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私とクーロンズ・ゲート

最初の出会いは確か雑誌"ハイパープレイステーション"だったと思う。1995年の初夏、私は大学生で、バイト代でPS本体を買ったばかりだった。新しいソフトの情報が知りたくてこの雑誌を手に取り、そこでとても魅力的な造形に出会う。なんてカワイイキャラクターなんだろう......それが「壇獅子家姐」だった。早速、クーロンズ・ゲートは購入リストの筆頭に追加された。
 毎月クーロンの記事を楽しみに、ハイパーPS誌を買っていた私はある広告に気づいた。黒本の表紙にもなっている龍の爪と太極マークをメインビジュアルとしたその広告には、見慣れない文字列があった。初代クーロネットのURLである。悲しいかな、当時の私はインターネットに接続することができず、それはそのまま忘れ去ってしまう。

 大学4年となり、卒業制作・就職活動にいそしむうち、私の生活はゲームから少し遠ざかる。このあたりの記憶は曖昧だ。ビデオで、映画「GHOST IN THE SHELL」を見て、クーロンと似たアジアンゴシックを感じてみたり、ため息をつきながら時折思い出していつになったら発売するのかとやきもきした。
 そういえばPSのFC(?)の会報CD-ROMに九龍の体験版が付いたこともあった。2枚組のCDのうち、1枚がまるまるクーロンだ。喜んで何度か遊び、RTダンジョンの難しさに唇を噛む。周囲がピンクで波立ち始めても、なかなか鬼律に遭遇できなかったのだ(このトラウマのせいで、今でもRTダンジョンは怖い)。

 さて、卒業制作の忙しさもピークに達した頃、ついにクーロンが発売された。いまだにどこでソフトを買ったのか覚えていないが、初回版を買った。体験版で時間がかかるゲームだということは知っていたので、なかなかゲームを始められない。そうこうするうちに私は就職・上京してしまう。
 就職して会社の寮に入った私は、いつしか黒本も手に入れ、夜な夜なクーロンをプレイした。会社の研修期間はそれで良かったのだが、正式配属されて実務を始めると、途端に帰宅が遅くなり、次第にPSを起動しなくなってしまう。実はゲームが滞ったのはもうひとつ理由があった。

 それは、恐怖心である。夜、寮という名の狭いワンルームに帰宅する。食事や入浴を済ませて、ベッドでコントローラーを握る頃にはとっくに日付が変わっている。外はとても静かで、室内は枕元のスタンドだけが光っている。無意識に壁に背中をつけてゲームを進める。初めて海鮮中心に入る。緊張感が高まる。そして初めてミスターに会う。その頃には部屋の脇の冷蔵庫や電子レンジがとてつもなく気持ち悪いモノに見えてくる。布団に入って目を瞑るなんて、とてもじゃないができない。妄想に頭を支配される。
 余談だが、この頃世間ではインターネットがちらほら普及しはじめていた。当時、webの仕事を始めたばかりの私は、文字化けを見るたびにクーロネットを想起せずにはいられなかった。クーロネットで風水師に届くメールの文字化けが、文字化けするように設定されているのではなく、本当に文字化けしているようにすら思えた。 
 かくして、段々とゲームをするのが怖くなる。方向音痴のせいで、黒本を見ながら進めるのだが、目をそらした隙に、TVがなにか恐ろしいものに変化しているような気がする。黒本の進度でいうところの75%まで来たところで、私はゲームを放棄してしまった。 
 それでもクーロンの魅力にはあらがうことができず、銀本を買う。写真集を買う。クーロネットや少しだけあったファンサイトを覗く(しかしネタバレが怖く、すぐにやめる)。サントラを買う。武富聖さんのサイトで公開されていたクーロンのテクスチャや画像をMacの壁紙にする。会社で同僚に、「クーロンズ・ゲート? GWにじっくりやろうと思ってたのにすぐ解けちゃったよ。しかもクソゲーだったね」と言われて本気で怒る。どうして私は解けないゲームをこれほど愛してしまうのか。

 それから3年後、私はすでに同居人のいる生活をしていた。これなら夜にプレイしても一人じゃないから怖くない。そう思って二回目の挑戦。一回目はさっぱり意味がわからなかったハニーレディのナビが、どこを指しているのかわかって嬉しくなる。
 しかし、やっぱり解けなかった。今度は50%ぐらいで挫折。同居人には、そんな解かないゲームはさっさと中古屋に売れと言われる。もちろん、処分する筈がない。関連書籍もCDもすべて宝物なのに。

 そして、今年。ようやく7年越しでこのゲームのエンディングを見ることができた。リッチの最後に驚き、上海の美しさと妄想力に魅了され、以前は全然気づかなかった性的なシンボルをたくさん発見し、どうしてCG画集が存在しないのかと悲しみ、ネットで調べてムービー等の吸い出しが可能と知って喜び、そしてまたあの世界に行きたいと思う。クリア後の惚けた感覚をまた味わいたい。

 クーロンズ・ゲートは中毒性のあるゲームなので、多分これから生きていく中で何度も繰り返し遊ぶことになるだろう。このざらついた画面は、どんどん古いものになるのかもしれないが、それすらも演出になることだろう。こういうゲームは人生に二度も現れないので、私にとってそれがクーロンズゲートだったことをとても嬉しく思っている。

↓クーロンズ・ゲートのディレクター木村央志さんの著作について。これも必読。
http://visualclip.net/inagaki-log/2007/11/post_422.html

↓クーロンズ・ゲート好きにおすすめの本。実際に九龍城砦に住んでいた人の生活が写真と文章で記録されている。

九龍城探訪 魔窟で暮らす人々 -City of Darkness-
吉田 一郎 尾原 美保
イースト・プレス
売り上げランキング: 21059


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2005年5月22日 23:17に投稿されたエントリーのページです。

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