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法事と納骨

法事で名古屋へ泊りがけで出かける。とてもとても寒い日だった。

今回の法事は祖母ちゃんの○回忌というのもあるけれど、主な目的は納骨である。一昨年天寿を全うした祖母ちゃんの遺骨は、今のいままで仏壇の前の骨壺に入ったままだったのだ。

本当は去年納骨する筈だったらしいが、墓石に祖母ちゃんの名前が刻まれていないことが直前になって発覚、ぼんさんが「名前の無い人のお骨をおさめるわけには参りません」と納骨を拒否、一年経過してようやく埋葬のチャンスがやってきた。

まずは祖母ちゃんの家でお経をあげてもらう。祖父もかなり前に他界しているので、この古い古い祖母ちゃんの家は、実は誰も住んでいないのだ。法事の度に親族はこの無人の家に集まり、少しだけ賑やかになる。やってくるのは叔母たちをはじめ、従兄弟、従姉妹、そしてかれらの息子と娘。祖母ちゃんからするとひ孫にあたる。

日蓮宗のお題目は有名な“南無妙法蓮華経”。祖父の葬儀から代替わりした若いぼんさんの声は、ろうろうと祖母ちゃん宅の8畳間に響き渡る。私は脚のしびれをこらえながらも、それに耳を澄ませる。ほとんどはカタカナで聞こえてくるお経、漢字で聞こえるのはほんの一部だ。

何度かこのお経を聞いているのだが、思い出せるのは最初に「諸仏の功徳を持って…」「稲垣家先祖代々の…」「ひとたび妙法蓮華経と唱えれば…」、中盤に「百千万億那由他アーソ−」というなんだか激しく莫大な数字。焼香盆が回って来て、参加者全員が焼香する(多分、部屋が狭いから盆を回すのであろう)。私はいつもパチパチと音がはぜるぐらい盛大に抹香をつまんでのせている。そして最後にお題目を唱えまくり、仏壇の位牌の戒名(推定4〜5人分)を全部読み上げてくださる。
※そうそう、木魚を叩くリズムも二通りある。カッカッカッカッと四分音符で叩くやつと、カッカッ・カカッと二拍目が付点四分音符になるやつ。祖母ちゃん家の木魚はポクポクではなく、カッカッと、とても硬い音がする。

お経はおよそ30分か1時間ぐらいだろうか。終るとお礼を言ったりお車代を渡したりなんとかかんとか。ふつうはその後ありがたいお話しがあったりするのだが、今日は「この後予定が詰まっとるもんだで、出かけましょう(名古屋弁)」というぼんさんの意向により、すぐに一同で墓地へ。墓地は名古屋市内の八事(やごと)という場所にある。八事には確か火葬場もあった筈で、祖母ちゃんも祖父ちゃんもそこで荼毘にふされている。

今日は納骨するので骨壺大小を白い風呂敷に包み、仏壇の横に準備してあった○回忌の卒塔婆も持って行く。施主である父がさっさと車に乗り込んだため、両方を私が持って行くハメに。お父さん、あなたの母親でしょうが!

せっかくなので卒塔婆をしげしげと観察。白木のフチが飾りになっており、戒名が美しい筆文字で書かれている。これを書くのは職人さんなのかぼんさんなのか考えているうちに墓地へ到着。

ぼんさんがお経をあげる前に納骨準備をする。皿に塩を持って墓石の横に置く。お骨は白い布袋に入れるようにぼんさんからの指示。木箱や包みから白い陶器の骨壺を出して袋に入れようとすると、ぼんさんから「これこれ、壷は入れちゃいかんよ(名古屋弁)」と指導。まさかと思ったが、なんと布袋にお骨をどさどさっとそのまま入れるようだ。骨壺に入れて納骨すると土に還らないからということらしい。祖母ちゃん、骨いっぱいあっていいね。そう、祖母はなんでも自慢するのが大好きだったので、きっと遺骨の量も多いと嬉しいんじゃなかろうか。でも、納骨が一年遅れたことは怒ってるかもなあ。ごめんね、私を含むよくわかってない遺族ばっかりで。

準備もできたのでぼんさんのお経開始。仏壇の前ではいつも黄色いお経を見ながら読経してくださるが、お墓の前ではなんだかさらにサンスクリットな響きたっぷりのエスニックなお経だった。ぼんさんは激しく読経しながら墓石に塩をかける。そして施主の父に合図していよいよ納骨。墓石の前の石をゴトっと外し、中の穴に遺骨袋をポトリと入れる。私は見えなかったのだが、叔母の話しによると10年近く前に葬った祖父ちゃんの袋はもう破けていたそうだ。土に還るんだね、祖父ちゃん。

ぼんさんがみんなに火のついた線香を配り、順番に線香を供えてお墓に水をかける。以前亡くなった義理の叔父の宗派では、墓石の上から水をかけてはいけないとなっていたので、なんとなく上から水をかけるのをためらう一同。そんなことは関知せずに盛大に上から水をかけるぼんさん。

線香を供え終わって、無事に納骨終了。みなさんお疲れさまでした。祖母ちゃんもゆっくりしてください。ぼんさんはさっさと次の用事のために去り、我々は骨壺等を墓地内の所定の場所に捨てに行く。

本当は卒塔婆を墓石の後ろあたりに立てておかねばならないのだが、一面コンクリでかためられているので刺せるような地面が無い。叔母いわく「そういえば墓石にヒモでくくりつけてるお墓があった」とか、それはいくらなんでもちょっとねえ。石屋さんに頼むと卒塔婆を立てるミゾを掘ってくれるらしいが、施主(つまり私の父)の一声「まあいいんじゃない、横に倒しておけば」により、そのまま横に倒して放置することになった。いいのか?それでいいのか?私は面白いのでOKだが。
※後日叔母たちが来て回収してくれるらしい。

まあ、そんな具合だから、祖母ちゃんが死んでからというものぼんさんがなんだか愛想悪くなったんだろうなあ。施主からして不信心極まりない。読経中に上着の汚れを落とそうとハンカチ出してるし。

そんなこんなでもろもろ終ったので、法事後恒例のカニ屋へ。毎度おなじみカニ会席。おいしゅうございました。なぜカニ屋かというと、祖母が存命中のいつぞやの新年会でたまたま行ったところ、なぜか全員が気に入ったからだと思われる。

朝から始まった法事が終わり、新幹線に乗れたのは夕方16時だった。さて、帰ってから仕事するかなと思いつつ、とりあえず車内でアイスクリームを食べたのであった。

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2006年2月18日 23:18に投稿されたエントリーのページです。

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