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戦国時代、湖に囲まれた忍城(おしじょう)を舞台として、攻城側と籠城側が繰り広げる人間ドラマである。
攻めるは石田三成率いる2万の豊臣軍、対して忍城を守るのは家臣と農民兵も合わせてたったの3700人。総大将である「(でく)のぼう様」こと成田長親は、大軍勢と水攻めに対してどう抗戦したのか。
作中にあふれているのは、坂東武者と呼ばれる忍城軍の剛毅さ、あくまでも武士としての美学と誇りを尊ぶ三成の姿勢、背後に大きくそびえる秀吉のとんでもないスケール感である。
この作品は映画化を前提とした脚本を小説に書き直したものだ。そのせいもあって、映像的な光景の描写や、登場人物のキャラクター造形の面白さと際立たせ方がとてもはっきりしている。
作品を輝かせているスペクタクル感と男気あふれるかっこいい人物の魅力は既視感があり、漫画の『蒼天航路』がそうだったと気付いた。この小説も全編が迫力と爽快感に満ちている。
個人的に惜しかったのは二カ所。
ひとつは数多の書評や感想blogでも指摘されているように文中に作者による現代視点の時代背景の解説がたびたび挿入されること。私のように歴史の知識が無い人間には読書の手がかりとして役だったのは事実だけれど、のめりこんでいた気分が興ざめしてしまった。作者が新聞記者だったことが影響したのかもしれない。
もうひとつは女性を描くのがあまり得意な作者ではないらしく、紅一点の甲斐姫がくだけた場面になると途端にライトノベルのような軽薄なキャラクターになってしまうことだ。シリアスなシーンでは凛としてかっこいい戦う美姫だったので、残念である。
とはいえ、戦国時代についての知識に乏しい私でも、夢中になって読んだ作品だった。エンターテイメントとしてはとても優れていると思う。
戦国時代好きだけでなく、漢(おとこ)に惹かれる人にもおすすめの一冊。
装画は人気漫画家のオノ・ナツメ。特色の多色刷りに見えて、実はプロセスカラー+銀で刷られた表紙も地味にかっこいい。
『美味しんぼ』の花咲アキラによる漫画版がビッグコミックスピリッツ誌で連載中とか。映画化も含めてメディア展開が楽しみな作品だ。
