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『マンチェスター・フラッシュバック』 ニコラス・ブリンコウ

読了したのは6/11。

 ロンドンで幸せに暮らしていた男が、過去と現在の二つの殺人事件のために、かつて男娼を営んでいたマンチェスターに引き戻されるというお話。二つの殺人事件は解決するのだけれど、いずれも真相は驚くべきものであったが、恐らくそれは本題ではないだろう。

 物語中、現在と過去が交互に登場する。かつてはハバを効かせていた人物の零落とか、浄化される前は薬とセックスの温床だった店とか、時間の経過による対比が印象的だ。映画『トレインスポッティング』とは時期も場所もずれるけれど、サッチャー政権下で労働者層が貧困と失業にあえいでいたイギリスがここにも表現されている。
 私が通う英語学校の先生・Samは、自分の故郷であるマンチェスターをイギリス第二の都市として栄えていて日本で言えば大阪のような街だという。主人公のジェイクを日本人に置き換えれば、堂山でゲイボーイをしていたが、現在は歌舞伎町のカジノ経営で成功しているといったところか。
 似た名前の登場人物が多いのと、80年代前半の大衆文化にまつわる固有名詞が頻出するので、少々混乱してしまった。音楽関係に顕著で、詳しければもっと楽しいのかもしれない。しかし、マンチェスターの風景や街の様子はSamから聞いているものと同じで、満足のいくものだった(もちろん、現在はもっと平和な街だろうけど)。

 原題は『Manchester Slingback』である。「slingback」とはいわゆるバックストラップの靴を意味する(サンダルやパンプスで、踵上部をベルトでぐるりと固定するアレである)。作中に登場するゲイの少年たちもおしゃれ用に好んで履いていて、象徴的なアイテムとなっている。馴染みがない言葉のせいか、邦題では「フラッシュバック」になっている。内容的にはどちらの単語でも意味が通じるので面白い。

 80年代のイギリスやロックが好きで、ゲイカルチャーに抵抗がなければおすすめできる一冊である。

マンチェスター・フラッシュバック (文春文庫)
ニコラス・ブリンコウ 玉木 亨
文芸春秋
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2008年6月19日 02:43に投稿されたエントリーのページです。

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