熟睡して朝7時に起床。母は午前中仕事とのことで、昼までは家で無線LANの設定をはじめとするノートPCのセッティングをやっていた。プリンタもつながったし、あとはスキャナぐらいかな。スキャナの現物が見つからなかったので、母の帰宅を待つことにする。
午後2時頃に母が帰宅。遅めの昼食を取りながら、午前中の作業の進捗を伝える。それでは、というわけで1階の母のアトリエで新しいノートPCの使い方を説明した。
以前はXPを使っていた母は、Windows Vistaには臆することなくちょこちょこと触りはじめた。母にとってはVistaになったことよりも、長年使っていたThinkPadのトラックポイントが無くなったことの方が重大だったらしい。ヘソじゃないから使いにくいわ、とつぶやきながらマウスを触っている。
時間になったので街に出かけることにした。前回のblog作成の時といい、母は私がロンドンに来るとすぐに遊びの予定を入れたがる。今回もこっそりと芝居のチケットを買っていたらしい。
向かったのはロンドンの中心地・SOHOにある、Soho Theatreである。開演まで時間があったので、劇場近くのパブで母と軽く一杯。もう18時だというのに、まだまだ明るいのは高緯度のせいだろう。いい天気のせいか、どこのパブも路上に人があふれるほどに盛況だった。
「あんな風に道で飲むなら、わざわざパブに行かなくてもそのへんで缶ビールを買ってくればいいじゃん」
「この国の人は缶ビールは好きじゃないし、あの雰囲気が楽しいのよ」
パブにはおおむね二種類あり、いわゆる伝統的な食べ物と内装のかっちりした店と、音楽が大音量で鳴っているクラブ風の店だ。当然、後者の客層の方が年齢層がぐっと若くなる。また、いわゆるゲイの集会所になっているのも、後者の店が多い模様。

ほろ酔いのいい気分になったので、劇場に入ることにした。白い壁とアルミニウムの柱で構成されたミニマルモダンな建物である。座席数140だそうで、小劇場としても小さい規模だ。

演目は野田秀樹の作・演出による『The Diver』。こんな規模で、こんな間近で野田秀樹と彼の芝居を見られるなんて、日本では考えられない贅沢である。客層は在英の日本人ファンが多いのかと思いきや、ほとんどが英国人だったので驚く。野田秀樹作品が英国で上演されるのはこれで二回目だそうで、ファンが増えているのかもしれない。
出演する役者は野田秀樹を含めて4人だけ。野田以外の3人は英国人であり、当然ながら全ての台詞は英語である。
能楽の葵上(源氏物語)や海人をもとに、現代の東京で起きた殺人事件の真相がだんだんと明らかになっていくという内容だ。タイトルの『The Diver』は、海人から来ているのだろう。
三方を障子に囲まれた舞台にはソファと机と椅子だけという、シンプルな道具だけで構成されている。野田MAP作品とは違った簡素な衣装も、役者と芝居だけを浮かび上がらせるのに役立っている。役者の体と舞台全体を余すことなく使いきるところは、外国で上演されているといえども野田秀樹作品の特徴そのままだ(と言えるほど、たくさんの野田芝居を観たわけではないけれど)。野田秀樹特有の言葉遊びが使えないので、より"動き"が強調されることとなったのだろう。
そこで問題になるのが私の英語理解力である。理解できたのは、おおむね半分強といったところだろうか。もっと英語を勉強しないとなと、何度目かの英語への熱意が再燃した。
半分の台詞しかわからないけれど、源氏物語という題材を比較的よく知っていることもあって、楽しむことができた。演劇を舞台で観るのもひさしぶりであり、なんだか自分も「何かをつくる」ことをしたいなと刺激される。
帰宅して、劇場で買った脚本をまとめた本を読んだ。とあるシーンが『雨夜の品定め』のアレンジだったと知って、大いに驚く。脚本を読んでからもう一度観てみたいけれど、日本ではチケット入手が難しいだろうなぁ。
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