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英国旅行八日目:ビアズリーの続きと『ダ・ヴィンチ・コード』

さて、今日は朝からV&Aへ。もちろん昨日の続き。
昨日よりも某部屋のセキュリティは厳しくなっており、
手持ちの荷物を全てクロークに預けて来いと言われる。
昨日と同じカバンなんだけどな。
しかし、貴重な美術品が盗難されても困るので素直に従う。

昨日で勝手がわかったので、サクサクと閲覧希望用紙に書き込む。
恐らくは8箱ぐらいお願いしたのではなかろうか。

あぁ、たまらない。
Yellow Book、SAVOY、名言集、キーノーツ、そしてサロメの原画。
希少本も、もちろん自分の手で全ページめくっていいのさ。

今日の係員は長身でヒゲの初老の白人男性だった。
頭が少しはげており、厳格だが優しそうだ。
一箱見るたびに新しい箱を持ってきてくれる、
その片腕の、肘から先が義手だと気づくのには時間がかかった。
それほどスムーズに箱を運んでくれるのだ。

しかし、今日見るべきは器用な義手ではなくビアズリー。
集中力を取り戻すと、めくるめく時間はあっという間だった。
気づけばそろそろ移動の時刻。
後ろ髪ひかれつつ、また来るからねと心の中でつぶやいてV&Aを後にした。

午後の予定は14時にTemple駅に行くところから始まる。
ロンドンにあまたあるウォーキング・ツアーのひとつ、
「LONDON & THE DA VINCI CODE」に参加するためだ。

ロンドン市内では毎日様々なテーマでウォーキング・ツアーが開催されている。
運営しているのはその名もLondon Walkという会社。
例えば、こんなテーマで。

「切り裂きジャックを捕まえろ」
「オスカー・ワイルドのロンドン」
「ロンドン・パブ巡り」
「ホーンテッド・ロンドン」
「誰も知らないウエストミンスター大寺院」

いろいろと興味深いツアーがたくさんあるものだ。
今書き出してみても、行きたくなる。

参加方法はとても簡単。当日指示されている集合場所に行くだけ。
事前の申し込みは基本的に不要。その日の気分で参加できる気軽さがいい。
集合時間20分前から、Temple駅の前にはそれらしい人が集まってきている。
私と母は取り損ねた昼食代わりに、立ってサンドイッチをほおばっていた。

ガイド氏に参加費を払うと、いよいよウォーキングツアーの始まりだ。
費用はどのツアーでも大人一人£4.50。日本円で900円程度。
安さの秘密は、ずばり移動手段が参加者の足だから。
参加者全員で地下鉄に乗ることもあるが、まさに歩いてまわるツアーなのだ。
ガイドはすべて英語で行われるけれど、おすすめのアトラクションである。

何回目の渡英か忘れたけれど、実はウォーキングツアーに参加するのは初めてだ。
今回参加したのは「ダ・ヴィンチ・コード」に出てくる場所に実際に行き、
本に書かれていないことや、実際とは異なっていた箇所を見てみようという趣向だ。
ロンドンは物語の中盤から後半にかけて、主人公達が謎を追ってやってくる場所になっている。

参加者はほとんどがアメリカ人で、合計60人ぐらい。ガイド氏は少し面食らっている。
彼が全員に「正直に答えてほしいんだけど、まだ本を読んでない人は?」と質問すると
数人しか手をあげなかった。アメリカでは、本当にベストセラーなのだなと思った。

ガイド氏の名前はリチャード。30代後半ぐらいの気さくなお兄さん。
London Walkのガイドには、あと2人リチャードさんがいるらしく、
「僕は3人目のリチャードなので、リチャード3世と呼んでくれ」と言っていた。
後でLondon Walkのパンフレットを見ると。本当にRichaard IIIと名前が書いてあって面白い。
ガイドのリチャード3世は、役者で演出家でライターでもあるらしい。

リチャード3世は本のあらすじを紹介しながら、
実際の場所の前で、小説の中で起きたことを説明してくれる。
ここで主人公はこういう行動をしたんだ、とか、
本当はこの建物にその施設は無いけど行ったことになってる、とか。

もちろん建築物や施設についてだけではない。
ダ・ヴィンチの謎や、そこから派生するキリスト教の謎、
いったい作者のダン・ブラウンはどこまでを事実として、
どこまでフィクションとして書いたのか。

ツアー参加者が小説と事実の境界に引き込まれ、自分で判断しようとした瞬間、
「では、地下鉄に乗る時間だ」と地下鉄に参加者を誘導するリチャード3世。
地下鉄の中で参加者達はそれぞれに、コトの真相について話し合いはじめる。
否が応でも次の場所では何か手がかりが見つかるのではないかと盛り上がる。

ヨーロッパのガイドは、いわゆるバスガイドや観光ガイドのイメージと異なり、
知識と話術で人を惹き付ける、魅力的な人が多い。
単に説明するだけでなく、考えさせたり参加させたり、各人工夫している。
ガイド、案内という意味を超えてエンターテイメントになっているのだ。
私の母も日本語ガイドの仕事をしているので、少し誇らしくなったのだった。

リチャード3世の熱の入ったガイドは、予定の時間を1時間もオーバーするほどだった。
私と母はとても満足。来年公開されるという映画が、ますます楽しみになった。
自分で歩いた場所が確実に映画に出てくるのだしね。

ついでに説明をそこそこ聞き取れた自分の英語力にもちょっとだけ嬉しくなった。
そして、聞き取れない箇所を次こそは逃さないように、もっと鍛えようと思う。
次回の渡英は、どのウォーキングツアーに参加しようかなあ。

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2005年11月23日 23:16に投稿されたエントリーのページです。

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