さて、視力を回復した後は、いよいよギャラリー巡り。
王立芸術院(Royal Academy of Arts)で開催中のムンクの自画像を特集した展覧会に向かう。
この建物の中に入るのは初めてのような気がした。
入学できただけでかなりの栄誉と言われる王立芸術院。建物は荘厳だ。
ムンクの絵をまとめて見るのは初めてだった。
どの絵も病んだ空気が漂っている。
初期の絵は健全なものもあるが、やはりムンクは病んでないと。
女性モデルよりも自分を詳細に描いているカップルの絵、
病んで寝込んでいる自画像、
胸から血を流して裸で倒れている自画像、
ベッドに腹部血まみれの裸で横たわり、横に女性モデルを立たせている自画像。
アル中と女性不信とナルシシズムでどんどん病んでいくムンクの絵。
酒も手放せないようで、自画像の横によくワインの瓶が描かれている。
有名な『叫び』や『マドンナ』は一体どういう心境で描かれたのか興味が出た。
『マドンナ』は色も構図もモチーフも好きなのでなおさら。
ムンクを満喫したのち、Covent Gardenへ。
昔、市場があったこの広場は現在でも雑貨やアート作品などのマーケットになっている。
近辺の路地には小さいがしゃれた店が軒を連ね、歩いているだけでも楽しい。
日中は大道芸や路上ライブ、アートパフォーマンスが行われたり、
ロンドンでもっとも好きな場所のひとつだ。
到着した時間が遅かったので、路上ライブは黒人の青年が歌うレゲエだけ。
一応アコギを鳴らしているが、テープのカラオケに助けられている部分が多そうだ。
歌ってたのはボブ・マーリー。Covent Gardenには似合わないなあ。
広場では弦楽四重奏もパントマイムも無く、代わりというか移動式のメリーゴーランドがあった。
夜の石畳の上のメリーゴーランドは美しく、かつ少し淋しげだ。
人はたくさん往来しているが、みんな襟元をきつく合わせて目的地へ急いでいる。
とはいえ殺伐とした空気はなく、談笑しながらパブへ向かうおじさんたちや、
買い物袋をいくつか下げた、おしゃれなお姉さんたちで、見た感じはとても賑やかだ。
気温の低さもあり、メリーゴーランドには誰も乗らない。
誰も乗らないメリーゴーランドは、当然ながら回らない。音楽も鳴らない。
私たちが広場を去る頃になって、ようやく観光客風の黒人の家族連れが乗った。
安堵するように回りだすメリーゴーランド。
夕食はインドネシア料理だった。エスニックが台頭しているなあ。
場所はSOHOと呼ばれるエリア。いわゆる風俗街で、レストランの隣りは大きなストリップ劇場だ。
路地のショーウィンドウには怪しげな品々が並び、横目で盗み見して楽しむ。
料理はもちろん、おいしかった。
イギリスの料理がまずいというのは、もはや古いイメージだ。
けして味の底上げがされたわけではないが、おいしい料理を出す店が圧倒的に多い。