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『バーン・アフター・リーディング』 Burn After Reading

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(2008年 アメリカ) 監督:コーエン兄弟(イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン)
公式サイト:http://burn.gyao.jp/

 試写会にて鑑賞。完成披露試写会ということもあってか、有楽町・日劇1が会場だった。映画館での試写会は椅子もスクリーンも音も最高なので楽しい。

 監督がコーエン兄弟で、ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ティルダ・スウィントンと豪華な顔ぶれだけれど、やはり私のお目当てはジョン・マルコヴィッチ! 『仮面の男』以来、一番愛しているハリウッド俳優といっても過言ではない。

 今回のマルコヴィッチが演ずるのはアル中が原因でクビになった元CIA捜査官である。クビになった腹いせに暴露本まがいの自伝を出版しようとするも、文才が無いので遅々として進まず。 女医の妻はどうやら不倫しているようだし、毎日が苛立たしく、今日もウォッカやテキーラをグラスに注いでリビングで沈没してしまう。

 そんなマルコヴィッチの"原稿"が入ったCD-ROMが、ひょんなことから筋肉バカのフィットネスクラブのインストラクターの手に渡る。筋肉バカを演じるのはブラッド・ピット。これがまた、本気でバカキャラで、頭の中は筋肉とプロテインのことしか考えていないのだ。

「このCD-ROMを持ち主に届けてあげたら、きっとお礼をくれるに違いない!」
「バカね! お礼なんて生温いわ!」

 そう言って筋肉バカからCD-ROMと恐喝の主導権を奪ったのは同僚のオールドミスである。彼女は長年恋人に恵まれず、出会い系サイトで男を物色する毎日を過ごしている。しかし、せっかく出会っても妻帯者で遊び目的だったりとなかなか運命のパートナーに出会えない。そこで心機一転、全身整形に踏み切りたいと考えているのだ。もちろん、恐喝は手術資金調達のためである。

 頭が回らない筋肉バカに恐喝の指令を下しながら悪戦苦闘している彼女の前に、これはという男性が出現した。
 それが、ジョージ・クルーニー演ずるアレルギー持ちの連邦保安官である。なぜか、情事の後にジョギングをするという奇癖を持っている(むしろ、ジョギングするためには情事を行っているふしがある)。
 ハンサムな顔で「妻とは15年別居しているんだ」と嘘くさい台詞を吐く連邦保安官に、オールドミスはもうメロメロだ。彼が、ある女医と不倫を楽しんでいることも知らずに......。そう、マルコヴィッチの妻の不倫相手とは、連邦保安官だったのだ。
 5人の思惑は馬鹿馬鹿しくも複雑に絡まりあい、最後にはどうしようもない悲喜劇を招いてしまう。

 女医である妻を演じているのはティルダ・スウィントン。クールで知的なイメージで、映画『オルランド』で知ってから好きな女優の一人である。

 コーエン兄弟は、ティルダ・スウィントン以外はアテ書きで脚本を書いたらしい。それが功を奏し、どの登場人物もいちいちクセモノで生き生きとしている。
 そこに、コーエン兄弟独特の皮肉めいた色がまぶされて、大笑いする中にも苦笑いが混じる面白いクライム・コメディに仕上がっていた。

 私の視線はどうしてもハゲ頭の血管が切れそうなほどに激怒するマルコヴィッチに注がれてしまうのだが、「素じゃないの?」と言えるほどにバカキャラを徹底しているブラッド・ピットも良かった。ハリウッド映画の「ハンサム・ブラピ」に食傷気味の方には、ぜひ観てもらいたい。
 また、この映画を見るまでは知らなかったのだけれど、オールドミスを演じているフランシス・マクドーマンドが、日本で言うところの「負け犬」っぷりを見事に演じていた。マクドーマンドはコーエン兄と結婚しているんだそうな。なるほど、自分の妻だからこそ女優本人に遠慮なく、みっともない負け犬を演らせられるんだなと感心した。

 そうそう、日本になじみのエピソードで、ひとつだけ注釈を。
 映画の中で登場人物が不意打ちで封筒を渡されてしまうシーンがある。これは、裁判所からの召還命令書であり、これを受け取ることは離婚調停の開始を意味する。受け取りを拒否する人も多いので、アメリカではこの命令書をいかに配偶者に受け取らせるかが弁護士の腕でもあるらしい。

 上映時間は96分と短かかったけれど、観終わってみると充実感たっぷりで、とても満足できた。

4月24日から全国ロードショー。

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2009年1月22日 23:07に投稿されたエントリーのページです。

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