍化したような内容で、あっという間に読めてしまった。タイトルといい、しりあがり寿といい、狙ってるねぇ。
 普段、この手の書籍は読まないのだけれど、公式サイトを見てたら興味をそそられてしまった。PVの訴求力はすごいなと我が身をもって実感する。だって、面白そうなんだもの。本編よりも予告編の方が面白かったので、広告として成功してるでしょう。webでのリッチメディア配信が容易になったので、今後も書籍の映像広告というのは増えていくと思われます。
 本としては、せっかくの紀行ものなので写真がすべてモノクロというのが悲しかった。石碑の写真で、文字が読めなかったら意味が無いでしょう。Web連動で、写真のカラー版を見せてやるとか、なにか手は無かったのだろうか。企画が面白かっただけにもったいない。
 読了と相まって、四川省で大地震が起きる。今、バカ笑いして読んでいたあの場所が被災地になっているかと思うと複雑な気分だ。
 夜、柏木の息子になかなか電話が通じなくて困る。

三国志男
三国志男
posted with amazlet at 08.05.20
さくら 剛
サンクチュアリパプリッシング
売り上げランキング: 1332


5/14
 昼から打ち合わせが二件。ひさしぶりの大人数だったので、お名前の把握に苦労する。名刺というのは便利な存在だ。

5/15
 親戚の見舞いをハシゴする。複数の大動脈瘤により余命一年と言われている伯母は、認知症が進んで「私、なんの病気だったっけ?」とからりと明るい。
 5人きょうだいの長子である伯母は、数々の武勇伝を残している。賢く美しく、そしてからっとした性格のこの伯母が大好きだ。お願いだから、なるべく後から、なるべく苦しみが少なく、「そのとき」を迎えられますように。

5/16
 珍しくエクセルと格闘する。
 人生で初めてSUM関数というものを使ってみた。恥ずかしながら、今まで加算をする際に一つずつセルをクリックしていた。あの緊張を強いられる連続クリックは何だったのだろう。またひとつ、進化できて嬉しい。
 できあがったグラフ&表は、けして満足がいく出来とは言えないが、初めて作ったにしてはまずまずかなと思われる。Officeのスキルも上げていきたいものだ。

2008年6月19日

『マンチェスター・フラッシュバック』 ニコラス・ブリンコウ

読了したのは6/11。

 ロンドンで幸せに暮らしていた男が、過去と現在の二つの殺人事件のために、かつて男娼を営んでいたマンチェスターに引き戻されるというお話。二つの殺人事件は解決するのだけれど、いずれも真相は驚くべきものであったが、恐らくそれは本題ではないだろう。

 物語中、現在と過去が交互に登場する。かつてはハバを効かせていた人物の零落とか、浄化される前は薬とセックスの温床だった店とか、時間の経過による対比が印象的だ。映画『トレインスポッティング』とは時期も場所もずれるけれど、サッチャー政権下で労働者層が貧困と失業にあえいでいたイギリスがここにも表現されている。
 私が通う英語学校の先生・Samは、自分の故郷であるマンチェスターをイギリス第二の都市として栄えていて日本で言えば大阪のような街だという。主人公のジェイクを日本人に置き換えれば、堂山でゲイボーイをしていたが、現在は歌舞伎町のカジノ経営で成功しているといったところか。
 似た名前の登場人物が多いのと、80年代前半の大衆文化にまつわる固有名詞が頻出するので、少々混乱してしまった。音楽関係に顕著で、詳しければもっと楽しいのかもしれない。しかし、マンチェスターの風景や街の様子はSamから聞いているものと同じで、満足のいくものだった(もちろん、現在はもっと平和な街だろうけど)。

 原題は『Manchester Slingback』である。「slingback」とはいわゆるバックストラップの靴を意味する(サンダルやパンプスで、踵上部をベルトでぐるりと固定するアレである)。作中に登場するゲイの少年たちもおしゃれ用に好んで履いていて、象徴的なアイテムとなっている。馴染みがない言葉のせいか、邦題では「フラッシュバック」になっている。内容的にはどちらの単語でも意味が通じるので面白い。

 80年代のイギリスやロックが好きで、ゲイカルチャーに抵抗がなければおすすめできる一冊である。

マンチェスター・フラッシュバック (文春文庫)
ニコラス・ブリンコウ 玉木 亨
文芸春秋
売り上げランキング: 621854

2008年6月20日

『夜明けの街で』 東野圭吾

 読了したのは6/14。
 とても読みやすく、一日で読めてしまった。初めて読む東野圭吾作品でもある。
 平凡なサラリーマンの主人公が派遣社員の女性と不倫関係に陥り、なぜか15年前の殺人事件の真相に直面してしまうというお話。

 不倫関係の始まりは往々にしてこんなものだろうし、のめり込んでいく有様や涙ぐましい各種アリバイ工作なども、これぐらいして当然なのだろう。そういう意味では連続ドラマを見ているような楽しさがあった。肩肘はらず、深く考えず、話の続きを楽しみにするような楽しさとでも言おうか。
 私自身は女性なので、主人公の罪悪感や葛藤、都合のいい自己弁護などをニヤニヤしながら楽しんだ。読書スピードが早まったのはそういう理由もあるだろう。
 殺人事件の真相がわかるくだりになって、どんな種明かしがあるのかと期待していたら、連続ドラマのような拍子抜けするものだったので肩すかしをくらった。最近の連続ドラマでよく言われる「視聴者をひっぱるための謎」というか、さんざん気を持たせておいて、真相はこれかよというような空虚感。いや、そこ以外はとても面白かったんだけどね。
 しかし、最終章である33章は良かった。そうそう、ラストシーンはこうでなくては。ぞっとする男性読者も多いだろうけど、大半の女性読者はにんまりするのではなかろうか。
 巻末に収録されている番外編は蛇足だったように思える。主人公の友人の私生活なんて、彼の発言を見ていたらおのずと想像できるものだったろう。33章よりもぞっとさせてくれるのなら別だけど。

 本書の装丁は珍しいフランス綴じである。表紙の写真、用紙の選択、スピン(糸しおり)の色まで、丁寧にデザインされており、美しくて清潔感のある造本だ。「不倫+殺人事件」の物語にあえてこういう装丁を持ってくるのは、面白い皮肉だと思う。

 東野圭吾ファンの中では評価が低い作品らしいので、今度は別の作品も読んでみたい。

夜明けの街で
夜明けの街で
posted with amazlet at 08.06.24
東野 圭吾
角川書店
売り上げランキング: 15883

2008年6月24日

『クライマーズ・ハイ』、『犬身』、『イニシエーション・ラブ』

6/22
 『クライマーズ・ハイ(著・横山秀夫)』を読了。
 これで、映画版→ドラマ版→原作とすべてさらったことになる。事前に映像であらすじが頭に入っているせいか、登場人物が多いのに混乱せずに読めた。
 映画に入ってる要素と入ってない要素、ドラマに入ってる要素と入ってない要素、映像を先に見ておくとそれぞれに考えて取捨選択してるのだなと俯瞰して楽しめるのが面白い。

クライマーズ・ハイ
クライマーズ・ハイ
posted with amazlet at 08.07.01
横山 秀夫
文藝春秋
売り上げランキング: 1185


↓これがNHKのドラマ版。原作にかなり忠実である。

クライマーズ・ハイ
クライマーズ・ハイ
posted with amazlet at 08.07.01
アスミック (2006-05-12)
売り上げランキング: 310

6/23
 『犬身(著・松浦理恵子)』を読了。
 装丁がすてきだと思ったら、やはりミルキィ・イソベさんであった。
 祖父江慎さんが破天荒な装丁家だとすれば、ミルキィさんは美しく上品な変化球を繰り出す装丁家だと思う。お二人とも、大好きな装丁家である。

 書籍の内容は、最初の数ページに少しひっかかりがあったものの、後はぬるぬると物語世界に沈んで堪能することができた。ひさしぶりに、オタク用語で言うところの"キャラ萌え"してしまう作品に出会えて嬉しい。"彼"の登場する作品をもっと読みたくなった。
 『親指Pの修業時代』もそうだったけど、松浦理恵子の作品の中には「絶対に彼氏には読ませたくない!」と思える文章が、こっそりと挿入されている。女の本音なのか、私の深層心理なのかはわからないけれど。

犬身
犬身
posted with amazlet at 08.07.01
松浦 理英子
朝日新聞社
売り上げランキング: 7740


6/24
 『イニシエーション・ラブ(著・乾くるみ)』を読了。
 「最後の二行に驚愕する!」との前評判通り、確かにおぉっと驚いた。途中で変だなと思ったところは、やはり「仕掛け」がある箇所だった。
 具体的にはある登場人物の"したたかさ"にゾワッとするのだ。現実にあり得そうだし、それほどに軽く倫理感をコントロールできるのが現代の若人らしくて恐ろしい。綿密に作ってある小説だなと思った。

イニシエーション・ラブ (文春文庫 い 66-1)
乾 くるみ
文藝春秋
売り上げランキング: 3228

2008年7月 9日

旅の途中で読んだ本。

 英国旅行の途中で読んだ本を簡単に。後ろの2冊はロンドンに置いてくる前提で買ったので、母が読んでも楽しめそうという観点で選んでいる。


『さまよう刃』 東野圭吾

 友人の編集K嬢に「東野圭吾の『夜明けの街で』はイマイチだった」と話したところ、絶対面白いと推薦された本である。
 娘を殺された父親が犯人を追いつめて復讐するサスペンス小説だ。私自身が父子家庭の一人っ子ということもあってか、父親の哀しみに感情移入しやすかった。少年犯罪、少年法、被害者の遺族の憤りなど、いろいろなテーマが盛り込まれている。
 途中の暴力的なシーンは、読むのが辛くなるぎりぎりと言えよう。あれ以上描写されると読むのやめてしまったかもしれない。
 続きが気になって、往路の飛行機で夢中になって読んでしまった。最後のどんでん返しは、「そこがどんでん返されるのか!」と意外な部分だったので、驚くと同時にとても面白かった。

さまよう刃 (角川文庫 ひ 16-6)
東野 圭吾
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 102


『卵の緒』 瀬尾まいこ

 母親と子供を描いた小説が2作収録されている。いずれもほんわかと優しい気分になれるステキな作品だ(上記、『さまよう刃』で眉間に刻まれた皺をほぐすのにちょうどよかった)。
 表題作に登場する母親がとてもかわいらしかった。私の母もかわいらしいひとなので、ついつい重ねて読んでしまった。

卵の緒 (新潮文庫 せ 12-2)
瀬尾 まいこ
新潮社
売り上げランキング: 5968


『日本の昔話』 柳田国男

 正直に書くと、"新潮文庫の百冊"キャンペーンに惹かれて買ってしまった一冊。
 知っているようで知らなかった日本の民話がてんこもりに収録されている。情けないようなオチや、笑える話もたくさん入ってい楽しい。ひとつの物語りが1〜2ページと短く、移動時間中や寝る前に読むには都合がいい本だ。
 残念ながら半分ぐらい読んだところで帰国してしまったので、後半の半分は読めず。

 個人的には、漁師に狙われた猿を助けた優しいおじいさんが、お礼にもらった宝物を盗まれる話が笑えた。
 おじいさんは飼い猫のタマに宝物を探し出すように命じ、「見つけられなかったら、これだ」と包丁をぎらつかせる。タマも同様にネズミに向かって「見つけられなかったら食べてしまうぞ」と脅す。結局、ネズミが無事に宝物を見つけることに成功し、おじいさんもタマもネズミもみんなが幸せになりました、めでたしめでたし。猿を助けた心優しいはずのおじいさんが、突然猫を脅す豹変ぶりがたまらない。


日本の昔話 (新潮文庫)
柳田 国男
新潮社
売り上げランキング: 27339

2008年8月14日

悪果、イントゥ・ザ・ワイルド、おくりびと、崖の上のポニョ

なんだかんだとバタバタしているうちにまたしても一週間が過ぎてしまったのであった。本とか映画とか、じっくり感想を書くタイミングを逃している。

以下、ミニ感想。

《読んだ本》
『悪果』 黒川 博行・著
舞台は大阪で主人公はマル暴担当の刑事、悪人しか出てこないハードボイルド小説。ヤクザの賭場に強制捜査をする前半も面白いのだけれど、その背後にある大きな陰謀が明らかになっていく後半は読むのをやめられないほどのめりこんだ。
警察もヤクザも癒着しまくりで、全員が程度の多少はあれど私利私欲のために行動している。その徹底ぶりがまた痛快だった。
タイトルの『悪果』は"悪事の果て"であり、ラストはニヤリとさせられる。

悪果
悪果
posted with amazlet at 08.08.16
黒川 博行
角川書店
売り上げランキング: 20220


《観た映画》
『イントゥ・ザ・ワイルド』 http://intothewild.jp/
成績優秀だった若者が自分を捨てるために旅に出て、餓死寸前に人生で一番大事なことを知るというロードムービー。実話だというので驚いた。
アメリカからヒッチハイクしながらアラスカへ。たくさんの人たちの優しさを受け取りながらも、それでも一人になる道を選ぼうとする主人公。強がりではなく、本気で自分は自分だけで生きて行けると思っていたんだね。
劇中、彼はずっと日記を書いている。死の寸前、彼は大切なことは何だったかに気付き、それは最期のメッセージの署名にも表れていた。
上映時間が長く、しんどい描写もあるので、観に行く場合は万全の体調で臨むべし。

『おくりびと』 http://www.okuribito.jp/
東京でチェリストの道を諦めて実家の山形で納棺師になった主人公のお話。納棺師は遺体を棺におさめるという実在の職業である。広末涼子には賛否両論ありそうだけれど、本木雅弘演じる主人公はとても良かった。
人が死ぬこと、死に穢れを感じること、親と子のこと、普段は気にしない事柄を考えさせられる内容のいい映画だった。
余談1:本木雅弘の子供時代を演じている少年はKの友人で、私も知っている子だ。
余談2:眼鏡をかけた山崎努が実家の父と雰囲気そっくりで気になった。

『崖の上のポニョ』 http://www.ghibli.jp/ponyo/
問答無用のスタジオ・ジブリの新作アニメーション映画である。ストーリー性を期待すると肩すかしを食らうので、何も考えずに観に行くのがよさげ。
友人から聞いていた「ポニョはストーカー」「宮崎駿の変態性大爆発」という評価は正しかった。ポニョはかわいいだけでなくてグロくなったりするので要注意。
でも、絵はよかったよ。カラフルな「海の生き物オンパレード」は美しかったし、瀬戸内海がイメージされている風景は新鮮だったし。
声優としての矢野顕子の使い方が、あまりにも贅沢でおかしい。

2008年10月23日

日本史を理解したい

 今日は一歩も家を出なかった。ここ数日の外出の多さの反動である。とはいえ、やることも色々あるので至福の時間を過ごせるわけでもなく。
*至福の時間 = 本を読みながら布団でうたたね。

 夕飯に、Mさんからいただいたサツマイモを使って牛乳仕立てのスープを作った。
 ほっこりと優しい味になって嬉しい。まだ2本残っているので、どう使おうか考え中。おかずに使いたいので、そうなると煮物かな? なんとなく、洋風な料理に使ってみたい気がする。

 そういや、そろそろ『レッド・クリフ』のサントラが発売じゃなかったっけ? 明日は近所のCD屋に行くしかない。音楽だけ聞いてても完成度高いのでおすすめ。

レッドクリフ Part1 オリジナル・サウンドトラック
岩代太郎 alan
エイベックス・エンタテインメント (2008-10-24)
売り上げランキング: 3644


 どっぷりと三国志読書にハマりたい気分もするが、まずは図書館で借りてる本を読んでしまわなければ。
 引き続き読んでいるのは『のぼうの城』。戦国時代については無知に等しいので、いろいろと知らないことがわかって面白い。北条氏と後北条氏っていうのがあるのね。籠城っていうのは戦法として有効なのかしら。
 恥ずかしながら、伊達政宗も武田vs上杉もよくわかっていないのだ。部分ごとでいいので、日本史もちょっとずつ理解していきたい。学校で学んだはずなのに、すっぱりと記憶から抜け落ちているのが情けない。
 知ってる日本史といえば、聖徳太子のあたりと平安時代。『源氏物語』と『日出処の天子』の影響受けまくりなのがバレバレである。

↓こういうのを読めば戦国時代もわかるのかしら。

目からウロコの戦国時代―史料から読み解く武将たちの真相 (PHP文庫)
谷口 克広
PHP研究所
売り上げランキング: 96562
おすすめ度の平均: 4.5
5 資料に忠実な良書
5 歴史上の真偽、多くの学説が面白い。
5 より庶民的な視点で...
5 大河ドラマだけでは不満な方へ
4 事実はどこ?

2008年10月24日

『のぼうの城』和田 竜

公式サイト:http://www.shogakukan.co.jp/nobou/

 戦国時代、湖に囲まれた忍城(おしじょう)を舞台として、攻城側と籠城側が繰り広げる人間ドラマである。
 攻めるは石田三成率いる2万の豊臣軍、対して忍城を守るのは家臣と農民兵も合わせてたったの3700人。総大将である「(でく)のぼう様」こと成田長親は、大軍勢と水攻めに対してどう抗戦したのか。

 作中にあふれているのは、坂東武者と呼ばれる忍城軍の剛毅さ、あくまでも武士としての美学と誇りを尊ぶ三成の姿勢、背後に大きくそびえる秀吉のとんでもないスケール感である。
 この作品は映画化を前提とした脚本を小説に書き直したものだ。そのせいもあって、映像的な光景の描写や、登場人物のキャラクター造形の面白さと際立たせ方がとてもはっきりしている。
 作品を輝かせているスペクタクル感と男気あふれるかっこいい人物の魅力は既視感があり、漫画の『蒼天航路』がそうだったと気付いた。この小説も全編が迫力と爽快感に満ちている。

 個人的に惜しかったのは二カ所。
 ひとつは数多の書評や感想blogでも指摘されているように文中に作者による現代視点の時代背景の解説がたびたび挿入されること。私のように歴史の知識が無い人間には読書の手がかりとして役だったのは事実だけれど、のめりこんでいた気分が興ざめしてしまった。作者が新聞記者だったことが影響したのかもしれない。
 もうひとつは女性を描くのがあまり得意な作者ではないらしく、紅一点の甲斐姫がくだけた場面になると途端にライトノベルのような軽薄なキャラクターになってしまうことだ。シリアスなシーンでは凛としてかっこいい戦う美姫だったので、残念である。

 とはいえ、戦国時代についての知識に乏しい私でも、夢中になって読んだ作品だった。エンターテイメントとしてはとても優れていると思う。
 戦国時代好きだけでなく、漢(おとこ)に惹かれる人にもおすすめの一冊。

 装画は人気漫画家のオノ・ナツメ。特色の多色刷りに見えて、実はプロセスカラー+銀で刷られた表紙も地味にかっこいい。
 『美味しんぼ』の花咲アキラによる漫画版がビッグコミックスピリッツ誌で連載中とか。映画化も含めてメディア展開が楽しみな作品だ。

のぼうの城
のぼうの城
posted with amazlet at 08.10.27
和田 竜
小学館
売り上げランキング: 265

2009年11月23日

さいきんのわたくし

気付けば11月も後半に入り、すっかり冬でございます。
このblogもいい加減に放置しすぎねぇ。

●通勤の読書は北方三国志
官渡の戦いが終わり、太史慈も戦死したあたり。そろそろ孔明も出て来るだろう。
時々「仕事に活かす三国志」といったビジネス書が出てるけど、確かに三国志は仕事の人間関係に役立つことが多いと思う。
「丞相は、軍事でも民政でも、抜きん出た力をお持ちです。ご自身と同じものを、部下に求められてはなりません。外からはそれが窮屈に見え、内の者は萎縮いたします」
しかり、しかり。

↓上記、程イクの台詞が登場するのは6巻。

三国志 (6の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)
北方 謙三
角川春樹事務所
売り上げランキング: 37550


●お買い物
 会社に着ていく冬用の衣類が足りないのでちょこちょことお買い物をする。ジャケットっぽいカーディガンとか、スカートとかコートとか。
 まだまだオフィスファッション風コスプレは楽しい。すっかりスカート派になってしまい、模様入りタイツを楽しんでいる。
 クレジットカードのポイント制度の存在に気付き、そのあたりも今後は活用してみようかな。

●スタッフが増えた
 秋口からやむをえない事情でスタッフの入れ替わりが激しかったけれど、ようやく落ち着いてきた。特に、先月からやってきたオーストラリア出身の彼はとても有能で頼もしい。年下なので、無駄にドキドキしないで済むのが良い。
 今の職場には「あなた、私より年上だったら危険だったわ」「あなた、私が既婚者でなければ危険だったわ」といった魅力的な男性が多くて目と心の保養になっている。
 ほんと、年下のすてきな男性陣の存在は、仕事の張りになるのでいいものです。

●そんなこんなで会社は楽しいよ
 会社員に戻って、半年以上が経過したけれど、未だに会社や仕事への愛着を維持し続けている。新卒の頃は3ヶ月で嫌気がさしていたのに、不思議なものだ。
 詳細は書けないけれど、フリーランスだった経験がいい意味で活きているような気がする。会社勤めだけを続けていた人とは、確実に違う感覚がある(善し悪しではなく、感覚の違いね)。

About books and magazines

ブログ「inagaki-log」のカテゴリ「books and magazines」に投稿されたすべてのエントリーのアーカイブのページです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のカテゴリはarts and designsです。

次のカテゴリはdiaryです。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type 4.1